自動車 対 二輪車(バイク・自転車)の交通事故における過失割合
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交通事故弁護士相談広場編集部
バイクはエンジンがついていながらも二輪しかないことから安定性に欠けて転びやすく、身体を露出していることから事故が起こった際に運転者の損傷が大きくなる傾向にあります。このような、事故を起こしやすく、被害も大きくなりやすいバイクならではの特色から、自動車との事故におけるバイクの過失割合は、低めに算定されやすいのが実状です。保護されることになる。軽車両に分類される自転車も同様の傾向にあります。
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二輪車(バイク・自転車)とはどんな乗り物か
バイクは3つの種類と4つの免許に分けられる
二輪車のうちバイクの種類と免許は、次の表のように分類されています。
バイクの種類 | 原動機付き自転車 (道路交通法2条1項10号) |
普通自動二輪車 (同法3条) |
大型自動二輪車 (同法3条) |
---|---|---|---|
排気量 | 50㏄以下 (道路交通法施行規則1条の2) |
50㏄超~400㏄以下 (同規則2条) |
400㏄超 (同規則2条) |
免許 | 原動機付自転車免許(原付免許) (道路交通法84条3項、85条) |
|
大型自動二輪車免許(大型二輪免許) (同法84条3項、85条) |
普通自動二輪車の免許が、小型限定のものとそうでないものとに分かれていることに注意しましょう。
免許不要の自転車も道路交通法を守らなければならない
二輪車のうち免許が不要で誰でも乗ることができる自転車も、「軽車両」のひとつとして「車両」に含まれることから(道路交通法2条8号および11号)、道路交通法を守る義務があります(同法16条1項)。交通事故を起こせば、道路交通法上の責任を問われることになります。
この記事では、これら二輪車(バイク・自転車)が、自動車と事故を起こしてしまった場合、事故発生についての「過失割合」がどのように算定されるかについて見ていきます。
「過失割合」における「過失」とは?
「過失割合」でいうところの「過失」とは、自動車や二輪車を運転する際の危険を察知し損ねることをいい、自分が起こした事故の損害を償わなければならないことを理解できるかどうか(責任能力があるかないか)は「過失割合」に影響しないというのが判例です(最高裁判決昭和39年6月24日)。
「過失割合」とは、交通事故での損害賠償責任を公平にするため、両当事者の過失を互いに差し引くこと(過失相殺。民法722条2項)によって割り振られる割合をいいます。過失相殺におけるお互いの過失の程度を測るには、当事者それぞれの危険を察知する力だけを基にすれば十分だといえるわけです。
この判例では、ともに8歳の少年が2人乗りしていた自転車が自動車と衝突したケースについて、責任能力のボーダーラインとされる12歳に満たない少年であっても学校や家庭での交通安全指導を通じて自転車に乗る際の危険を理解できることを理由に、少年側の過失も差し引きされた上、「過失割合」が決められています。
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交通事故ではバイク・自転車の過失も問われる
自転車についても危険行為への責任が問われる時代に
自転車も乗り方によってはバイクや自動車と同様に「走る凶器」となることは、自転車とぶつかった歩行者が死傷する事故が起きていることからも明らかです。
そんな中、自転車による事故防止と、事故による損害回復への取り組みが始まっています。
危険行為反復者への「自転車運転者講習」がスタート
事故防止の面では、2015年(平成27年)6月1日より、信号無視など交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反行為(危険行為)を反復して行った自転車の運転者に対して自転車運転者講習の受講が義務付けられるようになりました。自転車の交通ルール順守に向けた社会的取り組みのひとつといえます。
「自転車運転者講習」については、警察庁WEBサイトで詳しい紹介がされていますので、自転車に乗る方はぜひ目を通しておいてください。
参考リンク:警察庁WEBサイト「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」
「自転車は免許がいらなくて行政処分点数も増えないから、どこをどう走っても構わない」という時代ではなくなったことを覚えておきましょう。
自転車の損害賠償責任保険加入を義務付けへ
損害回復の面では、自転車の損害賠償責任保険加入を義務付ける条例を制定する都道府県などの地方自治体が増えています。
自転車の損害賠償責任保険加入促進の流れについては、国土交通省WEBサイトで詳しく紹介がされています。損害賠償責任保険は自転車で他人に損害を与えてしまったときの大きな助けになりますので、ぜひご覧になってください。
参考リンク:国土交通省WEBサイト「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」
自賠責保険がなく、任意の損害賠償責任保険にも加入していない自転車の運転者は、自身が事故を起こした場合に多額の損害賠償請求を受ける可能性があることを知っておくべきでしょう。
自動車と二輪車の交通事故では二輪車の過失割合が低めに
自転車とバイクに共通する点は、車輪が2つしかなく安定性に欠けること、身体を露出しているため事故が起こった際に運転者の損傷が大きくなりやすいことです。そのため、自動車との事故における「過失割合」においては、二輪車の方が低く算定されやすくなります。
その反面、交通法規を守っていなかったり、重大な過失があったりした場合には、過失割合が高くなることがあります。
特に、免許が不要で交通法規を守る意識が薄いくなりがちな自転車の場合、自動車との事故であっても、信号無視などの悪質な違反があれば過失割合が高くなることがあるので、注意が必要です。
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二輪車特有の交通事故と「過失割合」
二輪車と自動車が交通事故を起こした場合、一般的には自動車の方の過失割合が高くなります。これは「優者危険負担の原則」に基づくものです。
「優者危険負担の原則」とは、事故を起こせば明らかに損害が多大なものになる小さな車両を守るため、より大きな車両に小さな車両以上の注意義務を課すという原則をいいます。
この原則により、身体を露出している二輪車は、事故に遭った場合に大怪我をしてしまう可能性が高いため、「過失割合」が低く算定されるのが通例です。
二輪車に大きな過失があれば、自動車よりも重い責任が課せられるケースも
運転免許の必要な原付以上の二輪車はもちろん、道路を走れば軽車両となる自転車についても、悪質な違反や重大な過失が原因となって交通事故を起こした場合、「過失割合」が自動車を上回ることもあります。
ここでは、自動車と二輪車が絡んだ交通事故に特有の「過失割合について、具体的な事故パターンを例に紹介します。
なお、「過失割合」の数字は、東京地方裁判所民事交通訴訟研究会や日本弁護士連合会交通事故相談センターが定めた認定基準を引用しています。
左折車と直進車の事故
バイクや自転車も、道路を走る場合には自動車と同じくキープレフト、つまり道路の左寄りを走るのが基本です。
ただ自動車と比較してバイクや自転車の車幅はとても狭く、自動車から見てその存在を認められにくいため、両者が並んで走行しているとき、あるいは両者が向かい合いに走って来るときに事故が起きるケースが多くあります。
ケース1
二輪車Aが道路の左端を直進し、前方を走っていた自動車Bが左折し、Bが二輪車Aの前方をふさぐ形で衝突した場合。
この場合の基本的「過失割合」は、(A)20:80(B)となります。
その上でいくつかの修正要素によって基本的「過失割合」は増減され、最終的「過失割合」が決まります。
修正要素の例としては、次のようなものがあります。
修正要素 | 加算割合 | |
---|---|---|
二輪車A | 著しい前方不注意 | 10% |
15km以上の速度違反 | 10% | |
30km以上の速度違反 | 20% | |
自動車B | 大回りでの左折 | 10% |
歩行指示の遅れ | 5% | |
歩行指示なし | 10% | |
急ハンドル | 10% | |
徐行なし | 10% |
Aでいえば、Aの基本的「過失割合」にAの加算割合を足し、Bの加算割合を引くというように計算します。
たとえば、Aに30km以上の速度違反があり、Bに大回りでの左折があった場合の過失割合の決まり方は、次のとおりです。
基本割合=(A)20:80(B)
最終的過失割合=(A)20+20-10:80+10-20(B)=(A)30:70(B)
また、自動車Bが二輪車Aを追い越して左折を行った場合の「過失割合」は(A)10:90(B)となります。
右折車と直進車の事故
ケース2
信号機のない交差点において、二輪車Aが直進し、対向する自動車Bが右折で交差点に進入して衝突した場合。
この場合の基本的「過失割合」は、(A)15:85(B)となります。
ケース1と同じく、これに修正要素による増減がなされて最終的「過失割合」が決まります。
修正要素 | 加算割合 | |
---|---|---|
二輪車A | 15km以上の速度違反 | 10% |
30km以上の速度違反 | 20% | |
自動車B | 徐行せずに右折 | 10% |
歩行指示なし | 10% | |
右折禁止場所での右折 | 10% | |
大型車である | 5% |
たとえば、Aに15km以上の速度違反があり、Bが大型車であった場合、最終的過失割合は次のとおりです。
基本割合=(A)15:85(B)
最終的過失割合=(A)15+10-5:85+5-10(B)=(A)20:80(B)
ケース3
自動車Bが直進し、対向する二輪車Aが右折で交差点に進入した場合の「過失割合」は(A)70:30(B)となります。
自動車左折時の巻き込み事故
交差点で起きる自動車と二輪車の交通事故で、自転車も遭遇する可能性が高いのが、左折自動車による巻き込み事故です。
四輪車は右折や左折の際、前輪よりも後輪の方がより内側を通ります。
これは内輪差と呼ばれ、普通自動車の場合は気になるほどではないのですが、トラックやバスといった、前輪と後輪の距離が長い大型車両になると内輪差が大きくなり、左折時に後輪が路肩に乗り上げてしまう事もあります。
トラックやバスが左折する際、その左側にいる二輪車が巻き込まれてしまうのが巻き込み事故です。
二輪車Aが直進中に、左折自動車Bによる巻き込み事故が発生したときの基本的な「過失割合」は、Bがあらかじめ左側端に寄っていれば(A)40:60(B)、寄っていないと(A)20:80(B)、Bが追い越して左折すると(A)10:90(B)となります。
ドア開放によって起きる事故
停車中の自動車Bがドアを開けたところ、走行してきた二輪車Aがドアにぶつかり事故が起きてしまうことがあります。
この場合の「過失割合」は、二輪車がドアとの衝突を避けるのが難しいことから、(A)10:90(B)が基本となります。衝突の直前にドアが開いたようなケースでは、二輪車がドアとの衝突を避けるのがさらに難しくなることから(A)0:100(B)となることがあります。
「過失割合」は裁判例を元にした基準
「過失割合」は過去の裁判例を参考に保険会社によって決められる
交通事故の当事者となってしまった場合、保険会社が提示した「過失割合」が正当かどうかは、自身の事故によく似たケースの裁判例を参考に確認することも方法のひとつです。
ただ、自身の事故と裁判例の事故とで場所や状況が完全に一致しているわけではありません。運転者の技量も違えば、天候や道路状況も異なり、裁判例とまったく同じ事故はあり得ないといえるでしょう。
しかも、裁判例を調べること自体、法律や裁判に馴染みのない方には難しいことといえます。
保険会社が示す「過失割合」に納得いかないときは弁護士に相談を
そこで心強い味方になるのが、弁護士です。弁護士は、裁判例を調べることも含め、法律や裁判に精通した専門家だからです。
交通事故に巻き込まれてしまい、保険会社の示す「過失割合」に納得がいかない場合、交通事故に詳しい弁護士に相談し、本当に妥当な割合なのかどうかを判断してもらうことをお勧めします。
専門家からの信頼度も高い、東京地方裁判所民事交通訴訟研究会や日本弁護士連合会交通事故相談センターが定めた「過失割合」の認定基準をもとに、あなたの事故に最もふさわしい過失割合をアドバイスしてもらえるはずです。
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