玉突き事故の責任は誰にある?過失割合のルールと巻き込まれた場合の対処法
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玉突き事故とは?
玉突き事故とは、後続車に追突された反動で車が前に押し出され、前方の車両にぶつかってしまう事故のことです。
いわば2つ以上の追突事故が連続して起こっている状態であるため、事故の責任が誰にあるかをめぐってトラブルになりやすいのが特徴です。
玉突き事故の責任は誰にある?
追突事故の場合、追突した車両の運転手に脇見運転や車間距離を十分に取らなかったなどの過失があるのが一般的です。
そこで、追突事故の場合は基本的に追突した車両の運転手に責任があると考えていきます。
玉突き事故も基本的には追突事故の一種ですので、原則として追突事故の場合と同様に考えます。
後方車両の責任が重くなるのが基本
玉突き事故では、追突した車、つまり事故のきっかけを作った後続車の責任が問われることが多いです。
状況によっては過失が100%になることもあります。
先頭車両は落ち度がなければ過失なし
事故に巻き込まれた先頭車両は、急ブレーキをかけたなどの落ち度がなければ過失ゼロとして扱われることになります。
事故発生時の状況で過失割合は変わる
もっとも実際の過失割合は事故発生時の状況で変わります。
一般的には、事故発生の原因を作った側の過失割合が大きくなる傾向があり、前の車に追突した後続車にはある程度の過失割合が認められます。
一方、前方車両や中間車に何らかの落ち度があり、そのせいで追突事故が起きた場合は、後続車以外にも一定の過失が認められることがあります。
玉突き事故の過失割合
それでは、ここで、玉突き事故における基本的な過失割合について見ていくことにしましょう。
後方の車が前の車に追突した場合
後方の車が前の車に追突した場合では、基本的に、後方の車の過失割合が100%となります。
もっとも、追突の原因が中間車の急ブレーキや操作ミス、故障による急停止などだった場合には、中間車にも過失が認められます。
前方の車が急ブレーキを踏んだ場合
前方の車が急ブレーキを踏んだことが原因で中間車が前方車に衝突し、さらに後方の車が中間車に衝突した場合は、前方の車と後方の車に過失が認められます。
ちなみに、前方の車が急ブレーキを踏んだ場合において、前方の車の過失割合は30%が基本です。
中間車が前の車に衝突した場合(順次衝突)
はじめに中間車が前の車に衝突し、さらに後方の車が中間車に衝突した場合は、2つの衝突事故として扱われます。
前の車と中間車との関係では、前の車の過失割合が100%となります。
一方後ろの車と中間車との関係では、後方の車の過失割合が100%となります。
高速道路での玉突き事故の場合
高速道路での事故では一般道路における事故と過失の認定の仕方が異なります。
というのも、高速道路は高速での走行が予定されていることから、原則として駐停車をすることが禁じられているからです。
また急ブレーキをかけることによる危険性も一般道路より高く、交通事故の結果も重大になりやすい傾向があります。
違反者の過失が重くなる高速道路の事故
こうした事情から、高速道路の事故では法令義務違反を行った側の過失を一般道路より重く評価していきます。
たとえば前の車や中間車が正当な理由なく駐停車をしたり、急ブレーキをかけたりしたことが原因で事故が発生した場合は、これらの車の過失割合は一般道路で同様の事故が起きた場合と比べて大きくなります。
具体的な状況にもよるが、追突された側に50%の過失割合が認められるのが基本です。
ただ、減速・停止した車に正当な理由があり、ハザードランプを停止させるなど適切な措置を取っていたような場合は、追突事故における原則通り後方の車の過失が100%となるケースもあります。
また、中間車や前の車が特に問題のない走行をしていた場合には、一般道路で起きた衝突事故と同様に後方の車の過失割合が100%となります。
玉突き事故の過失割合に影響する要素
玉突き事故の過失割合は実際の事故の状況によって大きく変わります。
過失割合に影響する具体的な要素としては、次のようなものがあげられます。
- 速度超過
- 前方不注視
- 車間距離の保持義務違反
- 故障・事故によって車が停止した際の安全措置の有無
- 車の整備状況
- 急ブレーキ・急な減速の有無
- 事故が起きた場所(一般道路か高速道路か)
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玉突き事故の被害に遭った場合の対処法
事故時の状況整理・把握が重要に
玉突き事故では状況によって、誰がどれくらい責任を負うのかが変わってきます。
後続車の言い分と、中間車、前の車の言い分が食い違い、過失割合をめぐって争いになるケースも珍しくありません。
後の交渉や裁判に備えるためにも、車の損傷具合や現場の様子を写真に撮っておく、ドライブレコーダーのSDカードを抜いて保存しておくなど、事故の状況を示す証拠を集めておきましょう。
また、警察に通報し、事故の当事者や目撃者と連絡先を交換しておくことも大切です。
自覚症状がなくても病院に行く
さらに、病院で診察を受けることも重要です。
交通事故のけがの影響は翌日以降に出ることもありますので、自覚症状がない場合でも早めに病院に行っておくことをおすすめします。
病院に行くタイミングが遅すぎると後遺症と事故との因果関係を証明するのが難しくなることがあるからです。
納得のいかない過失割合を提示されたら
玉突き事故は当事者が複数いるため、事故の状況が複雑になりがちです。当事者同士で言い分が食い違う可能性もあり、相手方の保険会社が納得のいかない過失割合を押し付けてくることもあります。
相手方や保険会社に納得のいかない過失割合を提示された場合にとりうる手段としては、次の2つが考えられます。
弁護士に相談する
1つ目は弁護士に相談することです。弁護士に依頼するメリットは交渉から裁判まで一貫して任せられる上に、賠償金の金額が高くなりやすいことです。これは賠償金の金額を計算する際に使われる基準が、任意保険会社や自賠責保険と異なるためです。
なお、加入している任意保険の内容によっては弁護士特約がついていることがあり、特約が使える場合は弁護士費用の負担も少なくて済みます。
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交通事故交通事故紛争処理センターを利用する
2つ目は交通事故紛争処理センターを利用する方法です。交通事故紛争処理センターは交通事故の当事者や保険会社との争いを、話し合いで解決するための機関です。和解の斡旋手続きには弁護士が関与します。
ここで話し合いがまとまれば和解となり、手続きが終了します。一方話し合いがまとまらない場合は審査、それでも双方が納得しない場合には訴訟等による解決へと進みます。
玉突き事故の損害賠償で請求できるお金
玉突き事故に巻き込まれて損害が発生した場合、被害にあった側は事故の原因を作った側に対して損害賠償を請求できます。
損害賠償の金額は被害者が受けたすべての損害の金額を合算したもので、実際の金額は事故による被害の内容によって大きく異なります。
物損
車が破損した場合や修理が必要になった場合など、物が壊れる損害があった場合に認められます。物理的に修理が不可能な場合は買い換え費用、修理が可能な場合は修理費用の一部または全部が損害額になります。
そのほか、廃車料などの費用も妥当な範囲であれば別途損害として認められます。
けがの治療費
けがをして通院・入院が必要になった際の治療費は損害に含まれます。
そのほか通院交通費、入院雑費といった治療に必要な費用も損害として認められます。事情によっては付添費用や介護費用なども損害として認められることがあります。
休業損害
休業損害とは、事故がなければ被害者が得られていたであろう労働収入のことをいいます。
事故が原因で仕事を休まなければならなくなった場合に認められる損害と考えておくとよいかもしれません。
会社勤めの方の場合は事故前にもらっていた給料が算定の基準になります。一方、自営業の方は確定申告で申告していた所得が、専業主婦(夫)の場合は賃金センサスが算定の基準として使われます。
逸失利益
逸失利益は、事故によって後遺障害が残ったり、被害者本人が死亡したりしたことで生涯得られるはずだった収入が減少した場合に認められる損害です。
なお、後遺障害による逸失利益は、後遺障害の重さによって金額が変わります。
慰謝料
慰謝料は、精神的な損害を償うための賠償金です。人身事故でけがをした場合や後遺障害が残った場合、被害者本人が死亡した場合に認められます。
被害者が死亡した場合
事故が原因で被害者が死亡した場合、被害者本人の代わりに遺族が損害賠償を請求することになります。
その内訳は、死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀関係費です。
ちなみに死亡慰謝料には、遺族が受けた精神的な損害に対する慰謝料も含まれます。
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まとめ
玉突き事故は事故の当事者が多くなる分、事故の責任をめぐる関係が複雑になりやすい傾向があります。
基本的には後ろの車を運転していた人の責任が重くなりますが、場合によっては前の車や中間車に落ち度があるケースもあり、実際の過失割合がどうなるかは事故の状況次第としか言いようがありません。
「急に減速したからぶつかった」と追突した側が主張し始めるなど、当事者同士の言い分が対立することもあります。
また、こちらの落ち度がゼロであったとしても、誰にどれだけ責任があるかによって、損害賠償の請求の仕方も変わってきます。
このように玉突き事故は通常の事故に比べても、損害賠償をめぐって難しい問題が起きる傾向のある事故です。事故に遭遇した時点で一度弁護士に相談されることをおすすめします。
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