落下物による事故の責任と過失割合|落とし主が分からない場合の補償

落下物による事故の責任と過失割合|落とし主が分からない場合の補償

道路の落下物にぶつかった事故の責任は、原則として積荷を落とした車の運転者(落とし主)にあり、後続車の過失は落下物を避けられたかどうかで決まります。

落下物で車が壊れても、積荷を落とした車はすでに走り去っていることがあります。落とし主が分かっても、落とし主側の保険会社から「後続車にも過失がある」と言われ、納得できずにいる被害者もいるでしょう。

落とし主の責任と過失割合の決まり方、落とし主が分からないときに使える保険を順に確かめていきましょう。

落下物による事故の責任は原則として落とし主にある

落下物による事故の損害は、積荷を落とした落とし主が賠償するのが原則です。
ただ、落下物を避けられたはずの後続車や、落下物を踏んで跳ね上げた車にも、過失がつくことがあります。落とし主が分からなければ、落下物による事故は自損事故として扱われます。

運転者には積荷の転落を防ぐ義務がある

落下物による事故で落とし主が賠償の責任を負うのは、車の運転者に、積荷を道路に落とさないようにする義務があるためです。

道路交通法は、車両の運転者に、貨物を確実に積むなどして積載物の転落や飛散を防ぐ措置を講じる義務を課しています(71条4号)。積載物を道路に落としてしまったときは、速やかに取り除くなどして道路の危険を防ぐ義務もあります(71条4号の2)。
高速道路では、自動車の運転者は走り出す前に貨物の積載の状態を点検し、積載物の転落や飛散を防ぐ措置を講じなければなりません(75条の10)。

義務に違反した落とし主には、次の反則金や罰則が定められています。

道路 違反の名称 点数・反則金(普通車) 罰則
一般道・高速道路共通 転落等防止措置義務違反/転落積載物等危険防止措置義務違反 1点・6,000円 5万円以下の罰金(120条1項10号)
高速道路のみ 高速自動車国道等運転者遵守事項違反 2点・9,000円 積載物を落とした場合は3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金。過失による場合は10万円以下の罰金(119条1項19号・3項)

反則金や罰則は、落とし主が国に対して負う責任で、被害者への賠償とは別のものです。
被害者の車の修理費やけがの治療費は、義務を怠ったことが過失にあたるため、民法709条(不法行為)に基づいて落とし主が賠償します。NEXCO中日本とNEXCO西日本も、落下物による車両の損傷については「原則として落とし主に賠償責任がある」と案内しています。

参考:道路交通法(e-Gov法令検索)
参考:民法709条(e-Gov法令検索)
出典元:反則行為の種別及び反則金一覧表(警視庁)
出典元:交通違反の点数一覧表(警視庁)
出典元:落下物が原因で車に傷がつきましたがどうすればよいのですか?(NEXCO中日本)

避けられたのに避けなかった後続車には過失がつくことも

落とし主に責任があっても、積荷を落とした車の後ろを走っていた後続車が、落下物を避けられたのに避けなかった場合は、後続車にも過失がつくことがあります。
後続車の運転者にも、前をよく見て、道路や交通の状況に応じた速度と方法で運転する義務があるからです(道路交通法70条)。

後続車にどれだけ過失がつくかは、後続車が落下物を見つけて避けられたかどうかで決まります。判断の材料は次のとおりです。

  • 積荷が落ちてから衝突するまでの時間
  • 積荷を落とした車との車間距離と、後続車の速度
  • 夜間や雨など、前方の見通し
  • 落下物の大きさや色(遠くから見えるものだったか)
  • 走っていた車線(追越車線だったか)

たとえば、積荷を落とした車との車間距離を十分にとっていたのに、積荷が落ちた直後で避ける余地がなかった場合は、後続車の過失は小さく見られます。反対に、落下物が大きく目立つもので、ほかの車は避けて通っていた場合は、後続車の過失が大きく見られるでしょう。

落とし主側の保険会社から「後続車にも過失がある」と言われても、その過失の割合(過失割合)は事故の状況によって変わります。示された割合に合意する前に、どの事故状況を前提にした割合なのかを確かめましょう。

落下物を踏んで跳ね上げた車も責任を負う

落下物を踏んだ車が、落下物やその破片を跳ね上げて、後ろや隣の車に当ててしまう事故もあります。
跳ね上げた車の運転者も、前をよく見ていれば避けられた落下物を踏んだのなら、過失を問われます。

落とし主と跳ね上げた車の運転者の両方に過失がある場合、二人は共同不法行為者として、被害者の損害を連帯して賠償する責任を負います(民法719条1項)。
連帯とは、被害者が二人のどちらにも全額を請求できるという意味です。負担は二人の間でそれぞれの過失の割合に応じて分ける問題で、被害者が受け取れる額は変わりません。

被害者にとっては、走り去った落とし主よりも、すぐ前や隣を走っていた跳ね上げた車のほうが特定しやすいかもしれません。
跳ね上げた車の運転者に過失があれば、落とし主が見つからなくても、被害者は跳ね上げた車の対物賠償保険(他人の車や物への賠償に備える保険)から賠償を受けられます。

参考:民法719条(e-Gov法令検索)

落とし主の分からない落下物事故は自損事故に

落とし主が分からない落下物事故は、電柱やガードレールにぶつけたときと同じ、相手のいない自損事故として扱われ、被害者は自分の保険で損害を補います。

高速道路会社6社が令和6年度に処理した落下物は、動物の死骸(ロードキル)を除いても約24.0万件あります。
積荷を落とした車が、落としたことに気づかないまま走り去ってしまうと、落とし主を後から特定するのは難しいでしょう。

ソニー損保も、落下物の所有者が確認できない場合は、修理費などを自分の自動車保険で補償できると案内しています。
車の修理費は車両保険で、けがの治療費は人身傷害保険や健康保険で補います。車両保険を付けていなければ、修理費は自己負担です。

落とし主が分からないままでも、事故の届出は警察に済ませておきましょう。届出の記録がないと、後から落とし主が見つかったときに事故があった事実を示しにくくなります。

出典元:落下物処理・動物死骸処理件数(高速道路会社分)(国土交通省)
出典元:高速道路上での前車の落下物が原因となる事故(ソニー損保)

落下物による事故の過失割合

落下物による事故の過失割合は、高速道路と一般道で決まり方が違います。
高速道路の事故は、裁判所や保険会社が目安にしている別冊判例タイムズ(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)に基本の割合が示されています。一方、一般道の落下物事故には基準となる図がなく、後続車が落下物を避けられたかで事故ごとに判断するしかありません。

場面 過失割合の考え方
高速道路で前の車から落ちた 先行車60:後続車40が基本。見通しの悪さや追越車線などの事情で修正する
一般道で前の車から落ちた 基準となる図はなく、後続車が避けられたかで事故ごとに判断する
放置された落下物に乗り上げた ほかの車が避けて通っていた落下物なら、後続車も避けられたはずと見られやすい
避けようとして別の物に衝突した 落下物に接触していなくても落とし主の責任を問える

高速道路で前の車から落ちた場合

高速道路で前を走る車から積荷が落ち、後続車がぶつかった事故の基本過失割合は、先行車(落とし主)60:後続車40です。
別冊判例タイムズ38号の331図が示す割合では、近づいて初めて危険だと分かり、ぶつかればハンドルやブレーキの操作に影響する落下物を想定しています。後続車が落下物に接触した事故のほか、接触を避けようとブレーキをかけて起きた事故も対象です。

高速道路で前を走る車から落ちた積荷に後続車がぶつかった事故(基本過失割合 先行車60:後続車40)

先行車の過失が大きいのは、高速で走る後続車が落下物をとっさに避けるのは難しく、先行車には走る前に積載の状態を点検する義務まであるためです。後続車にも前方を注視する義務があるため、40の過失がつきます。

基本の割合は次のように修正されます。

  • 夜間や雨で見通しが悪かった、追越車線上の事故だった、後続車が二輪車だった:後続車の過失を減らす方向
  • 先行車の積み方が著しく不適切だった:先行車の過失を増やす方向
  • 後続車に速度違反や著しい前方不注視があった:後続車の過失を増やす方向

積荷が落ちた直後の事故でも、後続車の過失がゼロになるとは限りません。東京地裁の令和6年1月15日判決(LEX/DB25611307)は、片側3車線の高速道路で走行車線を走っていた車の荷台から鉄板が飛んで追越車線に落ち、約4秒後に、そこを時速約100kmで走っていた後続車が接触した事故で、回避の措置をとらなかった後続車にも過失があるとして、過失割合を先行車8:後続車2としました。

一般道で前の車から落ちた場合

一般道の落下物事故には、別冊判例タイムズに基準となる図がないため、過失割合は、後続車が落下物を避けられたかどうかを事故の状況から一つずつ検討して決まります。

一般道で前を走る車から落ちた積荷に後続車がぶつかった事故(過失割合は後続車が避けられたかで事故ごとに決まる)

一般道でも、落とし主には積載物の転落や飛散を防ぐ義務があります(道路交通法71条4号)。ただ、高速道路で先行車の過失を大きくする理由の一つだった、走る前に積載の状態を点検する義務(75条の10)は、一般道を走る車には課されていません。後続車の側では、一般道は高速道路より速度が低いため、ブレーキやハンドルで避ける余裕があったと見られやすいでしょう。

車間距離を保っていても、前の車の荷台から落ちた積荷が目の前に転がってきた場合は、後続車が避けるのは難しく、過失は小さく見られます。一方、街灯で前方が見えていた夜間の事故や、昼間に大きな落下物にぶつかった事故では、後続車の過失が大きく見られます。

一般道の事故では、後続車(被害者)の側の事情である車間距離や見通しを、ドライブレコーダーの映像や現場の写真で具体的に示せるようにしておきましょう。

放置された落下物に乗り上げた場合

落下物を落とした車(先行車)の運転者がそのまま走り去り、落下物がしばらく路上に残っていた場合も、後続車の過失は、その落下物を見つけて避けられたかで決まります。

ほかの車が落下物を避けて通っていれば、後続車も見つけて避けられたはずだと見られやすくなります。落ちてからの時間の長さそのものではなく、見通しや速度、落下物の大きさとあわせて判断されるものです。

ほかの車が避けて通っていた落下物に後続車が乗り上げた事故(見つけて避けられたかで判断)

一般道の例では、横浜地裁の平成29年10月17日判決(自保ジャーナル2013号)があります。夜間に片側2車線の国道で、先行車の車体の下に付けていたスペアタイヤが追越車線に落ち、十数分後に時速約50kmで走ってきた後続車が乗り上げた事故です。判決は、店の明かりや街灯で見通しは悪くなく、十数分の間ほかの後続車はほとんどタイヤにぶつかっていなかったことから、避けるのは難しくなかったとして、過失割合を先行車6:後続車4としました。
反対に、後続車に大幅な速度超過や前方不注視があれば、放置された落下物の事故でも、後続車の過失のほうが大きくなることがあります。

落下物を放置した落とし主は、落とした物を速やかに取り除く義務(道路交通法71条4号の2)も果たしていません。時間が経っていても落とし主の責任が消えるわけではありません。一方で、落下から衝突までの時間や、その間にほかの車がどう通っていたかは後続車の過失の判断材料になるため、自分や周りの車のドライブレコーダーの映像を集めておきましょう。

避けようとして別の物に衝突した場合

落下物を避けようとハンドルを切り、ガードレールや隣の車線の車にぶつかってしまうのも、落下物による事故の一つです。
落下物に接触していなくても、落下物がなければ起きなかった事故なので、避けた側の運転者は落とし主の責任を問えます。

落下物を避けようとして隣の車線の車やガードレールにぶつかった事故(落下物に接触していなくても落とし主の責任を問える)

避けた車がガードレールや他の車にぶつけた損害は、落とし主と避けた車の運転者の両方に過失があれば、二人が連帯して(損害を受けた側がどちらにも全額を請求できる形で)賠償する責任を負います(民法719条1項)。避けた車の過失は、減速して止まれなかったか、急なハンドル操作が必要だったかといった事情で判断されます。

落とし主が分からない場合は、避けた車の運転者が損害を自分の保険で補います。

  • ガードレールや他の車の損害:自分の対物賠償保険(使うと翌年の等級が3つ下がる)
  • 自分の車の損害:自分の車両保険(ガードレールや電柱にぶつけた損害は、エコノミー型では補償されない)

落下物にぶつかった直後にすること

落下物にぶつかったら、被害者はまず後続車による二次事故を防ぎ、次に警察と道路管理者の両方に知らせます。
110番は事故の届出、道路緊急ダイヤル(#9910)は落下物の撤去を頼む窓口で役割が違うため、両方に連絡しましょう。現場を離れた後でも、警察への届出とドライブレコーダーの映像の保存はできます。

車を安全な場所に止めて避難する

後続車に注意しながら、安全な場所に車を止めます。高速道路では、運転者も同乗者も全員が車内に残らず、車より後方の、ガードレールなどの防護柵より外側の安全な場所へ避難しましょう。けがをした人がいれば、119番で救急車を呼びます。

110番で事故として届け出る

落下物にぶつかったことを、交通事故として警察に届け出ます。届け出れば交通事故証明書が発行され、保険金の請求や落とし主の捜査の手がかりになります。現場で届け出られなかった場合も、気づいた時点で事故現場を管轄する警察署に連絡してください。

道路緊急ダイヤル(#9910)か非常電話で落下物を知らせる

道路緊急ダイヤルは、落下物などの道路の異状を24時間・無料で受け付けています。高速道路の非常電話は、本線上に1kmおき、トンネル内に200mおきにあり、受話器を取るだけで道路管制センターにつながる仕組みです。運転中の携帯電話の通話は禁止なので、同乗者にかけてもらうか、安全な場所に止めてからかけます。落下物を自分で拾いに行くのはやめましょう。

ドライブレコーダーの映像と現場の写真を残す

ドライブレコーダーの映像は上書きされる前に保存します。安全が確保できた場所から、車の損傷と、落下物や路面の状況を写真に残します。前を走っていた車が落とし主かもしれないので、そのナンバーもメモしておきましょう。

自分の保険会社に連絡する

落とし主が見つからない場合に備え、保険会社に事故を連絡し、車両保険(車の修理費)や人身傷害保険(自分や同乗者のけが)を使えるかを確かめましょう。

出典元:道路緊急ダイヤル(#9910)(国土交通省)
出典元:事故・故障のとき(NEXCO中日本)
出典元:もしもの時は?緊急時の対処法(NEXCO西日本)

落とした車を特定する方法

落とし主の車を特定する主な手がかりは、ドライブレコーダーの映像と、警察の捜査です。
積荷を落とした車が走り去ってしまうと手がかりは少ないため、映像の保存と警察への届出は、気づいた時点で済ませておきましょう。

ドライブレコーダーでナンバーを確かめる

落とし主の車のナンバーを確かめるには、まず被害者の車のドライブレコーダーの映像を見返します。
前方を撮るドライブレコーダーには、積荷が落ちた瞬間や、積荷を落とした車のナンバー、車体に書かれた会社名が映っていることがあります。映像に記録された日時は、事故の時刻と場所を示す材料にもなるでしょう。

常時録画の映像は古いものから上書きされます。事故の後は、SDカードを抜いて保存するか、映像をパソコンやスマートフォンに移しておきましょう。衝撃を感知して自動で録画する機能があれば、衝突前後の映像が別のフォルダに残っていることもあります。

積荷を落とした車のナンバーが映っていなくても、映像は過失割合の材料になります。落下物がいつから路上にあったか、どの距離で見えるようになったかが映っていれば、被害者の車(後続車)が避けられたかを示せるからです。

保存した映像は、警察と自分の保険会社に提出します。同乗者がスマートフォンで撮った写真や、積荷を落とした車の特徴をメモしたものも、あわせて渡しておきましょう。

警察に届け出て捜査を求める

落とし主の車を探す主な手段は、事故として届出を受けた警察の捜査です。
高速道路で積荷を転落させる行為や、積荷の転落を防ぐ措置を怠る行為は、道路交通法の罰則の対象になります。被害者は事故として届け出たうえで、落とし主を調べてほしいと警察に伝えましょう。

警察に届け出るときは、ドライブレコーダーの映像のほか、次のような情報を分かる範囲で伝えると、捜査の手がかりになります。

  • 事故の日時と場所(高速道路なら上り・下りと、近くのキロポストやインターチェンジ)
  • 積荷を落とした車の車種・色・ナンバーの一部・車体の会社名
  • 落下物の種類と大きさ

回収された落下物が持ち主の手がかりになる

高速道路で落下物が通報されると、道路管制センターが交通管理隊を出動させます。
交通管理隊が路上から取り除いた落下物そのものも、持ち主をたどる手がかりになります。製品の型番や会社名、箱に書かれた送り先などが残っていれば、落とし主にたどり着けるかもしれません。

ソニー損保も、落下物にぶつかったときは高速道路の管理会社に連絡し、落下物から所有者を確認してもらう流れを案内しています。届出の際は、警察や道路の管理会社に落下物の特徴を伝え、落とし主が分かったら連絡をもらえるよう頼んでおきましょう。

出典元:よくあるご質問-もしもの時は(NEXCO西日本)

落とし主が分からないときに使える補償

落とし主が分からない落下物事故では、被害者は損害を自分の保険などで補います。
車の損害とけがの損害で使える補償が違い、保険を使ったときの翌年の等級への影響も変わります。

損害 使える補償 翌年の等級
車の修理費 車両保険(落下中の物との衝突は一般型・エコノミー型とも対象。路上に止まっていた物に衝突した場合はエコノミー型は対象外) 落下中の物なら1等級ダウン、止まっていた物なら3等級ダウン
けがの治療費など 人身傷害保険、健康保険(第三者行為による傷病届を出す)、政府保障事業 人身傷害保険のみなら下がらない
道路の管理に落ち度があった場合の損害 道路管理者への賠償請求 -

車の損害は車両保険で補う

落とし主が分からない落下物事故で壊れた車の修理費は、自分の車両保険で補います。
車両保険には、補償の範囲が広い一般型と、範囲を絞って保険料を抑えたエコノミー型があり、落下物事故では、ぶつかったときの状況で補償される型が分かれます。

車両保険の約款で落下物事故に関わるのは、「飛来中または落下中の他物との衝突」という項目です。前の車から落ちてきた積荷が、落ちてくる途中で車にぶつかった場合は、飛来中または落下中の他物との衝突に当たり、一般型でもエコノミー型でも補償されます。

一方、すでに路上に落ちて止まっていた物に衝突した場合は、電柱やガードレールにぶつけた事故と同じ扱いになり、一般型では補償されますが、エコノミー型では補償されません。どちらだったか分からないときは、見たままの状況を保険会社に伝えて確認しましょう。

車両保険で支払われるのは、保険金額を限度に、修理費から免責金額(契約で決めた自己負担額)を引いた額です。

落下中の物なら1等級、止まっていた物なら3等級ダウン

車両保険を使った翌年は、等級が下がる仕組みです。
飛来中または落下中の他物との衝突で車両保険を使った場合は1等級ダウン事故となり、保険料が割増しになる事故有係数適用期間は1年加算されます。路上に止まっていた物にぶつかった場合は、電柱に衝突した事故と同じく3等級ダウン事故となり、事故有係数適用期間は3年加算されます。

修理費が少なければ、車両保険を使わず自分で払うほうが、保険料を含めた負担が軽いかもしれません。保険会社に、等級が下がった場合の保険料の差額を聞いてから決めましょう。

出典元:倒れてきた木が車を直撃した|車両保険ガイド(ソニー損保)
出典元:車両保険(東京海上日動)
出典元:保険料の決定の仕組み(三井住友海上)

けがは人身傷害保険や健康保険を使う

落とし主が分からない落下物事故でけがをしたときは、自分の人身傷害保険と健康保険で治療費などを補います。

人身傷害保険は、自動車事故でけがをしたときに、過失割合に関係なく、保険金額を上限に実際の損害額を補償する保険です。加害者が分からない事故でも、自分の人身傷害保険から補償を受けられます。
人身傷害保険だけを使った事故は、翌年の等級や保険料に影響しません(ノーカウント事故)。

交通事故によるけがでも、治療には健康保険を使えます。健康保険を使うときに出すのが、加入している健康保険への「第三者行為による傷病届」です。協会けんぽは、ひき逃げなどで相手が分からない交通事故でも届出が必要としており、交通事故証明書を添えて加入先の支部に提出します。加入先が健康保険組合や国民健康保険の場合も、提出先と書類は加入先に確認してください。落とし主が後から分かったときは、加入している健康保険に、落とし主が分かったことを届け出ましょう。

仕事中や通勤中のけがは、健康保険ではなく労災保険の対象なので、勤務先に伝えてください。

落とし主の車が分からないけがは、政府保障事業(ひき逃げなど加害者が分からない人身事故を、国が自賠責保険と同じ限度額で救済する制度)に請求できる場合があります。走行中の車から落ちた積荷によるけがは、車の運行によるものと認められれば対象で、物の損害は対象外です。窓口は損害保険会社で、人身傷害保険と重ねて受け取ることはできません。

出典元:人身傷害保険(三井住友海上)
出典元:第三者行為による傷病届(協会けんぽ)
出典元:政府保障事業(国土交通省)

道路の管理に落ち度があれば道路管理者に請求できる

落下物が長い間放置されていたなど、道路の管理に落ち度があった場合は、道路管理者に賠償を求められることがあります。国や都道府県・市町村が管理する道路では国家賠償法2条1項、NEXCOなど高速道路会社が管理する高速道路では民法717条(土地の工作物の設置・保存の瑕疵)が根拠で、道路が通常の安全性を欠いていたか(瑕疵)を問う点は同じです。

瑕疵ありとされた例に、最高裁の昭和50年7月25日判決(民集29巻6号1136頁)があります。国道の中央線近くに故障した大型貨物自動車が約87時間置かれたままなのに、道路管理者が知らず、措置をまったく講じなかった事案でした。

一方、工事標識が夜間に先行の車に倒された直後で、すぐに元に戻すのは無理だった事故では、瑕疵なしとされています(最高裁 昭和50年6月26日判決)。阪神高速は「落とし主不明の落下物や飛び石による損害については、当社は責任を負いかねます」と案内し、落下物の損害を補償しない立場です。落とし主が分からないというだけでは請求できず、落下物が放置されていた時間や、通報を受けてからの対応の遅れで判断されるため、弁護士に見通しを確かめてもらいましょう。

参考:国家賠償法(e-Gov法令検索)
参考:民法717条(e-Gov法令検索)
出典元:最高裁判所 昭和50年7月25日判決(裁判所)
引用元:落下物(阪神高速)

落とし主に請求できる損害賠償

落とし主が分かれば、被害者は落とし主に、車の損害とけがの損害の賠償を求められます。落とし主が自動車保険に入っていれば、示談交渉の相手は通常、落とし主側の保険会社です。落とし主が任意保険に入っていなくても、けがの損害は落とし主の自賠責保険に直接請求(被害者請求)できます。落とし主が仕事中に運転していた車なら、勤務先の会社にも賠償を求められることがあります(使用者責任)。
後続車にも過失があるとされた場合は、後続車の過失割合の分だけ受け取れる額が減ります(過失相殺)。

修理費やレッカー代などの車の損害

落下物で壊れた車について、被害者が落とし主に請求できる主な損害は次のとおりです。

  • 車の修理費(修理費が事故当時の車の価値を上回るときは、車の価値の額が上限)
  • 事故現場から車を運んだレッカー代
  • 修理の間に借りた代車の費用

たとえば修理費が50万円で、過失割合が先行車(落とし主)60:後続車(被害者)40なら、被害者の過失分を差し引いて、落とし主に請求できるのは30万円です。後続車の過失が1割違えば、受け取れる額は5万円変わります。
話し合いが長引くなら、自分の車両保険で先に直す方法もあります(翌年の等級は下がります)。

修理に出す前に、損傷の写真と修理見積書を残しておきましょう。車の損傷の位置や形は、落下物がどのようにぶつかったかを示し、過失割合の話し合いでも使えます。

車の損害として請求できる項目と、それぞれの金額の考え方は、次の記事で解説しています。

治療費や慰謝料などのけがの損害

落下物による事故でけがをした場合、被害者が落とし主に求められる主な損害は次のとおりです。

  • 治療費と通院のための交通費
  • 仕事を休んで減った収入(休業損害)
  • 入院や通院をしたことへの慰謝料
  • 後遺障害が残った場合の慰謝料と、将来の収入の減少分(逸失利益)

慰謝料の金額は、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)のどの基準で計算するかで変わり、一般に弁護士基準がもっとも高くなります。落とし主側の保険会社が示す金額がどの基準のものかを確かめておきましょう。
慰謝料の計算方法と3つの基準の違いは、次の記事で解説しています。

落とし主側の保険会社が「後続車にも過失がある」と主張して示談が進まないときは、交通事故に強い弁護士に相談するのが近道です。弁護士は、映像や裁判例をもとに避けられなかった事情を主張できます。
自分や同居の家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士に相談・依頼する費用を補償してもらえ、特約だけを使った事故は翌年の等級に影響しません。特約が付いているかは保険証券で確かめ、そのうえで弁護士に相談してください。

注目!

落下物による事故を交通事故に強い弁護士に相談する

当サイトを見ても疑問が解決しない、状況が異なるので判断が難しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。
初回相談無料の弁護士も数多く掲載しておりますし、どの弁護士もいきなり料金が発生するということはありません。まずはお気軽にご相談ください。

落下物による事故でよくある質問

落下物による事故では、落下物を見つけたときや、自分が積荷を落としてしまったときの対応で迷う人もいます。

道路の落下物を見つけたら自分で拾ってもいい?

道路の落下物は、自分で拾いに行かず、道路緊急ダイヤル(#9910)か非常電話で知らせましょう。
特に高速道路では、車が高速で走る本線や路肩を歩くことになり、後続車にはねられるおそれがあります。高速道路の非常電話は本線上に1kmおきにあり、料金所やサービスエリア・パーキングエリアの係員に伝えるのも一つの方法です。

道路緊急ダイヤルは一般道の落下物も受け付けますが、都道府県などが管理する道路は、夜間や土日・祝日にすぐ対応できない場合があります。落下物による事故がすでに起きていれば、110番に通報します。

落下物を踏んで止まらずに走り去ったら当て逃げになる?

踏んだだけで、ほかの車や物に損害を与えていなければ、当て逃げにはなりません。自分の車だけが壊れた場合も交通事故なので、警察への報告は必要です。

踏んだ拍子に落下物や破片が後ろの車に当たっていれば交通事故なので、車を止めて危険を防ぐ措置をとり、警察に報告する義務があります(道路交通法72条1項)。止まらずに走り去れば1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金(117条の5第1号)、報告しなければ3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金(119条1項17号)の対象です。

破片が後ろの車に当たったかもしれないと気づいたら、その時点で最寄りの警察署に届け出ましょう。当て逃げとして問われるのは、ほかの車に当てたと分かっていながら(当たったかもしれないと思いながら)止まらなかった場合です。止まっても警察に報告しなければ、報告義務違反になります。踏んだことにも、破片がほかの車に当たったことにも気づきようがなかった場合までは含みません。

参考:道路交通法72条(e-Gov法令検索)

自分の車から荷物を落としてしまったら?

自分の車から荷物を落としたときは、道路の危険を防ぐため、速やかに取り除くなどの措置をとる義務があります(道路交通法71条4号の2)。
一般道で安全に車を止めて取りに行ける場合は、周りの車に注意して取り除きます。高速道路では本線を歩いて拾いに行かず、110番や非常電話、道路緊急ダイヤル(#9910)で落とした場所を伝えましょう。

落とした荷物にほかの車がぶつかっていれば、交通事故として警察に報告し、自分の保険会社にも連絡します。被害者への賠償は、自分の対物賠償保険や対人賠償保険から支払うことになります。

落下物で飛び石のように傷が付いた場合も請求できる?

トラックの荷台から砂利がこぼれて当たった場合のように、積荷が飛び散って車に傷が付いたのなら、積荷の飛散を防ぐ義務を怠った落とし主に賠償を求められます。
ただ、飛んできた小石や破片では、相手の車を後から特定するのは難しいかもしれません。

相手が分からない場合は、自分の車両保険で補います。飛び石によるフロントガラスの割れなどは「飛来中または落下中の他物との衝突」に当たり、一般型でもエコノミー型でも補償され、翌年は1等級ダウンです。

まとめ

落下物による事故の責任は、積荷の転落を防ぐ義務を怠った落とし主にあるのが原則です。
後続車の過失は、落下物を見つけて避けられたかどうかで増減し、高速道路では先行車60:後続車40が基本の割合とされています。積荷が落ちた直後で避ける余裕がなかった事故なら、後続車の過失はさらに小さく見られます。落とし主側の保険会社が示す割合をそのまま受け入れる必要はありません。

落とし主が分からない場合も、警察に事故として届け出て、ドライブレコーダーの映像を残しておけば、後から落とし主が見つかったときに賠償を求めやすくなります。見つからないまま終わっても、車の損害は車両保険、けがは人身傷害保険や健康保険で補えます。

落下物による事故は交通事故に強い弁護士に相談する

交通事故弁護士相談広場では、交通事故の被害相談を受け付けている法律事務所を、都道府県から探せます。
後続車の過失がどれだけつくのか、提示された過失割合が妥当なのかを、無料相談で確かめてみましょう。

交通事故に強い【おすすめ】の弁護士に相談

交通事故

一人で悩まずご相談を

  • 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない
  • 交通事故を起こした相手や保険会社とのやりとりに疲れた
  • 交通事故が原因のケガ治療を相談したい