親の借金は子に返済義務がある?肩代わりを迫られた場合の対処法

親の借金
親の借金がある場合、子どもの自分に返済義務があるのか不安に思う方は少なくなく、特に相続が発生した時などには非常に頭の痛い問題です。

本記事では、親の借金の相続や肩代わりは回避できるのか、回避するにはどうしたらよいのか解説します。

親の借金の肩代わり、子どもに返済義務はある?

結論から言えば、親に借金があるとわかった場合でも、原則として子どもに親の借金を返済する義務はありません。
親の借金はあくまで親自身の借金であり、法律的にも子どもが肩代わりする必要はないのです。

もっとも、相続や連帯保証、名義貸しをした場合には返済義務が発生する場合もあります。
詳しく説明しますので、一緒に見ていきましょう。

親の借金の返済義務が発生するケース

親の借金の返済義務が発生するのは以下の3つの場合です。

親の借金を相続した場合

まず、親の借金を相続した場合です。

民法896条では、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定められています。

被相続人(亡くなった方)の財産には、土地・建物や預貯金、株などのプラスの財産もありますが、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産もあります。
相続人は、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含めた全ての財産を相続することとなります。

もっとも、もう片方の親が存命であったり、子どもが複数人いたりする場合は、借金を民法で定められた相続分(法定相続分)で分割して相続するのが基本です。

親の借金の連帯保証人だった場合

親の借金の連帯保証人だった場合も、親が返済できなくなった場合には、連帯保証契約に基づき、主債務者である親と同様にその借金を返済しなければなりません。

なお、借金の保証には、通常の保証人と連帯保証人の2つの保証人があります。

通常の保証人だった場合には、「まずは主債務者に請求するよう主張する権利」(催告の抗弁権)と、「主債務者に財産があるので、まずは主債務者の財産を差し押さえるよう主張する権利」(検索の抗弁権)がありますが、連帯保証人にはこれらがありません。よって、実質的には、自分が借金を負っているのと同様だと考えておくべきでしょう。

参考:債務整理弁護士相談広場「連帯保証人とは?メリットやリスク、民法改正に伴う変化を徹底紹介」

親が子の名義で借金していた場合

親が子どもの名義で借金していた場合で、子どもが名義貸しを承諾していたケースでは、子どもは親の借金の返済義務を負います。

「名義を貸しただけだから、自分に返済義務はない」と思われるかもしれません。しかし、子ども自身は貸し借りにノータッチだったとしても、契約上は借金の名義人に返済義務があります。

また、名義貸しについて未承諾であっても、子どもに落ち度があったケースでは親の借金の返済義務を負う場合があります。具体的には、親に実印や本人確認書類を預けていたなどの場合が考えられます。

親の借金を知らなかった場合

子どもが親の借金を知らなかった場合には、ケースにより対処法がある場合もありますので、それぞれご説明します。

親の借金に気づかないまま相続してしまった

親の借金に気づかないうちに、親が亡くなり借金を相続してしまったケースには、対処法があります。

裁判所に上申書を提出し、あとから相続放棄を認めてもらう

被相続人が亡くなり、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月を過ぎると、相続放棄ができなくなり、借金も相続してしまいます。

ですが、あとからであっても、裁判所に対し、通常の相続放棄手続きでも使う「相続放棄申述書」に加えて「上申書」を提出することで、相続放棄が認められる余地があります。

上申書とは、相続放棄の期限に遅れた具体的事情を主張する書面で「事情説明書」とも呼ばれ、以下の内容を記載します。

  1. 相続財産が全く存在しないと信じた
  2. 相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があった
  3. 相続財産が全く存在しないと信じたことについて相当な理由がある

具体的なケースとしては、「被相続人と相続人の間の交流がなく、借入について金融機関への問い合わせが困難だった」「借入状況が確認できる書類が破棄されていた」などがあります。

なお、上申書の作成には高度な法律知識や判例知識を必要としますので、一般の方が一人で作成するのは非常に困難です。上申書の作成でお悩みの場合には、弁護士への相談をお勧めします。

認めてもらえなかった場合は債務整理を検討する

裁判所に相続放棄を認めてもらえなかった場合は、債務整理を検討しましょう。

債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があります。

任意整理

任意整理とは、貸金業者と交渉し、将来利息・遅延損害金のカットや、3〜5年間の分割返済を認めてもらう手続きです。裁判所を介さずに行う手続きなので、個人再生や自己破産のように官報に載ることがなく、一部の債権者を除外して手続きをすることができるなどのメリットがありますが、債務減免効果は低いというデメリットがあります。

個人再生

個人再生とは、裁判所に申し立て、大幅に減額した借金を3〜5年で分割返済する手続きです。個人再生には、住宅ローンがある場合、所定の条件を満たすことで住宅を手元に残すことができ、任意整理よりも債務減免効果が高いなどのメリットがあります。しかし、裁判所を介して行う手続きですので、手間がかかる、官報に載るなどのデメリットがあります。

自己破産

自己破産とは、裁判所に申し立て、借金をゼロにする手続きです。自己破産は、借金をゼロにできる一方で、財産を手放す必要がある(20万円以下の預貯金や年式の古い車などは除く)、官報に載るなどのデメリットがあります。

どの手続きが最適かは、収入や所有財産の状況により異なりますので、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。

参考:債務整理弁護士相談広場「債務整理とは?メリットとデメリットや仕組みについて詳しく解説」

知らないうちに親の借金の保証人にされていた

承諾のない保証契約で無効だと主張する(無権代理の主張)

知らないうちに親の借金の保証人にされていた場合には、無権代理を主張するという方法があります。

「無権代理」とは、代理権を持っていない人が、本人の代理人として勝手に法律行為を行うことを指します。無権代理は原則として無効です。

子どもの承諾なく、親の借金の保証人にされていた場合には、その保証契約は無効なので、債権者に無権代理を主張しましょう。

この際、注意すべきなのは「追認」です。保証契約を事後承諾してしまうと、追認という法律行為となり、その契約は有効になってしまいます。その結果、子どもに借金の支払い義務が生じてしまうため、事後承諾は絶対に行わないようにしましょう。

親が勝手に子ども名義で借金をしていた

承諾のない借金で無効だと主張する(名義冒用の主張)

親が勝手に子ども名義で借金をしていた場合には、名義冒用を主張するという方法があります。

名義冒用とは、勝手に他人の名義を利用して契約することを言います。名義冒用による契約は、原則として無効です。

子どもから承諾を得ずに、親が勝手に子ども名義で借金をしていた場合は、名義冒用にあたり無効です。
子どもに返済義務はないため、債権者には、その契約は名義冒用により行われたもので、自分に返済義務はない旨を主張しましょう。

債権者が応じない場合は裁判へ

それでも債権者が納得してくれない場合には、裁判所に「債務不存在確認訴訟」を提起するという方法もあります。

訴訟では、借入契約書の署名の筆跡が自分のものと違うことや、親が勝手に実印・本人確認書類を持ち出したことなどを主張することとなります。

認知症の親が借金をしていた

成年後見人を選任し、債務整理・時効援用をする

認知症の親の借金は、子どもに返済義務はありません。ただし、認知症の親は、借金をした事実や返済日などを把握し対処する能力が衰えている場合が多いので、そのまま放置すると遅延損害金が膨らんだり、債権者から貸金返還請求訴訟などの裁判を起こされたりする可能性があります。そのため、認知症の親の借金が判明した場合には、借金を減らす・なくす法的手続きである「債務整理」をするとよいでしょう。

また、長期間返済していない古い借金の場合には、時効にかかっている場合がありますので、その際には「時効援用」をしましょう。時効援用とは、時効の完成により利益を受ける人が、時効の完成を主張することを言います。借金の場合には、「時効期間が過ぎているので返済義務はなく、返済しません」と主張することを指します。時効援用をするためには、債権者に、内容証明郵便で「時効援用通知書」を送ることをお勧めします。時効援用は口頭でもできますが、書面での通知は、後々の証拠になるためです。

なお、認知症の人が債務整理や時効援用をするためには、成年後見制度を利用し、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任する必要があります。というのも、債務整理や時効援用は法律行為であるところ、意思能力の衰えた認知症の人がする法律行為は、民法3条2項に基づき無効だと判断される可能性があるからです。

よって、認知症の親の借金は、成年後見人を選任して、債務整理・時効援用をしましょう。

親の借金を把握する方法

親に借金があるのではないかと不安に思う場合には、次の方法で内容を把握することができます。

親自身から口頭で聞き取り確認する

まずは、親自身に借金の有無を聞いてみましょう。とは言え、借金があることに負い目を感じていたり、後ろ暗い気持ちを持っていたりする場合には、正直に答えてくれない可能性があります。

親戚・友人から聞き取り確認する

親戚や友人から借金をしているケースもありますので、心当たりのある親戚や友人に、「親にお金を貸していないか」「保証人になっていないか」それとなく聞くのも有効です。

少額の返済・返済の意思表明だけでも相続放棄が認められなくなる可能性あり

ただし、ここで注意すべきなのは、亡くなっている親の借金が判明した際に、子どもが借金の全部あるいは一部を返済してしまったり、返済する意思を見せたりすることです。これらをしてしまうと、裁判所から相続放棄を認められなくなる可能性があります。

というのも、相続放棄を行うには、その相続人が被相続人のプラスの財産・マイナスの財産の一切について権利義務を引き継がない必要があるからです。借金のほんの一部であっても、すでに返済していたり、返済する意思を見せたりした場合には、権利義務を引き継いだものとされるため、行わないようにしましょう。

親宛ての郵便物や銀行口座の通帳を確認する

親の同意を取り、親宛ての郵便物に貸金業者からの督促状や裁判所からの書面が届いていないか確認します。家族であっても、正当な理由なく郵便物を開封する行為はプライバシーを侵害していますし、場合によっては信書開封罪さえも成立しますので注意しましょう。

また、親の同意を取り、銀行口座の通帳を確認するという方法もあります。入出金履歴に、貸金業者とのやり取りが記録されている可能性があるからです。

不動産の登記事項証明書を取得する

親が土地・建物といった不動産を持っている場合、不動産の登記事項証明書を取得し、抵当権がついていないか確認します。不動産の登記事項証明書は、不動産の住所地を管轄する法務局や法務省の「登記・供託オンライン申請システム」「登記情報提供サービス」でも調べることが可能です。

信用情報機関への開示請求を行う

親が存命の場合

親が存命の場合には、親の同意を取り、親自身が、個人信用情報機関に借り入れやローンの情報開示請求を行います。個人信用情報機関は下記の3つがあります。

親が他界している場合

親がすでに他界している場合には、前述の個人信用情報機関に以下の書類を提出し、借り入れやローンの情報開示請求を行います。

  1. 法定相続人の本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証のコピーなど)
  2. 法定相続人であることが確認できる証明書類(法定相続情報一覧図、戸籍謄本および相続関係図)
  3. 本人が亡くなったことを証明できる書類(死亡診断書のコピー・除籍謄本)

参考:債務整理弁護士相談広場「任意整理で信用情報機関に登録されるデメリットとは?回復までの注意点」

親の借金の返済を迫られた場合の対処法

返済義務がない親の借金でも、なんらかの理由をつけて債権者からしつこく返済を迫られた場合には、以下のような対処法があります。

親の自己破産の検討

親に十分な返済能力がなく、借金を返済できない場合には、親の自己破産を検討しましょう。

自己破産とは、裁判所に「破産申立書」を提出し、「免責許可決定」をもらい、借金をゼロにする手続きです。

ただし、自己破産にはデメリットもあります。具体的には、「5〜10年程度の期間はローンが組めない・借り入れができない」「官報に情報が載る」「手続き完了までは一定の職業に就けない」などが挙げられます。

なお、自己破産以外にも「個人再生」や「任意整理」といった債務整理方法もありますので、どの手続きがいいか、債務整理に強い弁護士に相談するとよいでしょう。

相続放棄する

被相続人が亡くなり、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)であれば、裁判所に「相続放棄申述書」を提出することで、相続放棄ができます。相続放棄とは、プラスの財産とマイナスの財産の全てを引き継がず、放棄することです。

遺産分割協議書には、よく「相続人〇〇は、被相続人の財産の一切(負債も含む)を相続する」などの文言がありますが、たとえ、遺産分割協議書で自分以外の相続人が、財産の一切(負債も含む)を相続することに同意し署名捺印していても、裁判所に相続放棄の申述を行っていなければ、自分が相続放棄したことにはなりません。相続放棄する場合には、必ず裁判所への申述を行いましょう。

なお、熟慮期間の3ヶ月を過ぎていても、例外的に相続放棄が認められる場合もあります。具体的には、「被相続人と相続人の間の交流がなく、借入について金融機関への問い合わせが困難だった」「借入状況が確認できる書類が破棄されていた」などのケースが考えられます。このような事情があれば、それを記した「上申書」を作成し、「相続放棄申述書」に添えて裁判所に提出する流れとなります。

限定承認を選択する

被相続人が亡くなり、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)であれば、相続放棄した人を除く相続人全員で、裁判所に「家事審判申立書(相続の限定承認)」や「遺産目録」等を提出し、公告や清算の手続きを踏むことで、限定承認を選択することができます。限定承認とは、プラスの財産からマイナスの財産を清算して、余った財産を引き継ぐことを言います。

前述の相続放棄が、一度裁判所に申し立てれば手続きが完了するのに対し、限定承認は手続きが複雑で手間がかかります。実務上は、限定承認するケースは非常に稀です。

親の借金にまつわる注意点

親の借金への対処では、注意すべき事項がいくつかあります。

債権者からの返済要求はハッキリ断る

すでに述べたとおり、親の借金を子どもが返済する義務はありません。ですから、債権者から返済を求められてもハッキリと断りましょう。

また、債権者が貸金業者の場合、債務者以外の者に返済要求することは貸金業法違反にあたります(貸金業法21条1項7号)。このような場合は、貸金業法違反である旨を主張し、それでも返済要求が続くようであれば、金融庁や日本貸金業法協会、警察などにも相談しましょう。

古い借金なら「時効の援用」が認められる場合も

なお、古い借金の場合は、消滅時効にかかっている可能性があります。

2020年3月31日以前の借金の場合、貸金業者からの借金は「最後に返済したとき」から5年、個人からの借金は「最後に返済したとき」から10年で時効です。2020年4月1日以降の借金の場合は、貸金業者からの借金・個人からの借金ともに、「権利を行使できることを知った時から5年」「 権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方から時効です。

ただし、時効を成立させるためには、「時効を迎えたので返済義務はない」旨を主張する「時効の援用」が必要です。具体的には、債権者に「時効援用通知書」を送付して行います(口頭でも主張はできますが、証拠が残らないため、通常は内容証明郵便で書面送付します)。

親の借金の返済を子が引き受けること自体は可能

親の借金をどうしても返したい場合、子どもが親に代わって返済することは可能です。

債務者の代わりに返済する法的義務がない者が、債務者に代わって返済することを「第三者弁済」と言いますが、保証人などになっていない子どもが、任意で親の借金を返済するケースはこの第三者弁済にあたります。

第三者弁済をした場合、肩代わりした借金の返済を、債務者本人に求めることができます(求償権と言います)。よって、肩代わりした借金の返済を親に求めることは可能ですが、自分自身で借金を返済できない親から返済してもらうことは難しいと心得ておくべきです。

支払った借金に贈与税がかかる可能性

親の借金の肩代わりには注意点があります。それは、支払った借金に贈与税がかかる可能性があるという点です。

ただし、「資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合」には贈与税はかかりません。もっとも、これは、全財産を投げ打っても返済できないほど困窮している状況を指しますので、よほどのことがないと贈与税がかかる可能性があるものと考えておきましょう。

なお、親の借金を肩代わりした後に、親から返済してもらう場合、贈与税はかかりません。

参考:国税庁 No.4424 債務免除等を受けた場合

相続放棄は親が亡くなるまでできない

「親の借金は相続しない!」と決めた場合でも、相続放棄の手続きは親が亡くなるまでできません。

相続放棄の手続きは、被相続人が亡くなり、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内に行うものと定められているからです。この点、注意が必要です。

相続放棄すると借金は他の法定相続人が負うことに

相続放棄すると、相続放棄した人は最初から相続人にならなかったと考えます。そのため、他の法定相続人がいる場合には、相続放棄した人が負うはずだった借金を、その法定相続人が負うことになります。

具体的には、相続順位が第1順位の子どもが相続放棄すれば、第2順位の父母が、第2順位の父母が相続放棄すれば、第3順位の兄弟姉妹、兄弟姉妹が亡くなっていた場合には甥姪が、借金を負うことになるのです。

なお、すべての法定相続人が相続放棄するためには、それぞれ別個に相続放棄の手続きをする必要があります。自分が相続放棄を考えており、他に法定相続人がいる場合には、親族間で連絡を取り合うことが大切です。

限定承認を選択するには相続人全員の同意が必要

プラスの財産からマイナスの財産を清算して、余った財産を引き継ぐ限定承認を選択するには、相続放棄した人を除く相続人全員の同意が必要です。そして、この全員で、裁判所に家事審判の申し立てをします。相続人が複数いる場合には、自分一人だけで限定承認することはできませんので、注意しましょう。

親の借金についてよくある質問

亡くなった親の住宅ローンの残債はどうなる?

亡くなった親の住宅ローンに残債があった場合には、子どもは住宅ローン残債を相続します。けれども、親が住宅ローンを組む際に「団体信用生命保険」(団信)に加入していた場合には、返済する必要がありません。

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン利用者が死亡または高度障害の状態になった際に適用される保険で、適用により住宅ローンの残債の支払いが免除されます。

よって、亡くなった親が団体信用生命保険(団信)に加入していた場合は住宅ローンの残債はなくなりますので、子どもが住宅ローンを相続することはありません。

離婚した親でも亡くなると借金は相続される?

離婚した親で、すでに疎遠になっていても、子どもには相続権があります。離婚した配偶者は他人となり相続権を無くしますが、子どもは親子関係が続くためです。

そして、借金は相続財産に含まれますので、離婚した親が亡くなった場合には子どもは借金も相続します。

失踪など連絡のつかない別居親の借金も相続の対象になる?

失踪など連絡のつかない別居親が、生死不明で「失踪宣告」を受けた場合には、借金も相続の対象になります。

失踪宣告とは、行方不明で連絡がつかず、生死不明の人が一定の要件を満たす場合に、法律上死亡したものとみなすことができる制度です。失踪宣告には「普通失踪」と「特別失踪」の2つがあり、それぞれの要件は次のとおりです。

  • 普通失踪の場合:行方不明者の生死が7年間明らかでないこと
  • 特別失踪の場合:行方不明者の生死が、死亡の原因となるべき危難(戦争や海難事故など)に遭遇し、その危難が去ったあと1年間明らかでないこと

失踪宣告による借金の相続を防ぐには、相続放棄を

失踪宣告により、配偶者が別の人と再婚できるようになるなど、親族の身分や権利関係は安定しますが、失踪宣告を受けると、前述のように行方不明者は死亡したものとみなされますので、相続が発生します。そのため、預貯金口座や不動産を相続し、名義変更も可能になる一方で、同時に借金も相続することになります。借金の相続を防ぐためには、相続放棄の手続きをするなどして対処することをお勧めします。

生死不明の親の借金調査には失踪宣告が必要

なお、行方不明者の推定相続人である子どもや親族でも、行方不明者が失踪宣告を受けるまでは生存している扱いとなるため、借金調査はできません。生死不明の親に借金がありそうで詳細を知りたいと思う場合には、失踪宣告の手続きをしてから相続人の立場で、借金調査を行うこととなります。

まとめ

親の借金は原則として子どもに返済義務はありませんが、相続、連帯保証、名義貸しの3つのケースでは責任を負う可能性があります。ただし、これらのケースでも対処法があります。

相続では、プラスとマイナス両方の財産を承継するため、借金を引き継ぎたくない場合は相続放棄や限定承認を検討すべきです。これには、被相続人が亡くなり、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内の手続きが必要です。もし、知らない間に借金を相続してしまった場合は、特殊事情があれば、手続き期限を過ぎても「相続放棄申述書」に「上申書」を添付して裁判所に提出することで、相続放棄を認められる場合があります。
連帯保証人になった場合は、親が返済できなくなると、主債務者である親と同様の返済義務を負いますが、自分が知らない間に保証人にされていた場合には、無権代理を主張することで、返済義務を負わずに済む可能性があります。
名義貸しをした場合は、子どもは返済義務を負いますが、親が勝手に子ども名義で借金をしたケースでは、名義冒用を主張して、返済義務を回避できることがあります。
もし、親の借金の返済義務が残り、どうしても返済できない場合には、債務整理をすることで借金を減らす・なくすことも検討しましょう。

親の借金への対処法は弁護士に相談を

上述したとおり、親の借金の返済義務と肩代わりへの対処法は存在します。

しかし、いずれも高度な法的対応であり、自分がその対処法を使えるのか、またどのように使うのか、一般の方には難しい部分があります。そのため、適切な手続きをするには、弁護士への相談がベストです。今は初回相談料を無料にしている弁護士も多いので、一人で悩まず、早めの相談を心がけましょう。

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