過失割合でゴネ得!加害者がゴネる理由とさせないための対処法

過失割合でゴネ得~加害者がゴネる理由とさせないための対処法
交通事故の加害者は、過失割合のゴネ得を目論んで、不当な主張をゴリ押ししてくる場合があります。

「ゴネ得」は本来得られないはずの利益や便宜を得る行為のことで、正当な権利の主張とは異なり、無理を通して相手を折れさせることで利益を得る、不誠実な行為です。

本記事では、交通事故の示談交渉の場でこうしたゴネ得をしようとする加害者への対処法を丁寧に解説します。

過失割合のゴネ得とは?

交通事故の過失割合における「ゴネ得」とは、事故の当事者双方の責任の割合、すなわち過失割合について、当事者の片方が自分に都合の良いように不当な主張を繰り返し、それを無理に押し通して利益を得ることを言います。

個別の事情にもよりますが、動いている車同士の事故を筆頭に、交通事故では加害者だけではなく被害者にも過失がある場合が多いです。ですが、ゴネられたからと言って不当な過失割合を受け入れてしまうと、加害者が一方的に得をし、その後の損害賠償金に大きな影響が生じます。

相手に強くゴネられると、つい、ひるんでしまいがちですが、何の対処もしなければゴネは悪化する可能性もありますし、こちらが納得できない示談を強引に成立させられてしまいます。

こうした事態を防ぐためには、過失割合のゴネ得とはどういうものか十分に理解した上で、何らかの手を打つ必要があると言えます。

加害者が過失割合をゴネ得しようとする理由

そもそも加害者が過失割合をゴネ得しようとするのはなぜでしょうか?

損害賠償金の支払い額を減らしたい

交通事故の損害賠償では、損害額の総額から被害者の過失割合分を差し引いて、支払われる損害賠償金を算出します。

そのため、加害者が任意保険に加入していない場合や、加入していても損害額が補償範囲を超える場合には、自腹を切って支払う損害賠償金の金額を減らそうと、相手がゴネ得を狙う可能性があります。

示談金の支払い時期を延ばしたい

加害者の任意保険会社がすべての事故対応をする場合には、治療費や休業損害などを一部前払いしてくれる場合がありますが、原則論としては、示談金・損害賠償金は示談成立後に支払われるものです。そのため、加害者がゴネて示談交渉を長引かせ、示談金・損害賠償金の支払い時期を延ばしても、ただちに違法となるわけではありません。

こうした理由から、任意保険会社を頼れず金銭的に苦しい加害者が、示談金・損害賠償金の支払いを遅らせようとゴネ得を目論むケースがあります。

交渉長期化を匂わせ被害者の妥協を引き出したい

加害者が過失割合をゴネ得しようとするのは、示談金・損害賠償金の支払い額や支払い時期で自分を有利にするために交渉を長引かせ、さらなる長期化のおそれをチラつかせて、被害者の妥協を引き出したいからです。

過失割合でゴネ得を狙う加害者に正しく対処するには、こうした思惑を理解し毅然と対峙することが大切です。

加害者のゴネ得で過失割合を妥協してはいけない理由

加害者のゴネ得には、ともすると根負けしそうになるかもしれません。しかしながら、過失割合を妥協することはNGです。

損害賠償金の金額が大きく減る

交通事故の損害賠償では、損害額の総額から被害者の過失割合分を差し引いて損害賠償金を算出する「過失相殺」を行います。そのため、過失割合は、支払われる損害賠償金の金額を大きく左右します。それが顕著なのは、被害者が死亡したケースや後遺障害が残ったケースなど、損害額が大きい事案です。

過失割合2:8における賠償金請求額
たとえば、損害額が2000万円だったとしましょう。被害者と加害者の過失割合が20:80だった場合には、被害者が得られる損害賠償金は1600万円です。

過失割合3:7における賠償金請求額
これが加害者にゴネられて被害者の過失割合が10%アップの30:70になった場合には、被害者が得られる損害賠償金は、当初より200万円も少ない1400万円にとどまってしまいます。

加害者にも損害が出ていた場合には、得られる損害賠償金がさらに大きく減るケースも

また、加害者にも損害が出ていた場合には、被害者も相手に損害賠償金を支払う必要があります。

例えば、加害者の損害額が1000万円で、被害者と加害者の過失割合が20:80だとすると、被害者は加害者に200万円を支払うことになります。
しかし、過失割合が30:70に変更された場合には、支払う金額は300万円に増えてしまいます。

この計算を整理すると、次のようになります。

被害者と加害者の過失割合「20:80」の場合

過失割合2:8における賠償金請求額 過失相殺の場合
加害者の支払額1600万円 - 被害者の支払額200万円 = 被害者の最終受取額1400万円

被害者と加害者の過失割合「30:70」の場合

過失割合3:7における賠償金請求額 過失相殺の場合
加害者の支払額1400万円 - 被害者の支払額300万円 = 被害者の最終受取額1100万円

このように、被害者の過失割合が10%増えるだけで、最終的に受け取る金額は300万円も減少してしまいます。

また、このケース以外にも、加害者のゴネによる過失割合の変更で、被害者の受け取る損害賠償金が大幅に減少するケースは少なくありません。過失割合の交渉では、不当なゴネへの譲歩は避けるようにしましょう。

過失割合のゴネ得への対処法

では、加害者のゴネ得にはどういった対処をすべきでしょうか?

相手が主張する過失割合の根拠について書面で回答を求める

示談交渉では、法的根拠の有無や内容が大きなポイントとなります。そのため、加害者に対し、相手が主張する過失割合の根拠を書面で回答するよう求めましょう。

口頭のやり取りだけでは、後々言った・言わないなどの水掛け論にもなりかねません。しかし、書面であれば記録が残るだけではなく、即時の返答も不要です。こちらに有利で有効な返答をじっくり準備できます。

客観的証拠を提示しながら交渉を行う

自分が主張する過失割合の根拠について、書面などで客観的証拠を提示しながら交渉することも大切です。

客観的証拠は、具体的には以下の通りです。

事故直後の車両の損傷写真

車両の衝突態様や衝撃、停止位置がわかります。

事故直後の現場写真

事故時の路面状況やスリップ痕の有無、明るさがわかります。

ドライブレコーダーの映像

事故時の信号の色や車両の衝突状況などがわかります。相手が起訴された場合には、刑事記録の開示請求をすることで相手のドライブレコーダーを見られるケースもあります。

事故現場近隣の防犯カメラの映像

事故状況が撮影されている可能性があります。

事故直後の会話の録音音声

事故状況について会話した記録は、後々違う主張をされた場合に、それを覆す証拠となる場合があります。

信号機サイクル表

信号灯が「青色」「黄色」「赤色」と一巡するサイクル(周期)の表で、交通量や交差点の大きさ、歩行者の横断時間等を考慮して、交差点別に定められています。都道府県の警察本部等に開示請求をして取得できます。事故時の信号の色が争点になったときに有用です。

実況見分調書や供述調書などの刑事記録

事故直後に事故態様や事故状況を調べたり述べたりしたものなので、直接的な証拠になります。事故時の記憶は、時間が経過すると失われたり変化したりする可能性があるため、事故直後のこうした公的記録は重要です。

事故の目撃者の証言

第三者の目撃証言は、中立な立場で事故状況を述べてくれるので信用されやすいです。

相手の主張に対しても客観的証拠の提出を求める

なお、加害者にも、上記のような客観的証拠の提出を求めましょう。相手に根拠や客観的証拠がないようであれば、その旨を淡々と伝え、相手の言う過失割合は不適当であると毅然と対応することが重要です。

加害者・保険会社への対応を弁護士に相談する

相手方がゴネ得を迫ってくるようなケースでは、加害者が任意保険未加入で損害賠償金の支払いを拒否する場合や、過失割合について強硬な態度を取る保険会社が相手となる場合が多く、一個人では対応が難しいことが考えられます。

このような加害者や保険会社への対応は、精神的にも辛いうえに、多くの時間や手間がかかります。また、保険会社は事故対応のプロであり、加害者の主張を法的に都合よく解釈し、強く主張してくることもあります。そのため、被害者が一人で対応するのは大きな負担となります。

こうした状況では、法律と交渉の専門家である弁護士に相談することが得策です。弁護士の力を借りることで、不利な交渉を避け、適切な損害賠償を受けられる可能性が高まります。

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過失割合のゴネ得を弁護士に対応してもらうメリット

過失割合のゴネ得を主張する加害者やその保険会社と、法的知識のない一般の方が対峙するのは非常に困難を極めるのが実情です。

その点、交通事故に詳しい弁護士に依頼すれば以下のメリットがあります。

ゴネと直接対峙する精神的ストレスがなくなる

加害者から直接ゴネられると精神的に参ってしまう被害者も多いですが、弁護士に依頼すればすべての交渉を弁護士が対応してくれるので、被害者はゴネと直接対峙する精神的ストレスから解放されます。

法律の専門家の登場で、相手がゴネる態度を改める可能性も

過失割合のゴネ得をしようとする加害者サイドは、被害者が素人で法律知識がないからゴネ得でやりこめられるだろうとタカを括っているケースが少なくありません。

法律の専門家である弁護士が介入することで、加害者サイドが強く出づらい印象を与え、結果的に相手の態度を軟化させられる可能性があります。

適切な過失割合を算出し、相手に交渉してくれる

過失割合は、「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という法律専門書をもとに算出するのが基本です。この本は、交通事故の過去の裁判例をもとにして、事故態様ごとに基準となる過失割合を記載しています。

もっとも、これはあくまでも基準に過ぎず、実際の示談交渉では個々の事案に沿って修正しながら策定していきます。

ところが、交通事故の法律実務に詳しくない一般の方ですと、こうした手順を知らず適切な過失割合がわからないまま損害賠償で損をする場合があります。その点、弁護士であれば適切な過失割合を算出し、法的根拠を持って示談交渉してくれますので安心です。

過失割合の根拠となる客観的証拠を用意できる

前述したとおり、過失割合の根拠となる客観的証拠は何種類もあります。しかし、それらを被害者自身が収集するのは容易ではありません。けれども、弁護士であれば弁護士法に定められた「弁護士照会」という制度を用いて、依頼者の代わりに証拠や資料を収集し、事実を調査してくれます。

弁護士でなければ収集しづらい証拠も存在する

弁護士照会が特に有効に機能するケースとしては、たとえば事故現場近隣の防犯カメラ映像の収集が挙げられます。防犯カメラの映像を収集する際には、所有者に開示を依頼する必要がありますが、被害者個人の依頼に応じてもらえないケースも少なくありません。その点、弁護士が照会すれば、所有者が開示に応じてくれる可能性は高まります。

弁護士照会については最高裁からも「公務所又は公私の団体は、正当な理由がない限り、照会された事項について報告をすべきものと解される」(最高裁平成28年10月18日判決)と判示が出ており、弁護士照会を受けた各機関は原則として照会内容に回答する義務があるものとされています。この社会的に認められた収集力を有する点が、被害者個人による依頼と弁護士照会の大きな違いです。

被害者に有利な弁護士基準で慰謝料請求できる

交通事故の慰謝料算定では、得られる慰謝料・損害賠償金の金額を大きく左右する3つの基準があります。3つの基準とは、具体的には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」を言いますが、このなかで被害者に最も有利なのは、弁護士だけが使える「弁護士基準」です。ところが、加害者の保険会社は、被害者に最も不利な「自賠責基準」に多少色を付けた程度の「任意保険基準」でしか、慰謝料・損害賠償金の提示をしません。

自分に最も有利な弁護士基準で慰謝料・損害賠償請求するためには、ぜひ弁護士に依頼しましょう。

訴訟も視野に入れた対応ができる

示談交渉がスムーズにまとまれば一番良いのですが、ゴネ得を考えるような加害者であれば、まとまる話もまとまらず、時間だけが経過するおそれがあります。そのような場合には訴訟を提起して、過失割合を含む損害賠償全体を、裁判所の公正な判断に委ねる方法もあります。

この場合、訴訟のプロである弁護士は頼れる存在だと言えるでしょう。加害者のゴネに振り回され、訴訟も視野に入れているならば、弁護士への依頼がベターです。

まとめ

交通事故の過失割合でゴネ得を目論む加害者への対応は、一般の方には非常に辛いものです。ですが、ゴネ得を許してしまうと、得られる示談金・損害賠償金が大きく減るおそれがあります。

過失割合における加害者のゴネ得を阻むためには、加害者が損害賠償金の支払い額を減らしたい、示談金の支払いを遅らせたい、あるいは交渉の長期化をチラつかせて被害者に妥協を迫りたいという思惑があることを理解したうえで、加害者の主張の根拠となる回答を書面で求めましょう。

そして自分からは、ドライブレコーダーの映像や刑事記録などの客観的証拠を提示し、加害者の主張に反論できる法的根拠を論理的に述べていくことが重要です。また、相手にもこうした客観的証拠を提示するよう求めましょう。

このような交渉に不安がある場合は、弁護士に相談することで法的根拠に基づいた適切な主張が可能となり、ゴネ得と対峙する精神的な負担も軽減できます。加害者のゴネ得を跳ね除け、適切な過失割合に基づく正当な損害賠償金を勝ち得るためには、ぜひ弁護士に相談しましょう。

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