サンキュー事故とは?過失割合と損害賠償、道を譲った車・譲られた車の責任と対処法

サンキュー事故の過失割合は、原則として、道を譲られて進んだ車の側が重くなります。
対向車に譲られて右折した車が、譲った車の陰から直進してきたバイクと衝突した場合、双方が青信号なら、別冊判例タイムズ38号の基本過失割合は直進バイク15:右折車85です。
対向車線が渋滞していて、右折車が車列の隙間を抜けた場面では、直進バイク30:右折車70になります。
道を譲った車の運転者は、止まって道を譲っただけなら責任を負いません。
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サンキュー事故とは

サンキュー事故とは、止まった車に道を譲られた車や歩行者が進んだ直後に、譲った車の陰から来た車やバイクなどと衝突する事故のことを指します。
サンキュー事故は法律上の用語ではなく、譲られた運転者が「ありがとう(サンキュー)」と感謝して進んだ直後に起きることから、この名前で呼ばれています。
サンキュー事故の過失割合は右直事故(右折車と直進車の事故)などの類型に当てはめて決まり、典型的な場面としては次の3つです。
これら3つはいずれの場面も
- 譲った車の陰が死角になること
- 譲られた側が「待たせているから早く進まなければ」と焦ること
という2つの原因が共通します。
譲られて右折した車と直進バイクの衝突
サンキュー事故の典型は、信号待ちや渋滞で止まっている対向車が、パッシングや手合図で右折車に「お先にどうぞ」と道を譲る場面です。
右折車が対向車の前を横切った瞬間に、対向車の左側をすり抜けてきたバイクや自転車と衝突するのが、典型的な事故の形です。
対向車がトラックやバスなど車高の高い車だと、右折車の運転席からは対向車の左側がほとんど見えません。
直進してくるバイクの側から見ても、止まった対向車の陰から右折車が急に現れる形になり、ブレーキが間に合わないことがあります。
渋滞中に道路外へ右折する車と直進バイクの衝突
渋滞している車列が隙間を空けて、反対車線からコンビニやガソリンスタンドへ右折で入ろうとする車を通す場面です。
右折車が車列の隙間を抜けたところで、車列と同じ方向に車列の左側を走ってきたバイクと衝突します。
また、駐車場から道路に出ようとする車を、渋滞の車列が入れてあげる場面も同じ形です。
車列の隙間から出てくる車と、車列の横を走るバイクは、どちらも止まっている車にさえぎられて互いの姿が見えず、相手に気づくのが遅れます。
止まった車の陰から横断する歩行者との衝突
横断歩道の手前で車が止まり、歩行者に道を譲る場面です。
歩行者が止まった車の前を渡り始めたところで、隣の車線から止まった車の横を通り抜けてきた車が、歩行者と衝突します。
止まった車の陰にいる歩行者は、隣の車線を走る運転者からは見えません。
道路交通法38条2項は、横断歩道やその手前の直前で止まっている車がある場合、その横を通って前に出ようとする車に、前に出る前の一時停止を義務づけています。
止まった車が歩行者に道を譲ったことがきっかけで起きるため、この衝突もサンキュー事故の一つです。
サンキュー事故の過失は道を譲られて進んだ車が重い

サンキュー事故には、
- 道を譲られて進んだ車
- 直進してきた車やバイク
- 道を譲った車
の3者が関わります。そのうち、過失が最も重くなるのは道を譲られて進んだ車です。
直進中の車が停止して道を譲ってきたとしても、道を譲られて進んだ車の運転者が安全を確かめる義務が軽くなることはありません。
停止した車の陰から直進してきた車にも基本過失割合で一定の過失がつき、道を譲った車は原則として責任を負いません。
なお、道を譲られて横断した歩行者と、止まった車の横を通り抜けた車の事故では、基本過失割合で過失がつくのは車の側だけです。
譲られても右折車の注意義務は残る
対向車が道を譲ってくれても、右折車の運転者が周りの安全を確かめる注意義務はなくなりません。
道路交通法37条は、交差点で右折する車に、直進や左折をしようとする車の進行を妨げてはならないと定めています。
コンビニや駐車場に入る場面のように、道路外へ出入りするために右折する車も、他の車や歩行者の正常な通行を妨げるおそれがあるときは右折できません(道路交通法25条の2第1項)。
譲った車の陰から来る車やバイクに対する右折車の注意義務も、そのまま残ります。
パッシングや手合図は、譲った車の運転者が「止まって待つ」と伝えているだけで、周りの安全を確かめたという合図ではないからです。
右折車の運転者は、譲った車の陰にバイクや自転車がいる前提で、少しずつ前に出て安全を確かめなければなりません。
直進車にも安全に進む義務がある
直進車は右折車に優先しますが、サンキュー事故の基本過失割合では、直進してきた車やバイク、自転車の側にも10~30%の過失がつきます。
道路交通法36条4項は、交差点に入る車に対して、反対方向から来て右折する車に特に注意し、できる限り安全な速度と方法で進むよう求めているからです。
裁判所や保険会社が過失割合の目安にする別冊判例タイムズ38号でも、信号のある交差点で直進車と右折車がどちらも青信号だった場合、基本過失割合(事故の型ごとに決められた出発点の割合)は直進車20:右折車80とされています。
被害者である直進車の運転者が受け取る損害賠償金は、直進車の側についた過失割合の分だけ減ります。
譲った車は原則として責任を負わない
右折車と、譲った車の陰から来た直進車が衝突しても、道を譲った車の運転者は、原則として事故の責任を負いません。
事故を起こしたのは、それぞれ自分で安全を確かめて進む義務を負っていた右折車と直進車で、譲った車は止まって待っていたにすぎないからです。
民法709条の損害賠償の責任は、過失(注意を怠ったこと)によって他人に損害を与えた人が負います。
止まって道を譲っただけでは、譲った車の運転者に過失があったとはいえません。
合図で積極的に進行を促すと責任を問われることがある
右折車に道を譲った車の運転者は原則として責任を負いませんが、譲った車の運転者が自分の左後方を確かめないまま、手を大きく振って「来ていないから大丈夫」と伝えるように右折を促した場合は、責任を問われることがあります。右折車の運転者がその合図を信じて進んだ結果、譲った車の横を走ってきたバイクなどと衝突したといえる場合、譲った車の運転者にも過失があったと判断される余地があるためです。
それでも、譲った車の運転者に責任が認められるケースは限定的で、右折した車にどこまで合図すると責任が生じるかは事故ごとに判断されることになります。
道を譲った車の運転者に過失が認められた場合、道を譲った車は事故を起こした右折車と連帯して被害者に賠償する立場となりますが(民法719条1項)、そのことによって右折車の責任自体が軽くなるわけではありません。
参考:道路交通法37条(e-Gov法令検索)
参考:民法709条(e-Gov法令検索)
サンキュー事故の場面別の過失割合
サンキュー事故の過失割合は、事故の型ごとの基本過失割合をまとめた別冊判例タイムズ(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)を参考に、事故の場面に当てはめて決まります。
実際の過失割合は警察が決めるものではありません。通常はまず当事者(多くは双方の保険会社)の示談交渉で話し合われます。交渉が難航し過失割合が決まらなかった場合は訴訟となり、最終的には裁判所が決定することになります。
この記事に記載の割合は別冊判例タイムズの38号(全訂5版)をもとにしていますが、最新版は2026年3月に出た39号(全訂6版)です。
実際の事故にどの割合が当てはまるか、細かな点は、交通事故に強い弁護士に確認してもらいましょう。
| 場面 | 基本過失割合 | その割合になる理由 |
|---|---|---|
| 交差点で右折する車と直進車 | 直進車20:右折車80(双方が青信号) | 直進車が優先されるが、直進車にも右折車への注意が求められる |
| 渋滞中に右折する車と直進バイク | 直進バイク30:右折車70 | 車列の横を走るバイクは、隙間から出てくる車を予測できる |
| 道路外へ出入りする車と直進車 | 直進車20:道路外から出る車80 直進車10:道路外へ入る車90 |
道路を走る車の通行が優先される |
| 右折する車と直進自転車 | 自転車10:右折車90(双方が青信号) | 自転車は車より弱い立場として保護される |
| 横断歩道を渡る歩行者と車 | 歩行者0:車100(歩行者が青信号、または信号のない横断歩道) | 横断歩道では歩行者が優先される |
交差点で右折する車と直進車
信号のある交差点で双方が青信号なら、四輪車同士の基本過失割合は直進車20:右折車80です。
信号のない交差点で、右折車が直進車の対向車線から右折した場合も、基本過失割合は直進車20:右折車80になります。
直進してきたのがバイクの場合は、直進バイク15:右折車85で、四輪車同士より右折車の過失が5%重くなります。
バイクは転倒すると大きなけがにつながりやすいため、四輪車の側により重い注意が求められるからです。
直進車が黄信号で交差点に入った場合など、信号の色の組み合わせが違うと、割合は大きく変わります。

対向車が止まって道を譲ってくれた場合も、直進してきたバイクとの関係では、直進バイク15:右折車85が出発点です。
対向車線が渋滞していて、止まった車列の隙間を抜けて右折した場合は、直進バイク30:右折車70が出発点になります。
渋滞中に右折する車と直進バイク
渋滞している車列の隙間を抜けて右折した車と、車列の左側を直進してきたバイクの事故は、基本過失割合が直進バイク30:右折車70です。
信号のない交差点で対向車線から右折した車と直進バイクの事故(直進バイク15:右折車85)より、バイクの過失が重く評価されています。
車列の横を走るバイクは、車列が隙間を空けて止まっていれば、車列の隙間から右折車が出てくることを予測できるからです。

なお、コンビニやガソリンスタンドへ右折する場合のように、事故の場所が交差点ではないときは、直進バイクの過失は30%より小さく修正されます。
交差点ではない場所では、車列の隙間から右折車が出てくることを、バイクの側が交差点ほどには予測しにくいためです。
道路外へ出入りする車と直進車
駐車場などの道路外から右折して道路に出る車と、道路を直進してきた車の事故は、基本過失割合が直進車20:右折車80です。
直進してきたのがバイクの場合は、直進バイク10:右折車90になります。
反対に、道路から駐車場などの道路外へ右折して入る車と直進車の事故は、直進車がバイクでも四輪車でも、直進車10:右折車90です。

道路外へ出入りする車には、道路を走る車の通行を妨げないことが求められるため(道路交通法25条の2第1項)、出入りする車の過失が重くなります。
また、駐車場から出る車が車列に入れてもらおうと車道に頭を出して待っていた場合は、直進車の側からも見えていたとして、直進車の過失を増やす修正要素(割合を増減させる事情)になります。
なお、渋滞している車列の隙間を抜けて道路外へ右折で入る車と、車列の左側を直進してきたバイクの事故は、渋滞中に右折する車と直進バイクの割合(直進バイク30:右折車70)をもとに、交差点ではないことを考慮して直進バイクの過失を小さく修正して考えるのが一般的です。

右折する車と直進自転車
右折車に道を譲って止まった対向車の左側を、自転車が直進してきて右折車とぶつかった事故では、基本過失割合は自転車10:右折車90です。
双方が青信号の交差点でも、信号のない交差点でも、自転車10:右折車90の割合は同じです。

自転車は、バイクと比べても弱い立場(交通弱者)として保護されるため、同じ場面でのバイク(直進バイク15:右折車85)よりも、自転車の過失は小さく評価されます。
自転車に乗っていたのが児童や高齢者の場合は、自転車の過失がさらに小さく修正されます。
横断歩道を渡る歩行者と車
横断歩道を渡る歩行者と車の事故では、歩行者が青信号で渡っていた場合や、信号のない横断歩道を渡っていた場合、基本過失割合は歩行者0:車100です。
対向車に譲られて右折した車が横断歩道で歩行者とぶつかった場合も、止まった車の横を通り抜けた車が歩行者とぶつかった場合も、基本過失割合は同じです。

横断歩道では歩行者が優先され、車は横断歩道の手前で止まれる速度で近づき、渡ろうとする歩行者がいれば一時停止しなければなりません(道路交通法38条1項)。
止まった車の横を通って前に出る車には、さらに前に出る前の一時停止が義務づけられています(同条2項)。
右折車と直進車がぶつかる事故(右直事故)の過失割合は、信号の色の組み合わせや道路の幅ごとに表でまとめた記事で確認できます。
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サンキュー事故の過失割合を動かす修正要素
サンキュー事故の過失割合は、基本過失割合に、事故ごとの事情(修正要素)を加えて決まります。
被害者と保険会社の間で争点になりやすいのは、直進車の速度違反、バイクのすり抜け、右折車の曲がり方です。
別冊判例タイムズ38号の代表的な修正要素は次のとおりです。
| 修正要素 | 過失が増える側 | 修正の目安 |
|---|---|---|
| 直進車のおおむね時速15km以上の速度違反 | 直進車 | 10%程度 |
| 直進車のおおむね時速30km以上の速度違反 | 直進車 | 20%程度 |
| 直進バイクの著しい前方不注視 | 直進バイク | 10%程度 |
| 右折車の徐行なし | 右折車 | 10%程度 |
| 右折車の合図なし | 右折車 | 10%程度 |
| 直近右折(直進車の目の前で曲がり始める) | 右折車 | 10%程度 |
| 既右折(右折をほぼ終えていた) | 直進車 | 10%程度 |
直進車の速度違反は直進車の過失を増やす
直進車が制限速度をおおむね時速15km以上超えていた場合は直進車の過失が10%程度、時速30km以上超えていた場合は20%程度加算されます。
道を譲った車の陰から直進車が高速で走ってきた場合、右折車の運転者は距離を見誤りやすく、直進車自身も止まりきることができません。そのため、このケースでは直進車の速度違反に対して責任が問われます。
これをふまえ、右折車側の保険会社は、ドライブレコーダーの映像や路面に残ったブレーキ跡、車の壊れ方から速度を推定し、直進車の速度違反を主張してくることがあります。
直進車の運転者は、事故当時の速度を記憶だけに頼らず、映像などの記録で確かめておきましょう。
すり抜けは渋滞中の基本過失割合に含まれる
渋滞中の事故の基本過失割合(直進バイク30:右折車70)は、バイクが車列の横を走ってくる場面を前提に決められています。バイクによる車列横のすり抜けは基本過失割合の中ですでに考慮されていることから、すり抜けによる事故であることだけを理由として、バイク側の過失が加算されるわけではありません。
バイクの過失が加算されるのは、すり抜けの際に
- 前をよく見ていなかった(著しい前方不注視)
- 大幅な速度違反をしていた
など、すり抜けとは別の落ち度がある場合です。
相手方の保険会社が「すり抜けていたのでバイクの過失を上乗せする」と提示してきたら、どの修正要素に当てはめたのかを確かめるようにしてください。
徐行や合図をしない右折は右折車の過失を増やす
右折車は、交差点の中心のすぐ内側を徐行しながら曲がらなければならず(道路交通法34条2項)、曲がる前にはウインカーなどで合図を出す必要があります(道路交通法53条1項)。
右折車が徐行しなかった場合や合図を出さなかった場合は、それぞれ右折車の過失が10%程度加算されます。
サンキュー事故では、道を譲られた右折車の運転者が「待たせて悪い」と急いで曲がることが多く、そうした右折は徐行なしと評価されがちです。
また、右折車が直進車のすぐ目の前で曲がり始めた場合(直近右折)も右折車の過失が10%程度加算されます。
右折を終えかけていた車は過失が減る
直進車が交差点に入る時点で右折車が右折をほぼ終えていた場合(既右折)は、右折車の過失が基本過失割合から10%程度減ります。
こうした状況の場合、直進車の運転者は前に右折車がいることに気づいて、車を止める余裕があったものと考えられるためです。
右折車の事故時の状況が既右折にあたるかどうかは、衝突した位置、衝突した時点で右折車がどこまで進んでいたかで判断されます。
ドライブレコーダーの映像や警察が作成する実況見分調書の図面が、判断の重要な手がかりになります。
サンキュー事故の損害賠償は過失割合の分だけ減る
サンキュー事故の被害者が受け取る損害賠償金は、原則として、被害者自身の過失割合の分だけ減ります。
直進バイク15:右折車85の事故なら、直進バイクの被害者の損害賠償金は、損害総額から15%が差し引かれます。
被害者の側にも過失がつくと、相手方の損害の一部を負担することになる点にも注意が必要です。
自分の過失の分だけ差し引かれる
被害者が相手方に請求できる損害賠償金は「損害の総額×(1-被害者の過失割合)」で計算します。
被害者にも過失があるときは、裁判所は損害賠償の額を決める際にその過失を考慮できると、民法722条2項で定められているからです(過失相殺)。
たとえば、直進バイクの被害者の損害総額が400万円で、過失割合が直進バイク15:右折車85の場合は、次のとおりです。
400万円×(1-0.15)=340万円
被害者が相手方に請求できるのは340万円で、自分の過失の分の60万円は請求できません。損害総額400万円の事故では、過失割合が5%違うだけで、請求できる金額が20万円変わります。
相手方にも車の修理費などの損害がある場合は、被害者が負担する額も過失割合に応じて変わるため、実際に手元に残る金額の差はさらに大きくなります。
被害者が請求できる主な損害
サンキュー事故の被害者は、けがや車の損害について、次のような損害を相手方に請求できます。
- 治療費・通院交通費
- 休業損害(けがで仕事を休んで得られなかった収入)
- 入通院慰謝料(けがの治療に伴う精神的な苦痛への補償)
- 後遺障害慰謝料・逸失利益(後遺障害が残った場合の精神的な苦痛への補償と、将来得られなくなった収入)
- 修理費・代車費用(車やバイクの損害)
慰謝料は、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)のどれで計算するかで金額が変わり、3つの基準のうち弁護士基準が最も高くなります。
慰謝料の3つの基準と相場は、次の記事で解説しています。
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相手方の損害の一部は被害者も負担する
被害者にも過失がつくと、被害者は相手方の損害のうち、自分の過失割合の分を支払わなければなりません。
たとえば、右折車の修理費が100万円で、過失割合が直進バイク15:右折車85なら、被害者である直進バイクの運転者は、右折車の側に15万円を支払う計算です。
被害者が任意保険の対物賠償(相手の車や物の損害を補償する保険)に加入していれば、相手方への支払いを保険でまかなうことができます。
ただし、保険を使うと翌年の等級(保険料の割引率を決める区分)が下がり、保険料が上がる点に注意が必要です。
双方の合意により受け取る額と支払う額を差し引いて精算する方法(相殺払い)と、お互いに支払う方法(クロス払い)の違いは、過失割合8対2の事故を例に次の記事で解説しています。
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サンキュー事故に遭った直後にすること
サンキュー事故に遭ったら、警察への届出とあわせて、道を譲った車の運転者から話を聞き、連絡先を確かめておくことが大切です。
道を譲った車の運転者は、右折車と直進車の動きを正面から見ていた第三者で、その場を離れてしまうと後から探すのは困難です。
次の順に進めましょう。
負傷者を救護し、警察に届け出る
交通事故の運転者には、負傷者を救護し、警察へ報告することが義務づけられています(道路交通法72条1項)。
けがをしたときは、医師の診断書を警察に提出して、人身事故として届け出るようにしてください。
人身事故として扱われると、警察が実況見分(警察官が事故現場を確認する手続き)を行い、事故状況を記録した実況見分調書を作成します。
物損事故のままでは、警察が作るのは簡単な図面(物件事故報告書)だけで、過失割合を争うときの重要な証拠になる実況見分調書が残りません。
道を譲った車の運転者に事情を聞き、連絡先とナンバーを控える
道を譲った車の運転者には、その場で、右折車と直進車のどちらが先に動いたか、どんな合図をしたか、直進してきた車やバイクがどのくらいの速さだったかなど、見たことを聞いておきましょう。
あわせて、氏名と連絡先、車のナンバーを控えておけば、保険会社との交渉で証言が必要になったときに連絡がつきます。
譲った車のドライブレコーダーには、右折車の動きや合図の様子が写っていることがあります。
譲った車の運転者は事故の当事者ではないため協力は任意ですが、映像を消さずに残してもらえるよう、その場で頼んでおくようにしてください。
被害者がけがで動けないときは、同乗者や駆けつけた警察官に、道を譲った車の運転者の連絡先を聞いてもらうよう頼むのも一つの方法です。
自分のドライブレコーダーの映像を保存する
ドライブレコーダーは古い映像から上書きされる機種が多いため、事故の直後に、SDカードを抜いて保管する、スマートフォンやパソコンにコピーするなどして映像を保存しましょう。
周辺の店舗に防犯カメラがあれば、上書きされる前に映像の保存を頼んでおくと安心です。
痛みが軽くても病院で診察を受ける
事故から日が経ってから受診すると、相手方の保険会社が、事故とけがの関係を争ってくるおそれがあります。
首や腰の痛みは事故の翌日以降に出ることもあるため、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。
物損事故として届け出ていた場合も、病院で受け取った診断書を警察に提出して、人身事故への切り替えを申し出ることができます。
事故から日数が経つと受け付けてもらえないことがあるため、診断書を受け取ったら早めに警察へ提出しましょう。
人身事故へ切り替える手順は、次の記事で解説しています。
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サンキュー事故の過失割合に納得できないときの対処法
相手方の保険会社から提示された過失割合に納得できないときは、割合の根拠を確かめ、修正要素(割合を増減させる事情)を裏づける証拠をそろえて交渉し直すことができます。
保険会社から示談内容を提示されただけで、まだ合意していない段階であれば、過失割合について交渉することができます。
話し合いでまとまらない場合は、交通事故紛争処理センターや訴訟で第三者に判断を求めることも検討しましょう。
過失割合の根拠を書面で求める
相手方の保険会社には、別冊判例タイムズ(過失割合の基準書)のどの事故類型の図から基本過失割合を取ったか、どの修正要素をどれだけ加えたかを、書面やメールで示してもらいましょう。
被害者が自分の保険会社に示談交渉を任せている場合は、自分の保険会社の担当者に、同じ根拠を書面で示してもらうよう頼みます。
サンキュー事故では、事故の場面をどの図に当てはめるか自体が争点になります。同じ右折でも、交差点か、渋滞中か、道路外への出入りかで、基本過失割合が10%以上変わるからです。
保険会社から根拠を書面で示してもらえば、被害者は、事故の場面をどの図に当てはめたかと、修正要素のどこに食い違いがあるかを具体的に指摘できます。
保険会社が提示した示談内容に合意する前に、根拠の書面を確かめるようにしてください。
修正要素を裏づける証拠を集める
修正要素は、その事情を主張する側が証拠で裏づける必要があります。
サンキュー事故で修正要素を裏づける主な証拠は次のとおりです。
- ドライブレコーダーの映像(自分の車・相手方の車・道を譲った車)
- 周辺の店舗や施設の防犯カメラの映像
- 警察が作成した実況見分調書(人身事故の場合)
- 道を譲った車の運転者や、周りにいた人の証言
- 車やバイクの損傷の位置と程度がわかる写真
実況見分調書は、刑事手続きの記録として扱われるため、被害者が自分で入手するには所定の手続きが必要です。
ドライブレコーダーや防犯カメラの映像は上書きで失われやすいため、事故の後できるだけ早く保存を確保しましょう。
弁護士に依頼すれば、実況見分調書の取り寄せや、映像から速度や位置関係を読み取る作業を任せられます。
紛争処理センターや訴訟を利用する
保険会社との話し合いで過失割合が決まらない場合は、公益財団法人交通事故紛争処理センターを利用できます。
交通事故紛争処理センターは、自動車事故の損害賠償について、弁護士による法律相談と和解あっせんを無料で行っていて、全国11か所(東京本部・7支部・3相談室、2026年10月時点)で受け付けています。利用には事前の電話予約が必要です。
和解あっせんでも合意できなければ、裁判所に訴訟を起こし、証拠に基づいて過失割合を判断してもらうことになります。
訴訟では、修正要素をどの証拠で立証するかが、結果を左右するポイントです。
交通事故に強い弁護士は、事故の場面がどの基本過失割合に当てはまるかを見直し、保険会社の提示に反論できる修正要素と証拠を示してくれます。
被害者や家族が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士への相談料や依頼の費用を保険でまかなえ、特約を使っても翌年の等級は下がりません。
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サンキュー事故でよくある質問
サンキュー事故では、ドライブレコーダーがない場合の扱いや、巻き込まれた車の請求先、違反点数など、過失割合以外にも迷う点があります。
サンキュー事故はドライブレコーダーがないと不利になる?
被害者の車にドライブレコーダーがなくても、それだけで過失割合が不利に決まるわけではありません。
基本過失割合は事故の場面で決まり、事故の場面は人身事故なら実況見分調書(警察が作る事故状況の記録)や、車の損傷からも確かめることができます。
ただし、相手方の速度違反や右折車の合図の有無など、修正要素を主張する上では、映像がないと立証が難しくなります。
道を譲った車や後続車のドライブレコーダー、周辺の防犯カメラに映像が残っていないか、早めに確かめておきましょう。
道を譲った自分の車も巻き込まれたら誰に請求する?
道を譲って止まっていた車が、右折車と直進車の衝突に巻き込まれた場合、譲った車の運転者は、右折車と直進車の双方に損害賠償を請求できます。
止まって待っていた譲った車の運転者は、原則として過失を問われません。
右折車と直進車の双方に過失があって起きた事故では、右折車と直進車の運転者が連帯して損害を賠償する責任を負います(民法719条1項)。
そのため、譲った車の運転者は、どちらか一方に損害の全額を請求することもできます。
サンキュー事故を防ぐには?
道を譲られた運転者は、すぐに進まず一呼吸置きましょう。譲ってくれた車の陰からバイクや自転車が来ないかを確かめてから、少しずつ前に出るようにしてください。
特に、譲ってくれた車がトラックやバスなどの大きな車のときは、車の陰になって見えない範囲も広くなり、後ろから来るバイクや自転車がいっそう見えにくくなります。
道を譲る運転者の側も、譲る前にサイドミラーで自分の車の左後方を確かめ、バイクや自転車が近づいていないか見ておくと安心です。
手を振って進行を強く促す合図は、相手の運転者の安全確認を省かせるおそれがあるため控えましょう。
譲られて進んだ側の免許の点数はどうなる?
道を譲られて進んだ車が人身事故を起こした場合、運転者には違反行為の点数に、けがの程度に応じた付加点数が加わります。
付加点数は、たとえば治療期間が15日未満のけがなら、事故が専ら(ほぼ全面的に)運転者の不注意で起きた場合は3点、相手にも不注意があった場合は2点です。
たとえば、道を譲られて右折した車が直進してきたバイクとぶつかり、右折車の違反行為が安全運転義務違反(2点)、バイクの運転者のけがの治療期間が15日未満、事故が専ら右折車の運転者の不注意で起きたときは、右折車の運転者の点数は合計5点になります。
事故が専ら右折車の不注意で起きたかどうかは、免許の点数を付ける行政処分の中で判断され、民事の過失割合とは別の判断です。
なお、人身事故では、免許の点数とは別に、過失運転致死傷罪として刑事責任を問われることもあります。
出典元:交通事故の付加点数(警視庁)
まとめ
サンキュー事故は、道を譲られた車や歩行者が進んだ直後に、譲った車の陰になって見えなかった車やバイクと衝突する事故です。
譲られたことで右折車の注意義務は軽くならず、過失割合は原則として道を譲られて進んだ車の側が重くなります。
それでも、直進してきた被害者の側にも、基本過失割合の段階で10~30%の過失がつくのが原則です。
事故の場面をどの基本過失割合に当てはめるか、すり抜けや速度をどう評価するかで、受け取れる損害賠償金は大きく変わります。
保険会社から提示された過失割合をそのまま受け入れる前に、道を譲った車の運転者の証言やドライブレコーダーの映像など、手元にある材料を確かめてみてください。
保険会社が提示した示談内容に合意する前であれば、過失割合を見直してもらう余地があります。
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