交通事故の被害者請求とは?自賠責保険に直接請求するメリット・注意点・手続きの流れ

被害者請求とは、加害者が加入している自賠責保険に対して、被害者自身が直接、治療費や慰謝料などの支払いを求める手続きのことです。
交通事故の被害に遭った場合、多くの方は「相手方の任意保険会社がすべて対応してくれる」と考えがちですが、任意保険会社に手続きを任せる「一括対応」や「事前認定」だけが選択肢ではありません。
示談がなかなかまとまらない場合や、後遺障害等級の認定をしっかり受けたい場合などは、被害者請求を検討することが重要です。
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被害者請求とは
簡単にいえば、被害者請求とは任意保険会社に任せず、被害者が自ら自賠責保険へ保険金を請求する制度です。
自賠責保険とは
自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法に基づく交通事故の人身損害に対する最低限の補償を目的とした保険です。
自動車を運行する際には必ず加入しなければならず、自賠責保険未加入で運転した場合、事故を起こさなかったとしても法律により罰せられます。
自賠責保険未加入に対する罰則
- 自賠責保険未加入での自動車の運行:1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
- 自賠責保険証明書の不携帯:30万円以下の罰金
- 行政処分:違反点数6点=免許停止処分
また、多くの運転者は、これに加えて任意保険(いわゆる自動車保険)にも加入しており、自賠責保険でカバーしきれない損害を任意保険で補う二階建ての形になっています。
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一括払い(一括対応)と被害者請求
治療費や慰謝料など交通事故で発生した被害者に対する支払いは、加害者側の任意保険会社が自賠責保険分も含め賠償金をまとめて支払う「一括払い(一括対応)」で進められるのが通常です。
交通事故の被害者が支払いを受ける場合、本来的な流れでいえば、自賠責保険でカバーされる分は自賠責保険会社へ、自賠責保険の範囲を越える補償分は任意保険会社へと、それぞれ別々に請求する必要があります。交通事故の被害者の手間・負担を軽減するため、被害者への支払いは自賠責保険分もふくめ任意保険会社がまとめて行う方法が認められており、一括払い(一括対応)と呼ばれています。
一括払い(一括対応)の場合、自賠責保険に対する請求手続きは任意保険会社が代行します。
自賠責保険における被害者請求の仕組み
これに対し「被害者請求」は、被害者自身が加害者の加入する自賠責保険会社に直接保険金を請求する仕組みです。
被害者請求を行う場合、被害者は必要な書類を自分でそろえて自賠責保険に提出することになります。提出された被害者請求の内容をもとに自賠責損害調査事務所が調査を行い、支払基準に従って自賠責保険の限度額の範囲内で保険金が支払われます。
被害者の請求内容が適正と認められれば、示談成立より前に、自賠責保険の範囲内の保険金を受け取れます。
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被害者請求の法的根拠
なお、被害者が自賠責保険会社に対して、自賠責保険の定める金額の範囲で損害賠償額を請求できるのは、自動車損害賠償保障法16条が根拠となっています。
自動車損害賠償保障法 16条(保険会社に対する損害賠償額の請求)
第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
この自動車損害賠償保障法の条文にならって、被害者請求は「16条請求」と呼ばれることもあります。
加害者請求との違い
自賠責保険には「被害者請求」と並んで「加害者請求」という方法があります。
加害者請求とは、加害者や加害者が加入する任意保険会社が、被害者に損害賠償金を支払った後、自賠責保険に自賠責分の保険金を請求する手続きを指します。
被害者から見ると、加害者請求の場合は任意保険会社が必要書類を準備して手続きを進めてくれるため、手間が少ない一方、示談の成立後にはじめて保険金が支払われます。
また、任意保険会社は加害者側の保険ということもあり、被害者にとって有利な資料を積極的に集めてくれるとは限りません。任意保険会社側の準備・配慮不足から後遺障害等級認定などで不利になるおそれもゼロとは言えません。
これに対して被害者請求では、被害者自身が資料を収集し、必要書類を整えて自賠責保険に直接申請します。
当然、手続きは煩雑になりますが、示談成立を前提とせずに自賠責保険分の支払いを受けることができます。また、後遺障害等級認定でも自分の主張や症状を正しく伝わる資料を添付でき、実際に合った適正な後遺障害等級認定を求めることができます。
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人身事故のみが対象となる理由
自賠責保険は、交通事故による被害者の人的損害を救済することを目的とした保険です。そのため、自賠責保険での補償対象は治療費や慰謝料などの人身損害に限られます。車両やガードレールなどの物の損傷といった物損事故は、自賠責保険の対象外です。
被害者請求を行えるのも、人身事故のケースに限られます。
そのため、事故当初に警察へ物損事故として届け出てしまった場合、そのままだと被害者請求は認められません。
そうした場合は、人身事故への切替え、人身事故証明書入手不能理由書の提出などの手続きを行うことで、自賠責保険に請求することが可能となります。
万一、事故の初期対応の流れで物損事故として届け出してしまった場合も、諦めずに落ち着いて手続きするようにしましょう。
被害者請求で請求できる損害賠償項目
被害者請求により自賠責保険へ請求できる損害賠償項目として、次のようなものが挙げられます。
主な補償内容
- 治療費(診察料、投薬料、入院費用、接骨院の施術料など)
- 入通院のための交通費
- 入院中の付添看護費や入院雑費(日用品・通信費など)
- 入通院慰謝料(治療を余儀なくされた精神的苦痛に対する補償)
- 後遺障害慰謝料(後遺障害が残った場合の精神的苦痛に対する補償)
- 死亡慰謝料(死亡事故の場合の本人・遺族の精神的苦痛に対する補償)
- 休業損害(怪我や後遺障害により仕事を休まざるを得なかったことによる減収)
- 逸失利益(後遺障害や死亡により将来失われる収入)
- 葬祭関係費(葬儀や法要などにかかる費用)
後遺障害等級認定に関わる項目
交通事故による怪我が治療終了後も残り、後遺障害として認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益など、後遺障害に関連する賠償項目の支払いを受けられます。
後遺障害等級認定を受けるためには、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、必要な検査資料とともに、自賠責保険側の審査機関に提出する必要があります。
被害者請求の場合、被害者自身が後遺障害診断書やMRIなどの検査資料、診療録、医師の意見書など必要な資料を集め、自分の症状を裏付ける書類をそろえて申請します。
準備の手間はかかりますが、保険会社任せにせず被害者自身が被害を明確に主張することで、残存した後遺障害に合った適切な等級認定を受けられる可能性を高められます。
自賠責保険に請求できる賠償金の限度額
自賠責保険には、傷害・後遺障害・死亡それぞれについて支払限度額が定められています。
傷害の損害賠償額上限
まず、交通事故による傷害の治療に対する損害賠償は最大120万円まで(治療費・休業損害・慰謝料などの合計値)が上限とされます。
上限金額120万円の内訳のうち、入通院慰謝の料金額は以下の計算式で算出します。
{治療期間(入通院した期間) または 実際に入通院した日数x2 いずれか小さい方の日数}x 4,300円/日
後遺障害慰謝料の損害賠償額上限
交通事故により身体に後遺障害が残った場合の後遺障害慰謝料について、自賠責保険への請求上限額は以下の金額です。
| 後遺障害の等級 | 自賠責基準 |
|---|---|
| 1級 | 1150万円 |
| 2級 | 998万円 |
| 3級 | 861万円 |
| 4級 | 737万円 |
| 5級 | 618万円 |
| 6級 | 512万円 |
| 7級 | 419万円 |
| 8級 | 331万円 |
| 9級 | 249万円 |
| 10級 | 190万円 |
| 11級 | 136万円 |
| 12級 | 94万円 |
| 13級 | 57万円 |
| 14級 | 32万円 |
死亡慰謝料の損害賠償額上限
死亡事故の場合も、定められた上限額があります。
- 本人の慰謝料 400万円
- 遺族の慰謝料 遺族が1人の場合 550万円
- 遺族の慰謝料 遺族が2人の場合 650万円
- 遺族の慰謝料 遺族が3人以上の場合 750万円
- 遺族の慰謝料 遺族が被扶養者の場合 +200万円
- 自賠責基準の死亡慰謝料は最大1,350万円(被扶養者の遺族が3人いたケース)
このように被害者請求を利用すると、この自賠責保険の限度額の範囲内で保険金が支払われます。
これらを超える損害については、加害者が加入する任意保険などから支払われる仕組みです。
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被害者請求のメリット・デメリット
被害者請求をすることでどんなメリット、デメリットがあるのか見ていきましょう。
被害者請求のメリット
示談成立前でも賠償金を受け取れる
任意保険会社に一括対応で任せると、自賠責保険分を含め、基本的には示談が成立するまで損害賠償金は支払われません。
事故を巡る主張が異なり示談交渉が難航した場合や、事前認定で後遺障害等級認定の申請手続きを相手方に任せた場合などだと、事故後、数ヶ月、1年以上も賠償金を受け取れないケースもよくあります。
その間、被害者は治療やリハビリを継続しながら、収入なし・あるいは減少を強いられ、生活の負担を抱え続けることにもなりかねません。
被害者請求であれば、等級認定されたタイミングで自賠責保険の支払基準にもとづいた後遺障害慰謝料や逸失利益が払われるのはメリットです。
示談がまだ成立していない段階でも、自賠責保険の限度額の範囲内で治療費や慰謝料などの保険金を受け取れます。
自賠責保険では、損害額がすべて確定していなくても、すでに発生した治療費や休業損害などがあれば請求できます。被害者請求を通じて、早い段階で一定の補償を受け取りやすくなります。
後遺障害の適正な等級認定を主張できる
事前認定の場合、相手方の任意保険会社が後遺障害診断書やその他の資料をそろえて審査機関へ提出します。
等級認定の手続きを相手方に任せることになりますが、被害者が感じている症状等を申請内容に正しく反映してもらえない可能性がゼロとは言えません。
どの資料がどのように提出されたか、被害者の立場からは見通しにくく、結果、被害者が想定とは異なる等級認定を受けることになる等、納得できない対応を取られる場合があります。
被害者請求では、被害者側で資料を精査し、必要な検査資料や診断書を補完したうえで自賠責保険に申請できます。
自分が受けた事故の影響を漏らさず伝えることができるため、後遺障害等級認定で、確実に有利になるとまでは言い切れないものの、実際の後遺症状に見合った適切な評価を受けられる可能性は高まります。
特に、むち打ち症など等級認定の判断が難しいケースでは、保険会社任せにせず被害者請求を利用するのがおすすめです。
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自分で手続きを進めるので結果に納得しやすい
被害者請求では、被害者自身が資料を集め、書類の内容や漏れがないかを確認しながら手続きを進めます。
後遺障害等級認定の手続きにおいて、被害者が納得できない結果になるのは、検査結果などの資料や書類の不備不足が原因となるケースが多数です。
医師が作成する後遺障害診断書が不十分だった、添付する資料に不備があったか、などの要因も考えられます。
とはいえ、任意保険会社の担当員にとっては、何十件と抱えている交通事故案件のひとつに過ぎません。
保険会社が事前認定を行うとき不当な方法で手続きを行うわけではないものの、被害者自身が納得できるほど誠実な対応をしてくれるかは不透明です。
被害者請求であれば、提出準備を被害者が自ら準備していくため、仮に希望どおりにならなかったとしても、自分でできる限りの資料をそろえた上での結果という納得感は得やすいでしょう。
被害者請求のデメリット
手続きが煩雑で手間がかかる
被害者請求の大きなデメリットはやはりその準備そのもの、被害者自身が多数の書類を揃えて自賠責保険へ提出しなければならず、手続きが煩雑になりやすいことです。
交通事故証明書、事故状況の報告書、診断書や診療報酬明細書、後遺障害診断書、休業損害証明書、通院交通費の明細書など、多くの書類を漏れなくそろえる必要があります。
そうした被害者請求のための対応を、場合によっては入通院による治療やリハビリなど、事故被害への対応と並行して行わなければならず、大きな負担になります。
弁護士などの専門的な知識や費用負担が必要となる場合がある
後遺障害等級認定の申請を視野に被害者請求を行う場合、検査資料としてどんなものをそろえるべきか、診断書をどのように記載してもらうかなど、一定の専門的な知識も必要です。
そもそも後遺障害等級認定は、認定率が(自賠責保険の支払いが発生した)事故全体の5%程度に留まる狭き門です。
等級認定を得るのにどんな準備が必要か、コツを理解しないまま担当医任せで漫然と書類を準備したところで、なかなか良い結果は望めません。
被害者請求を正しく行うためには弁護士など交通事故への対応に精通した専門家に相談するのもひとつの手です。
ただしその場合は、弁護士へ依頼するための費用負担が生じる可能性があり、これもデメリットとして挙げられるかもしれません。
被害者請求を行うべきケース
加害者側との示談交渉が進まない場合
加害者が示談交渉に誠実に対応せず、話し合いがなかなか進まない場合、任意保険会社による一括払いに依存していると、示談がまとまるまで慰謝料や交通費などの支払いを受けられないことがあります。
このような場合には、被害者自身が加害者加入の自賠責保険へ被害者請求を行うことで、示談の成立を待たずに自賠責保険分の補償を受けることができます。
治療費の打ち切りや不利な条件で示談を迫られた場合
任意保険会社が一括対応をしていると、自賠責保険の支払限度額に近づいてきた段階で、保険会社から病院に対して治療費の支払い打ち切りが伝えられることがあります。
また、支払いタイミングが後ろ倒しになることを盾に、慰謝料や物損の賠償について不利な条件で早期の示談を求めてくることもあります。
任意保険会社は加害者が契約している保険であり、被害者の立場から見て常に有利な提案をしてくれるとは限りません。
被害者請求を行えば、自賠責保険分については被害者主導で請求を進め、当面の賠償金を確保できます。不利な条件を飲んでまで示談を急ぐ必要がなくなります。
被害者側の過失割合が大きい場合
交通事故の場合、被害者側にも一時停止無視やスピード超過など事故発生につながる行為があり、過失責任を問われるケースもあります。
被害者側の過失割合が大きい場合、補償の支払いを任意保険会社の一括対応に任せると、賠償金から被害者の過失割合の分が相殺され、最終的に受け取れる金額が大きく減ってしまう場合があるのです。
被害者側の過失割合がある程度大きい場合でも、自賠責保険は被害者保護を目的としているため、過失が7割未満であれば減額されずに支払われます。
自賠責保険では任意保険のような全面的な過失相殺は行いません。代わりに、「重過失減額」の仕組みが採用されており、過失割合が7割以上となる場合、その割合に応じて下記のように保険金が減額されます。
被害者の過失割合に応じた自賠責保険の減額割合
後遺障害・死亡に関する保険金請求
- 過失割合7割以上8割未満: 2割減額
- 過失割合8割以上9割未満: 3割減額
- 過失割合9割以上10割未満: 5割減額
傷害に関する保険金請求
- 過失割合7割以上10割未満: 2割減額
自賠責保険への保険金請求を被害者請求で進めるべきかどうかは、事故状況や事故による怪我・被害内容にもよってきます。
被害者・加害者双方にある程度の過失割合があり、どう対応すべきかお悩みの方はまず交通事故に強い弁護士に相談し、アドバイスを受けることをおすすめします。
加害者が任意保険に未加入の場合
加害者が任意保険(自動車保険)に加入していない場合、当然ですが示談交渉や賠償に関する対応を保険会社に任せることはできません。
基本的に、事故で受けた被害の損害賠償は加害者へ直接請求することになります。
ただし、任意保険に加入していない加害者の方が、請求通りに賠償金を払うかは不透明です。相手方が誠実に対応してくれない場合は、被害者が自賠責保険会社へ直接掛け合う必要も出てくるでしょう。
加害者からの賠償のメドが立たない場合は、被害者請求を行うことで、傷害部分については自賠責保険の上限額まで、後遺障害等級が認定された場合には等級ごとの設定金額までは回収することが可能です。
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後遺障害等級認定を申請するとき
後遺障害等級の申請を行う場合は、相手方任意保険会社が一括対応しているかどうかにかかわらず、被害者請求を選択するメリットがあります。
事前認定では後遺障害等級認定の申請手続きが相手方任意保険会社任せになるのに対し、被害者請求では被害者自身が必要な資料を収集し、有利な資料を添付して申請できます。
申請内容も自分で自分の症状を説明できるので、相手方保険会社の都合や間に担当者を挟むことによるコミュニケーション・ミスに影響されることがありません。
被害者の方が感じている症状について、正確な体感を伝えた上で、適正な後遺障害等級認定の評価を受けられる可能性を高めることができます。
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認定結果に納得できない場合は異議申立て
後遺障害等級認定の結果に納得できない場合、異議申立てを行うことができます。
事前認定、被害者請求いずれの方法で等級認定の申請を行った場合でも異議申し立てすることは可能です。
異議申立てでは、自賠責保険会社に対して異議申立書と追加の医療記録や検査結果などの新資料を提出することで、再度の判断を求めます。
ただし、一度は決定した等級認定を見直してもらう必要があるわけで、異議申立ての主張にもそれなりの説得力は必要です。
自賠責損害調査事務所への対応や医学的知識にも明るくない一般の方が、自力で適切な資料をそろえようとしても限界があります。
後遺障害等級認定の結果に納得できない場合は必ず弁護士のサポートを受けるようにしましょう。
被害者請求の手続き方法と流れ
手続き全体の流れ
被害者請求の手続きは、概ね次のような流れで進みます。
- 加害者が加入している自賠責保険会社を特定する
- 自賠責保険会社から請求書類一式を取り寄せる
- 必要書類をそろえて自賠責保険会社に提出する
- 保険会社が書類の不備を確認し、自賠責損害調査事務所に送付する
- 自賠責損害調査事務所が事故状況や損害を調査する
- 調査結果を踏まえ、自賠責保険会社が支払額を決定して支払う
加害者が加入している自賠責保険会社を特定する
交通事故証明書を確認して、加害者の自賠責保険会社と証明書番号を把握します。
自賠責保険会社から請求書類一式を取り寄せる
保険会社に電話で連絡し、被害者請求を行う旨を伝えて、請求書や事故状況報告書などの書式を取り寄せます。
必要書類をそろえて自賠責保険会社に提出する
交通事故証明書、診断書・診療報酬明細書、後遺障害診断書、休業損害証明書、交通費明細など、必要な資料を揃えて提出します。
保険会社が書類の不備を確認し、自賠責損害調査事務所に送付する
保険会社は受領した書類をチェックし、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所へ送付します。
自賠責損害調査事務所が事故状況や損害を調査する
事故の発生状況や因果関係、損害の内容などを、公正・中立な立場で調査します。
調査結果を踏まえ、自賠責保険会社が支払額を決定して支払う
調査結果に基づき、自賠責保険会社が支払基準に従って保険金額を決定し、請求者に支払います。
被害者請求の必要書類
被害者請求を行う際の必要書類は事故の態様や請求内容によって異なりますが、代表的なものとして次のようなものが挙げられます。
- 自賠責保険金請求書(支払請求書兼支払指図書等)
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書・事故状況説明図
- 診断書・診療報酬明細書
- 後遺障害診断書(後遺障害を請求する場合)
- MRI等の検査資料、レントゲン写真等
- 休業損害証明書、源泉徴収票や所得証明書など
- 通院交通費明細書
- 付添看護自認書
- 死亡診断書や死体検案書(死亡事故の場合)
- 印鑑登録証明書や戸籍謄本等(死亡事故の場合)
- 加害者が賠償した費用の領収書 など
これらの書類は、自賠責保険会社・警察署または自動車安全運転センター・医療機関・勤務先・市区町村など、書類ごとそれぞれの窓口で入手・作成する必要があります。
提出漏れがあると適正な保険金が支払われない可能性があります。提出を進める前に、弁護士など交通事故の専門家に確認してもらうのもひとつの手です。
加害者の自賠責保険会社がわからない場合
車検証とセットになっている自賠責保険証明書を確認すれば、保険会社や証明書番号を特定できます。
事故の発生直後、相手方の住所や連絡先とあわせて、自賠責保険証明書の内容を控えておくのがベストです。
なお、交通事故に遭った後、警察への届け出・実況見分を経て発行される交通事故証明書には、警察が確認した自賠責保険の情報が記載されます。
交通事故が起きた際の警察への届け出は道交法に定められた運転者の義務です。
そのため、交通事故時の初期対応をルール通りに行っていれば、基本的には「加害者が加入している自賠責保険会社がわからない」という状況は起こらないはずです。
被害者請求で受け取る仮渡金制度
自賠責保険には、交通事故被害者の当座の費用に充て、事故の影響から生活を保護することを目的とした仮渡金の制度があります。
損害確定前でも利用できる前払い制度
仮渡金は、事故による負傷の治療中や示談交渉の継続中など最終的な損害額がまだ確定していない段階でも、治療費など怪我の影響による出費がすでに発生していれば請求可能です。
示談金受け取り前の被害者請求で受け取り可能
仮渡金は、被害者請求の一環として利用する前払い制度で、通常は
- 加害者側から最終的な示談金の支払いを受けていないこと
- 自賠責保険に対して被害者請求で進めること
が前提になります。
任意保険会社の事前認定・一括対応で既に支払いが進んでいる場合には、原則として別途仮渡金を利用できないこともあります。具体的に制度を利用できるかどうかは保険会社に確認してください。
仮渡金での受け取り金額
仮渡金で受け取れる金額は、最低5万円(定められた重症を除く11日以上の治療を要する傷害の場合)~最大290万円(死亡の場合)と、負傷・被害の内容・状況によってあらかじめ決められています。金額が定額で計算も不要なため、比較的早期に受け取れる仕組みとなっています。
被害者請求を検討する場合の注意点
被害者請求には時効がある
交通事故の損害賠償について被害者請求を検討している場合、時効に注意が必要です。
自賠責保険には時効があり、一定期間が経過すると保険金(損害賠償)を請求する権利が消滅します。
被害者請求する場合の、自賠責保険に対する請求時効は請求内容ごとに下記の通りです。
- 傷害:事故の翌日から3年間
- 後遺障害:症状固定の診断を受けた翌日から3年間
- 死亡:死亡日の翌日から3年間
事前認定であれば、スケジュールを念頭に置いて手続きを進めるのは加害者側保険会社の仕事です。
一方、被害者が自ら被害者請求する場合、時効までの期限管理をしてくれる人はいません。
時効に達する前に、すべての必要資料を集め請求手続きまでを自分で行っていく必要があります。
なんらかの事情で請求が遅れそうな場合は、必ず保険会社に連絡して対応を確認するようにしてください。
物損事故は対象外
前述のとおり、自賠責保険は人身損害を対象とする保険で、物損事故は補償の対象外です。
車両やガードレールなど物の損害については、加害者が加入する自動車保険(対物賠償責任保険)や、加害者本人への請求によって対応する必要があります。
被害者請求を弁護士に依頼するメリット
必要書類の収集や手続きを任せられる
被害者請求では、多数の書類を自分で集め、不備がないように揃える必要があり、交通事故で負傷して日常生活や仕事にも支障が出ている状況では、これを一人で進めるのは大きな負担となります。
弁護士に依頼すると、被害者請求に必要な書類の洗い出しや収集方法についてアドバイスを受けたり、実務的な手続きを任せたりすることができるため、被害者の負担を大きく軽減できます。
後遺障害等級認定の可能性を高めやすい
後遺障害等級認定の場面では、診断書や検査資料の内容が重要であり、記載漏れや不十分な記述があると、適切な等級が認められないことがあります。
弁護士に相談することで、どのような検査資料を追加した方がよいか、医師にどの点を記載してもらうべきかといった具体的なポイントについて助言を受けられ、適切な資料を備えたうえで被害者請求を行うことができます。
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示談交渉を含めた総合的なサポートが受けられる
被害者請求そのものは、行政書士が手続きを代行できるケースもありますが、示談交渉や損害賠償全体の戦略を含めて総合的に相談できるのは弁護士です。
任意保険会社との示談条件に納得できない場合や、示談書にサインするべきか迷う場合にも、弁護士に交渉を任せることで、被害者の立場から適切な賠償を目指すことができます。
まとめ
被害者請求は、交通事故の被害者が、加害者の加入する自賠責保険に対して直接保険金を請求できる制度です。
示談が成立していなくても自賠責保険分を先に受け取れることや、後遺障害等級認定で自分に有利な資料を添付しやすいことなど、被害者側にとってメリットのある手続き方法です。
一方、必要書類が多く手続きが煩雑であることや、専門的な知識や場合によっては弁護士などへの依頼費用が必要になるといったデメリットもあります。
加害者が任意保険に加入していない場合、示談交渉が長引きそうな場合、被害者の過失割合が大きい場合、後遺障害等級認定を申請する場合などは、被害者請求を検討する価値が高いでしょう。
適切な後遺障害等級認定を逃すなどのリスクを減らすためにも、実際に被害者請求を行う際には、時効や必要書類、仮渡金の活用などのポイントを押さえつつ、交通事故に詳しい弁護士への相談をご検討ください。
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