交通事故裁判における刑事裁判と民事裁判の違い

裁判所

交通事故の「裁判」は刑事裁判と民事裁判の両方が行われることがあります。刑事裁判では重大な事故を起こした加害者の罪が審理され、民事裁判では損害賠償についての判決が下されます。別々に開廷される「裁判」となりますが、刑事裁判の結果は民事裁判に影響を与えます。

交通事故の損害賠償交渉は、まず当事者同士の話し合いである示談から始まり、合意に至らない場合はADR機関による和解あっ旋、または裁判所での調停へと進み、それでも不調となれば、最終的には「裁判」において決着を着けることになります。

交通事故の損害賠償問題で「裁判」にまで進むことは少ないのですが、大きな事故で多額の損害賠償金を請求する場合、後遺障害で賠償金額が高額となる場合、また交渉の相手方に誠意が見られず交渉が進まない場合などにおいては、被害者にとって頼りになる解決方法です。

一般人には馴染みのない「裁判」に臨むために

「裁判」に臨むためには、法律に詳しい人自身が訴訟を起こす本人訴訟という方法もありますが、一般的には弁護士に依頼することになるでしょう。しかし、弁護士と訴訟手続きを進めるうえで、「裁判」に関する知識を持っておいて損はありません。

交通事故に詳しく、依頼人と相性の良い弁護士ならば問題はないと思われますが、場合によれば何の手続きを進めているのか分からなくなることもあるでしょう。

「裁判」についての知識をしっかりと身に付けて、弁護士と連携を取りながら進めていくことをお薦めします。

交通事故における「裁判」とは?

裁判所は、社会のルールを守らないことによって起こる紛争を、公平かつ適正に解決する役割を有しています。

裁判所では、罪を犯した疑いで起訴された人(被告人)について、有罪か無罪か、そして有罪の場合はどのような刑罰を科すべきかの判決が下されます。

5種類の裁判所があり、それぞれの役割を果たす

「裁判」が裁判所で行われることは誰でも知っていると思いますが、裁判所にはいくつかの種類があり、どこでどういう「裁判」が行われるかについて、しっかりと理解している人は少ないでしょう。

裁判所には、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所および簡易裁判所の5種類があります。

第一審と呼ばれる最初の裁判は、簡易裁判所、地方裁判所あるいは家庭裁判所で行われ、その裁判結果に納得がいかない場合、上級の裁判所に不服を申し立てることが可能で、これが第二審と呼ばれるものです。

第二審の判決に、憲法違反などが問われる場合は、さらに上級の裁判所に不服を申し立てることができ、これが最高裁判所で行われる第三審となり、最高裁判所で下された判決が最終のものとなります。

交通事故の「裁判」が行われるのは?

交通事故の「裁判」は、まず簡易裁判所あるいは地方裁判所で行われます。比較的軽い罪の刑事裁判は簡易裁判所、それ以外の刑事裁判は地方裁判所が舞台となります。

民事裁判においては、損害賠償金額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下なら簡易裁判所で第一審が行われます。

「裁判」には刑事裁判と民事裁判の2種類がある

「裁判」とひと言で言っても、刑事裁判と民事裁判の2種類があるということを、普段は意識していない方がほとんどだと思われます。この2種類の裁判の違いは、実際にどちらかの裁判に直接関わった人以外は、一般的にはあまり知られていないでしょう。

交通事故には、刑事裁判、民事裁判の両方が関係する

交通事故の「裁判」の場合、刑事裁判も民事裁判も両方関係することがあります。ただ、「示談」から「和解あっ旋」、そして「調停」という流れになるケースでは、損害賠償問題が中心となりますので、「裁判」は民事裁判という事になるでしょう。

一方で、刑事裁判を行うような交通事故であれば、刑事裁判の結果が民事裁判の審理において、加害者の過失の有無、過失相殺において大きな影響を与えます。

それでは、刑事裁判と民事裁判が具体的にどう違うのかを説明します。

犯罪行為に対する処罰を与えるのが刑事裁判

刑事裁判は、刑法を始めとする、刑罰が設けられている法律に違反した者に、国が処罰を与える裁判です。

殺人や傷害、強盗などの犯罪に対し警察官が捜査を行い、犯人を特定し、検察官に報告します。検察官はさらに捜査を続け、処罰を求める必要があると判断すれば裁判所に起訴を行います。

判決では有罪か無罪か、そして死刑や懲役刑などの量刑が言い渡されるのです。

交通事故の刑事裁判とは?

交通事故に限らず、日本の刑事事件で罪を犯した人を裁判にかける権利(公訴権)を持っているのは、検察官だけです。

いくら被害者が加害者を起訴したいと考えても、刑事裁判において直接起訴を行う権利はありません。もちろん検察官は、被害者感情などを十分に考慮し、起訴されて当然の行為をした人は起訴を行いますが、交通事故の場合は、被害者にも大きな落ち度がある場合など、起訴にまで至らないケースもあるのです。

刑事裁判では、損害賠償についての審理は行われない

よく刑事ドラマや映画で裁判のシーンが登場しますが、そのほとんどは刑事裁判です。

刑事裁判の場合、最終的に判決で下されるのは、罰金や懲役など被告人に対する刑罰となります。この罰金で被告人が支払うお金は国に入るだけで、被害者に支払われるものではありません。つまり刑事裁判というのは、違法行為をした者に定められた刑事罰を与える裁判で、被害者への直接的な賠償の審理を行う「裁判」ではないのです。

被害者への損害賠償問題は民事裁判で審理されるのです。

刑事裁判で科せられる処罰は?

刑事裁判では、原告側(被害者)と被告側(加害者)がお互いの言い分を主張し、どちらが正しいかという判断を裁判官に託します。

「裁判」で判決が宣告されれば、裁判所が出した結論は絶対的であり、敗訴した方は判決に従わなければならないのです。

判決に不服がある場合、上訴して上級の裁判所で「裁判」を行うことができますが、前述の通り日本の裁判制度は三審制となっており、最高裁判所で下された最終的な判決は最終のものとなり、それ以上争うことはできません。

そのため、刑事裁判だけでなく民事裁判においても、「裁判」を行う限りは、勝訴するためにあらゆる方策を尽くすべきだと言えるでしょう。

刑事裁判が行われるのは?

交通事故においては、すべての事故において刑事裁判が行われるわけではありません。

ひき逃げ、飲酒運転、過度なスピード違反、死亡事故などの場合には、刑事裁判になる可能性が高いと言えます。

刑事裁判で有罪となれば一生消えない前科がつき、禁錮刑や懲役刑が言い渡されたならば、刑務所で長い時間を過ごすことになります。

厳罰化の傾向が強まる交通事故の処罰

悪質、重大な事故については起訴され刑事裁判が行われますが、近年、交通事故の加害者に対しては厳罰化の傾向が強まっています。

2013(平成25)年、自動車運転死傷行為等処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が成立し、翌年5月に施行されました。

それ以前は刑法に規定されている危険運転致死傷罪、自動車運転過失致死罪とされていましたが、そこから抜き出した上で特別法とし、新たな形の犯罪も設けられたものです。

自動車運転死傷行為等処罰法の内容は?

被害者が死亡したり怪我をしたりした場合は過失運転致死傷罪で、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金が科せられます。また、より悪質な運転による事故については危険運転致死傷罪となり、1年以上20年以下の懲役が科せられます。

危険運転致死傷罪の主な様態として挙げられているのは、次の通りです。

  • アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行
  • 進行を制御することが困難な高速度での走行
  • 進行を制御する技能を有しないでの走行
  • 人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
  • 赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

この危険運転致死傷罪が問われるような刑事裁判においては、被害者自身で「裁判」を争うことはできないでしょう。

弁護士に依頼したうえで刑事裁判にて勝訴し、加害者の罪を確定させ、民事裁判で十分な損害賠償を受けることを確実にしたいところです。

交通事故に強い【おすすめ】の弁護士に相談

交通事故

一人で悩まずご相談を

  • 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない
  • 交通事故を起こした相手や保険会社とのやりとりに疲れた
  • 交通事故が原因のケガ治療を相談したい