親の実家、相続する?30~50代の現役世代に聞く実家の相続意向アンケート調査まとめ
親が一軒家・マンション持ちなら、いつかは直面する親の実家の相続の問題。30~50代の現役世代は、親の実家の相続について、どのように考えているのでしょうか?
今回、相続弁護士相談広場では、自分の親(両親または父母どちらか)が持ち家(一戸建てまたはマンション)に住んでいる現在就業中の30~59歳男女 300名を対象に「親の実家の相続」に関するアンケートを実施しました。
アンケート結果から浮かび上がる現役世代が抱える実家の相続に関する意識や世代別・男女別の傾向を読み解き解説していきます。
「親の実家の相続意向」に関するアンケート
実施:相続弁護士相談広場 編集部
回答方法:Webアンケート調査
調査日時:2024年08月28日~29日
調査対象:全国の現在就業中の30歳~59歳男女(ご両親または父母どちらかが一軒家またはマンションを所有して住んでいる方)
回答者数:300人
目次[非表示]
親の実家は相続したい?30代~50代の意識
Q1.将来相続が発生した際、あなたはご実家を相続したいと思いますか?
実家を相続したい人は約半数超の56%
まずはじめに、親の実家を相続したいと思うか質問したところ「実家を相続したい」と考える人は全体の56.67% 。残りの43.33% は「相続するつもりはない」と回答しました。
実家を相続したいと考える人が比較的多い一方、相続しない意思を持つ人も4割以上と、相続したい人・相続する意思のない人ほぼ半々程度で拮抗する結果となりました。
30代~50代と世代が上がるごとに実家の相続意向は減少
この質問で「相続したい」と回答した方を世代・男女別で分類したところ、年齢・性別により数値の差がみられました。
30代男性は、75.86% が「相続したい」と回答。今回の調査対象者のうち、この30代男性は実家の相続に対して最も積極的な層でした。
一方で、男女ともに共通して、世代が上がるごとに相続したい人の割合も減少していく傾向が確認されました。
特に女性では57.14%と半数を越えた30代から、40代に44.83%、50代で42.11%と顕著に減少する方向に推移。
30代~50代すべての世代で50%以上が相続したいと答えた男性と比べると女性の実家相続意向は全体に低いこともわかります。
ライフステージの変化が実家の相続意向の推移に影響
実家を相続したい意向の世代間での違い・推移には、加齢に伴うライフステージの変化が影響しているものと考えられます。
30代など若い頃は、自分が育った愛着のある場所であること、将来の資産形成につながる可能性があることなどの理由から、実家を継ぐ意欲が高く、相続に積極的です。
一方、実家を離れて年を重ねていくと、親元から独立して家庭や仕事のある暮らしに入ります。自分の生活を優先する気持ちが高まり、自ずと実家を相続することのデメリットも目についていきます。
年を経るにつれ、実家の相続についてのより現実的な可能性を検討するようになるなることが、年長世代での相続意向の低下につながっているものと考えられます。
相続した実家・不動産はどう使う?現役世代のイメージする活用方法
Q2.ご実家を相続した場合、その家および不動産をどう活用しますか?
前の設問で「実家を相続したい」と回答した方に、相続した実家の家および不動産をどう活用するか、現在のイメージを4つの選択肢の中から選択してもらいました。
相続した実家に「自分で住む」人は約半数
最も多かった回答は「自分で住む」で、全体の52.94% を占めました。
次いで、「売却する」20.59%、「賃貸物件として貸し出す」14.12%、「更地にして土地活用する」11.76% という結果となりました。
過半数が相続した実家を自身の居住用として活用する意向を持ち、実家の家と土地を引き継ぐ意思を示しました。
一方で、20%強が「売却」を検討、貸出や更地にしての土地活用も10%程度おり、合計で47%程度は実家に居住せず、経済面もふまえた活用を検討する方々も一定数いるようです。
相続した実家の活用 性別・年代別による傾向
相続した実家の活用意向に関する回答を性別・年代別に見たところ、特に30代の女性は66.67% が「自分で住む」と回答し、男性と比べても高い割合を示しました。
女性は30代・40代で60%越え、50代でも50%と全世代で女性の半数以上が「自分で住む」を選択しており、女性が実家を相続する場合、大半が自分の居住目的で相続することがわかりました。
女性より男性の方が経済的活用に高い関心
一方、男性の「自分で住む」を選択する人は、30代の38.64%から40代で64.10%と一度上昇、50代ではふたたび47.62%へと低下と、世代ごとに大きく乱高下しました。
こうした動きからは、男性の「自分で住むか」、「経済的な活用を図るか」時期・状況ごとにさまざまな方向性を検討する様子が読み取れます。
相続した実家の活用方法を選んだ理由
前の質問「相続した実家の活用方法」の回答者に対し、なぜその活用方法を選んだか、理由をうかがいました。
「自分で住む」「売却する」「賃貸物件として貸し出す」「更地にして土地活用する」それぞれの活用方法をなぜ選んだのか、みなさんの声を見ていきましょう。
<自分で住む>派の声
相続した実家に「自分で住む」と回答した方の選んだ理由としては、主に以下のようなものが多く挙げられました。
現在すでに住んでいる
まず多く見られたのが、現在すでに親の実家に住んでいる方の回答です。
今すでに親と同じ家に住んでいるのであれば、その家を相続して自分が住み続けることは想像もつきやすく、ごく自然な判断と言えるでしょう。
- 「今住んでいるから」(47歳 栃木県 男性)
- 「今も住んでいるため」(35歳 三重県 女性)
- 「そのまま住み続けるつもり」(39歳 長野県 男性)
- 自分で住み続けたい。(50歳 神奈川県 男性)
- 「現在も住んでいるから」(40歳 福井県 男性)
実家の環境や立地が良い
実家の周辺環境や立地が良いと感じることが「自分で住む」理由として挙げられています。
便利な場所や自然豊かな環境など、住む場所の魅力が強調されています。
- 「環境がよいから」(40歳 東京都 男性)
- 「便利な場所にあるから」(47歳 兵庫県 女性)
- 「庭もあり、広く、駅から近い、住むのに良い」(43歳 岩手県 女性)
- 「立地が便利なので。」(35歳 愛知県 女性)
- 「利便性の高いマンションなので」(58歳 東京都 男性)
思い入れや歴史がある
家や土地に対する思い入れや家族の歴史を重視して、自分で住む選択をする人も多いです。
代々受け継いできた家への想いや個人的な愛着は、相続した実家に自分で住む大きな動機となります。
- 「思い入れのある家なので住み続けたいから」(43歳 熊本県 女性)
- 「代々受けついできた」(49歳 茨城県 男性)
- 「歴史ある土地を今後も守りたいから」(49歳 愛知県 男性)
- 「土地や家屋に思い入れもございますしリフォーム等をして家族で大事に活用していきたいと存じます。」(38歳 京都府 女性)
- 「生まれてからずっと住んでる家だから」(32歳 東京都 女性)
家賃が浮く・家を借りずに住める
家賃の節約や、他に住む場所を購入する資金がないため、経済的な理由で実家に住み続けたいと考える人も一定数います。
現状借家暮らしをしている方が、実家相続を将来のプランに入れているケースも多々あるようです。
- 「家賃がかからないから」(49歳 大阪府 男性)
- 「家賃がうくので」(52歳 東京都 女性)
- 「別に家を購入する資金がない」(35歳 愛知県 男性)
- 「自分は借家であり、マンションは市内中心に近いので」(44歳 広島県 男性)
- 「現在の自分が賃貸暮らしだから」(33歳 北海道 女性)
家の状態の良さ
居住を続ける想定でリフォーム済みの方や新築のケースなど、家の構造や状態の良さをふまえて、相続した実家に住むことを選ぶ声もありました。
逆に、そもそも実家の家と敷地を子に相続する前提で、親が実家の家を新築・リフォームするケースもありそうです。
- 「まだリフォームしたばかりだから」(42歳 栃木県 男性)
- 「まだ住めるから建物が丈夫なうちは自分が住みたい」(34歳 秋田県 女性)
- 「新築なので」(39歳 大阪府 男性)
- 「立地、家の作りの頑丈さと申し分ない」(39歳 神奈川県 男性)
- 「広いのでゆっくりした生活が送れる あと庭が広いのでガーデニングが楽しめる」(59歳 兵庫県 女性)
家族のため、将来のため
家族が集まる場所を維持するためや、老後の生活を考えて実家に住みたいと考える人もいます。
家を守る意識や将来は慣れた環境でゆったりと暮らしたいという期待も、実家を相続する重要な動機と言えそうです。
- 「兄妹親族が集まる場所として残したいから」(42歳 東京都 男性)
- 「老後の生活の拠点を確保したい」(49歳 大阪府 男性)
- 「将来に期待」(33歳 東京都 男性)
- 「歳とったら帰省する」(47歳 東京都 男性)
<売却する>派の声
一方、相続した実家を「売却する」と回答した方の選んだ理由としては、主に以下のような意見が挙がりました。
資金化・現金化したい
「売却する」を選んだ方は、当然ですが、相続した不動産を現金化して手放し、資金として活用したい意向の方が中心です。
特に高い売却益が期待できる好立地の物件の場合、自分で住むことより売却を優先するケースも多いです。
また、相続人間で分けづらい不動産の形で相続するよりも、家や土地を売却し現金化した方が、公平な遺産分割は行いやすくなります。
- 「現金化した方が楽だから」(50歳 千葉県 男性)
- 「資金化」(40歳 東京都 男性)
- 「老後の蓄えとして考えているため」(58歳 埼玉県 男性)
- 「資産価値として考えたら現金化かなと思うから」(39歳 神奈川県 男性)
- 「売れる場所なので」(48歳 栃木県 女性)
- 「姉と公平にわけるため」(45歳 奈良県 女性)
活用方法がない
不動産を自分で使う予定がない、もしくは他に活用方法がないため、売却を選択する人も多いです。
特に、すでに持ち家がある方が実家を相続した場合、売却を選ぶケースが多いようです。
- 「使い道がない」(43歳 愛媛県 男性)
- 「活用方法が他にないから」(46歳 東京都 男性)
- 「今分譲マンションに住んでいて戸建てを相続しても活用方法がないため」(39歳 大阪府 男性)
- 「持ち家がすでにあるため」(36歳 静岡県 男性)
- 「別の都道府県に住んでおり活用できないため、売却したい」(32歳 奈良県 女性)
維持・管理が大変
実家の維持や管理が難しいと感じ、手間を避けたいとの理由で売却を選んだ回答も多くありました。
特に、管理にかかる費用や手間が重視されています。
- 「管理しきれないので売却したい」(56歳 東京都 女性)
- 「維持が大変だから」(30歳 愛知県 女性)
- 「維持が大変だから」(48歳 埼玉県 男性)
- 「上物があっても古いので」(55歳 埼玉県 男性)
土地や家の価値がない
相続する不動産自体の価値が低い、もしくは古くなっているため売却する方が良いと考える人もいます。
建物の老朽化や崖地や僻地など扱いづらい立地の都合、実家をそのまま維持しておくこと自体が負担となるため、売却して少しでも現金化して手放そうと考えます。
- 「上物、土地ともども価値がないため少しでもお金にした方がいい」(53歳 大阪府 男性)
- 「地盤に不安がある」(52歳 神奈川県 男性)
跡継ぎがいない
実家を継ぐ人がいないため、売却を選択する声も多くありました。
少子化や核家族化が進み、相続しても自分は家に住めない、維持管理の負担を負えないという理由から、売却を選ぶ方も多そうです。
- 「跡継ぎがいないため」(55歳 山形県 女性)
- 「両親も歳をとり継ぐ人がいない」(33歳 新潟県 女性)
- 「住む人がいないから」(43歳 神奈川県 男性)
- 「住まないが売却できそうだから」(36歳 大阪府 女性)
- 「自分では住まないから」(56歳 奈良県 男性)
<賃貸物件として貸し出す>派の声
「賃貸物件として貸し出す」と回答した方の選んだ理由としては、主に以下のようなものが多く挙げられました。
不動産収入を得たい
不動産収入を得ることを主な目的として「賃貸物件として貸し出す」ことを選択する傾向が見られます。
副業としての収益増加や年金の代替手段として考える人が多いです。
- 「副業による収入増加目的」(36歳 大阪府 男性)
- 「収益を発生させて大家業を続けたいから」(42歳 千葉県 男性)
- 「不動産収入を年金として使いたいから」(57歳 愛知県 女性)
- 「資産に変えたい」(53歳 沖縄県 男性)
賃貸需要の高い立地にある
実家や不動産が賃貸需要の高い立地にあり、貸し出すことで収益を上げられそうだと考える人々もいます。
特に都市部や交通の便が良い地域の場合、実家の土地・建物を貸し出して収益化する選択も現実的です。
- 「比較的都心に近いので活用できそう」(57歳 神奈川県 男性)
- 「賃貸需要が一定数ある地域と感じているから」(47歳 神奈川県 男性)
- 「交通の便が良い地域につき、リフォームしたら高額で家賃を得られると思うから」(39歳 京都府 男性)
- 「駅近で賃貸として需要のある立地であるため」(33歳 東京都 女性)
- 「賃貸需要が見込める立地なため、収益を得ながら生家を存続させたいため」(46歳 千葉県 男性)
自分の生活には不向き
実家が広すぎる、一人で住むには不便など、相続人自身の生活で利活用するには不向きという理由で貸し出すことを選択した人もいます。
- 「一人で住むには大きすぎる」(51歳 愛知県 男性)
- 「異なる場所に住んでいるため」(39歳 兵庫県 男性)
- 「だれもいなくなるから」(37歳 福井県 女性)
手間をかけたくないが、活用したい
実家の不動産は所有しながら、賃貸物件として貸し出す形であれば、日常的な維持管理は借り主に行ってもらえるので、所有者側の手間はそこまでかかりません。
不動産の運用はなるべくシンプルにしつつ収益を得たいと、賃貸物件としての活用を検討するケースです。
- 「手間をかけたくないからです」(51歳 大阪府 男性)
- 「簡単だから」(37歳 京都府 男性)
- 「持っていて損は無いと思った」(44歳 奈良県 女性)
- 「もったいないから」(41歳 宮崎県 女性)
<更地にして土地活用する>派の声
「更地にして土地活用する」と回答した方の選んだ理由としては、主に以下のようなものが多く挙げられました。
誰も住んでいない・住む予定がない
実家に誰も住んでいない、もしくは住む予定がないため、家を取り壊して土地を有効に活用したいと考える人が多いです。
家が古くなっている場合もこの理由に含まれます。
- 「実家が今誰も住んでいないため、土地を活用して何かをしたいと思っている」(54歳 福岡県 男性)
- 「住む人間がいないから」(46歳 岐阜県 男性)
- 「土地はある程度広いが、家は古いので家は壊して土地を有効活用したい」(59歳 神奈川県 男性)
- 「昔ながらの一軒家で、独身のため、そもそも家の管理が難しい」(38歳 岐阜県 男性)
- 「古いから」(37歳 滋賀県 男性)
具体的な活用プランがある
駐車場や新築、太陽光用地としての活用など、土地活用の具体的なプランを持っている人々は、相続した実家を更地にすることを検討します。
- 「駐車場を作る」(52歳 大阪府 男性)
- 「更地後に新築する為」(52歳 東京都 男性)
- 「太陽光用地として活用したい」(54歳 三重県 男性)
無駄にしたくない
所有している土地を無駄にしたくない、活用しないまま放置するのは避けたいという場合、手間のかかる建物を立て壊して更地にすることで、駐車場や荷物置き場、あるいは新しい建物の建て直しまで、以後の活用の選択肢は広がります。
- 「所有土地なので無駄にしたくないから」(38歳 東京都 男性)
- 「そのままだと使い道がないので」(58歳 千葉県 男性)
実家を相続したくない理由は?
また、最初の質問「Q1.将来相続が発生した際、あなたはご実家を相続したいと思いますか?」に対して「相続するつもりはない」と回答した方に、なぜ相続するつもりがないか、うかがったところ集まったのが以下のような回答です。
既に持ち家がある
すでに自分の住居を持っているため、実家を相続する必要がないという理由で「相続するつもりがない」と答えた人が多く見られます。複数の物件を持つことによる維持費や税金の負担を避けたいという意識が背景にあります。
- 「今の家があるから」(39歳 愛知県 女性)
- 「すでに持ちマンションがあるので」(51歳 東京都 男性)
- 「別の場所に家があり、相続しても住む人がいなくなるだろうから」(47歳 奈良県 男性)
- 「今住んでいる家がある」(47歳 埼玉県 男性)
家族・兄弟が相続するから
家族や兄弟姉妹が実家を相続する予定で、自分が相続する必要がないと考える人が多いです。長男や兄弟がいるため、自分は相続に関わらないという考え方が見られます。
- 「妹に」(48歳 神奈川県 女性)
- 「兄がいます」(59歳 三重県 男性)
- 「弟が相続するから」(59歳 愛知県 女性)
- 「兄弟に譲る」(49歳 神奈川県 男性)
維持や管理が面倒
実家の維持や管理が面倒であるため、相続を避けたいと考える人も多いです。修繕や手続きの煩雑さ、管理の負担が大きな理由となっています。
- 「管理や修繕が面倒だから」(41歳 千葉県 男性)
- 「維持費が大変だから」(48歳 沖縄県 女性)
- 「管理が面倒」(54歳 大阪府 男性)
- 「手続きが多く面倒」(37歳 東京都 女性)
立地や環境が不便
実家が不便な場所にあるため、相続するメリットがないと考える人もいます。特に交通の便が悪い、遠く離れているなどの理由で相続を避けたいという意見が多いです。
- 「遠い」(45歳 愛知県 男性)
- 「交通が不便な所にあるから」(56歳 大阪府 男性)
- 「立地があまり良くない」(39歳 東京都 男性)
- 「田舎で維持するのが大変だから」(52歳 千葉県 男性)
古い家だから
家が古く、修繕やメンテナンスの手間やコストがかかるため、相続しないという人もいます。老朽化した家を維持することが負担になるという意識が強いです。
- 「古いから」(37歳 滋賀県 男性)
- 「家が古いので相続する方が面倒くさい」(48歳 兵庫県 女性)
- 「老朽化、田舎なので住まない」(40歳 北海道 女性)
金銭的負担が大きい
税金や維持費の負担が大きいため、相続する余裕がないと感じる人も多いです。特に、複数の物件を所有することによる税負担が懸念されています。
- 「税金が払えない」(52歳 静岡県 男性)
- 「お金がない」(46歳 岡山県 男性)
- 「既に持ち家があるから2軒あったら税金が大変だから」(46歳 長崎県 女性)
このように、「相続するつもりがない」と答えた理由には、すでに他の住居を所有している、家族や兄弟が相続する予定である、維持や管理が面倒であるなどの現実的な問題が多く見られます。
その他にも、立地や環境の不便さ、家の古さ、金銭的な負担などが相続を避ける主な理由として挙げられています。
現役世代の実家の相続、親との話し合い状況は?
Q5.実際にご実家の相続、相続した後の家の取り扱いについて、ご両親(あるいはお父様・お母様どちらか)と話し合いをしたことはありますか?
現役世代の3分の2は、親と実家の相続について話し合いをしていない
最後に、すべての回答者に対し、親の住む実家の相続について親と話し合いをしたことがあるか経験の有無を伺ったところ、全体の66% は「ない」と回答。
30~50代あたりの世代であっても、3分の2近くのご家族は実家の相続に関する具体的な話し合いは行っていないことがわかりました。
またこの質問に対して「話し合いを行ったことがある」と回答した方について、世代別・性別でまとめると以下のような結果となりました。
実家の相続の話し合い、女性が特に行わない傾向
このグラフの結果からは、世代が進むにつれて親と相続に関する話し合いの割合が全体的に減少する様子が読み取れます。
特に30代男性では比較的高い割合で話し合いが行われ、40代で一時的に話し合いの割合が減少、50代で再び増加する動きを見せました。
一方、女性は全体的に話し合いをした方の割合が低く、特に50代では20%台へと顕著に減少しました。
アンケート結果ふまえた実家を相続する準備の進め方
以上のアンケート結果をふまえ、実家の相続を検討する上で最も適切な準備の進め方を考えていきましょう。
相続人が30代のうちの話し合いが有効
相続に関する話し合いは、親の健康状態やライフステージの変化の影響を強く受けます。
年齢が上がるにつれ、高齢になる親の健康不安や相続人の家計状況の変化など、現実的な問題が発生し、相続するか否かの判断で、相続人が自分の意志で選択できる余地は少なくなってきます。
まず実家を相続するのか、手放すのか。大枠の方向性を定める上で、男女問わず将来の相続に対して意欲・関心の高い30代のうちから親子で話し合いの機会を持つのはひとつの手でしょう。
早めの話し合いが実家相続を見据えたライフプラン設定につながる
特に30代男性は、回答者の75%が「相続したい」を選択する、実家相続への意欲の強い積極層です。比較的早い段階から話し合いを始めることで、先々の相続を念頭に、40代・50代に向けたライフプランを設定していくことができます。
相続した実家に住むのか、売却して手放すのか、それとも相続しないのか、最終的にどの方法を選ぶにしても、早めから相続の発生を意識しておくことは将来の相続時に取れる手を増やしておくことにもつながります。
相続する実家の資産価値は把握しておく
たとえば実家が都市部や交通アクセスに優れた好立地にある場合、土地の評価額や固定資産税の負担を考慮すると、相続した実家に自分で住むより売却した方が相続人にとって都合が良いケースはあり得ます。
また、逆に山奥の僻地など相続しても使いようのないところに実家がある場合は、相続人にとって売却ないし相続放棄するのも自然です。
自分の育った想い出深い場所を残しておきたいという相続人の気持ちは自然なものですが、実際の相続発生後を考慮すると、相続する実家の資産価値は正しく把握しておくことが大事です。
ひとりの相続人が維持にこだわった結果、相続税や固定資産税の負担を巡って相続人間でトラブルになるケースは少なくありません。
資産価値の把握は相続可否・活用方法など判断の助けに
社会情勢や地域開発の影響も受けて不動産の価格は変動するものですが、地価や不動産取引額が数倍も上下動するようなケースは極めて稀です。
路線価からの計算はもちろん、近隣の物件の販売価格などからもおおよその価値を図っておくだけでも、実家を相続するか・しないか、住むか・売却かなど、判断の助けになるでしょう。
相続した実家に住みたい女性は積極的な話し合いを
調査結果をふまえると、実家を相続したいと考える女性の半数以上は、自分が住みたいと考えている方でした。
一方、女性が親と実家の相続に関して話し合いをするケースは男性に比べて全体的に少なく、実家相続に対する意向・期待の高さに対して、実際に行われているコミュニケーションがやや低い現状が見て取れます。
もし、将来、女性である相続人が実家を相続したい、相続した実家に住みたいと考えている場合は、その意思をハッキリと親や親族に対して表明し、積極的に話し合いを行うことも意識しましょう。
女性こそ実現しづらい「希望通りの相続」
兄弟姉妹がいる場合はもちろん、「なんとなく自分が相続できるだろう」というつもりで過ごしていても、自分の希望通りに相続が進むとは限りません。
法律上、兄弟姉妹には公平な相続が認められていますが、それでも日本社会の傾向として「家や土地は男子が継ぐもの」というやや古い見方は、戸籍制度との兼ね合いもあり、依然として根強くあります。
相続について自分の希望がある場合は、特に女性であるならなおのこと、自分の意思を明示しておくことが重要です。
自分だけで相続の主張を進めるのに不安を感じる場合は、弁護士に相談してみるのもひとつの手です。
まとめ
今回のアンケート結果からは、親が一軒家やマンションなどを保有している場合、その子の半分以上は実家の相続を希望する一方、親から相続した家をどうしたいか、その意識や行動は子の年齢・性別によって、さまざま異なることがわかりました。特に、女性は年代が上がるにつれて相続に対する意欲が減少し、売却や貸し出しを検討するケースが増える傾向にあります。
また、実家の相続について親子での話し合いは、行っている人よりも行っていない人の方が多数派です。大半の方は親の実家を相続したいと考えているにも関わらず、実際のコミュニケーションがともなわず、家族や実家の将来についてのすりあわせが、親が高齢になるまではなかなか進まない傾向が見て取れます。
親子双方にとって理想的な相続を実現するには、親子ともども健在な、早い時期・段階で意志確認を済ませ、準備を進めておくことが有効です。
「実家の相続なんてまだまだ先のことだから」と後回しにしているうちに、取れる手もなくなり、残しておきたい実家を手放すことに……そんな事態にならないよう、今回の調査結果も話のタネに、ご両親やご家族とまずは気軽な話し合いをしてみるのもおすすめです。
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