自転車と車による人身事故対応・過失割合まとめ

自転車

自転車事故は、歩行者の事故とも自動車同士の事故とも異なる特性を持っています。事故に備えるためには、自転車保険に加入しておきましょう。自転車事故の場合、自動車よりも自転車の過失割合が小さくなります。自転車事故の被害に遭ったら、自転車保険や自動車保険の弁護士費用特約を利用できるのかを確認して、早めに弁護士に相談しましょう。

自転車事故の特性とは

自転車は、非常に便利な乗り物ですから、日常的に乗り回している人も多いでしょう。しかし、いったん交通事故になると、自分が被害者になったときにも加害者になったときにも大きなトラブルに発展します。

自転車事故には、自動車対歩行者の事故とも自動車同士の事故とも大きく異なる特性があるので、以下で押さえておきましょう。

自転車は、道路交通法上の車両に該当する

まず、意識していない人も多いかもしれませんが、自転車は道路交通法上「軽車両」と位置づけられ、さらに「軽車両」は道路交通法上「車両」に分類されます。歩行者ではなく、車両扱いとなるということです。そこで、自転車には道路交通法による各種の規制が及びます。自転車に対する規制については、後に詳しく説明します。

自転車は、児童等や高齢者も運転している

自転車は、車両であっても免許制度がありません。児童等(おおむね13歳未満の者をいい、おおむね6歳未満の幼児を含みますが、幼児は小児用の車を運転し、歩行者として扱われることが多いとされています)や高齢者なども普通に運転をしています。そこで、事故の際には、有免許者が運転することが前提である自動車側に高い注意義務が課されます。

自転車は、動きが複雑

自転車は、歩行者より高速で走りますし、蛇行運転しているケースなどもあり、歩行者とは異なる動きをします。突然飛び出してくる可能性などもあるので、事故の際、自動車側には高い注意義務が課されます。

自転車は、事故で受けるダメージが大きい

自転車は、事故発生時に受けるダメージが大きいことも特徴的です。自転車の車体は小さく、不安定であり、運転者の身体を防護する機能がなく、運転者は無防備な状態だからです。ヘルメットやプロテクターをしていない人がほとんどですから、頭を打って大怪我をすることも多いのです。そのようなとき、責任を問われるのは、自転車にぶつかった四輪車やバイクになります。

自転車への規制強化について

講習義務と罰則の制定

近年、自転車事故の危険性が重視されたことにより、自転車運転への規制が強まっています。2015年6月、改正道路交通法が施行されて、危険な方法で自転車を運転した人(14歳以上)に講習や罰則が科されるようになりました。具体的には、交通に危険を及ぼすおそれがある信号無視、一時不停止、酒酔い運転などの危険行為を反復(3年以内に2回以上)して行った自転車の運転者に対して、さらに自転車を運転することが道路における交通の危険を生じさせるおそれがあると認めるときは、自転車運転者講習を3か月以内に受講することを命ずることができることになっています。3時間の講習を受けなければなりません。講習には6000円の費用がかかります。また、講習を受けるよう通知があってから3か月以内に受講しない場合には、5万円以下の罰金が科せられます。

自転車の違反行為

自転車を運転するときに違反となる行為は、以下の15項目です。

  • 信号無視
  • 通行禁止違反

「歩行者用道路」など、道路標識などによって自転車の通行が禁止されている道路や場所(歩行者天国など)の通行は認められません。

  • 歩行者用道路における徐行違反

道路標識で通行可能な場合など、自転車は歩行者用道路を通行することができますが、その場合には、歩行者に注意を払いながら徐行運転しなければなりません。

  • 通行区分違反

車道と歩道などが区別されている道路において、自転車が車道を走るときには、道路(車道)の左側を通行する必要があります。逆走は違法です。

  • 路側帯通行時に歩行者の通行を妨害する

路側帯を通行するときには、歩行者の通行を妨げないような速度と方法により、自転車を運転する必要があります。

  • 遮断機が降りている踏切への立ち入り
  • 交差点安全進行義務違反

信号のない交差点に進入する際、左から車両がくる場合、交差道路が優先道路や自分の走っている道路より広い場合には、左からくる車両、優先道路や広い道路を走る車両を優先しなければなりません。

  • 交差点優先車妨害

交差点で右折する際は直進車や左折車を優先する必要があります。

  • 環状交差点における安全進行義務違反

環状交差点(ラウンドアバウト)では、車両などの進行を妨害しないようにし、環状交差点に入る際には必ず徐行する必要があります。

  • 指定場所一時不停止違反

「止まれ」という標識があるところでは、必ず一時停止しなければなりません。

  • 歩道通行時の通行方法違反

道路標識で歩道通行ができるとされている場合であっても、歩行者を優先しなければなりません。歩道の車道寄りの部分や通行指定部分を徐行して、通行しましょう。

  • ブレーキ不良自転車の運転

ブレーキ装置がない自転車やブレーキの性能が不良な自転車を運転することは禁止されています。

競技用自転車で、前輪や後輪にしかブレーキがない自転車で公道を走っても違反になります。

  • 酒酔い運転
  • 安全運転義務違反

ハンドルやブレーキなどを確実に操作し、道路交通や車両の状況に応じて、他人に危害を及ぼさないように安全に配慮して運転しなければなりません。例えば、スマホを操作しながらの運転、傘差しでの片手運転などは禁止されています。

  • 妨害運転

2020(令和2)年6月30日から追加されたものです。

自転車を運転する者は、自動車やバイク、他の自転車の通行を妨げる目的で、「逆走して進路をふさぐ」「幅寄せ」「進路変更」「不必要な急ブレーキ」「ベルをしつこく鳴らす」「車間距離の不保持」「追い越し違反」の行為により、他の車両等に道路における交通の危険を生じさせてはならないとされています。

以上のように、自転車には、歩行者にはないいろいろなルールが適用されるので、ルールを守って運転しましょう。

自転車保険とは

自転車事故!自転車保険に加入していなかったらどうなる?

相手から十分な支払いを受けられない可能性

自転車を運転していて自動車を相手に事故に遭うと、自分が重大な怪我をしてしまいますし、ときには死亡してしまうこともあります。このような場合、基本的には加害者から支払いを受けることができますが、相手が自動車保険に加入していない場合には、十分な支払いを受けることができないおそれがあります。

相手の車の物損の補償

自転車を乱暴な方法で運転していて相手の車を傷つけたら、相手から車の修理費用を請求されます。相手の車が高級車なら、高額な支払い請求をされることもありますし、代車費用や評価損などの支払い請求をされるおそれもあります。

被害者への賠償金支払い

自転車相手や歩行者相手に事故を起こすと、自分が加害者になってしまいます。そうすると、相手に対して莫大な賠償金支払いの義務が発生してしまうことがあるので、注意が必要です。相手に重大な後遺障害が残ったり死亡したりすると、1億円を超える賠償金の支払いが必要になることもあります。

自転車保険に加入していなかったら、自分の怪我や死亡結果に対して十分な保障が受けられないおそれがありますし、相手に対する賠償金は、すべて自腹で支払う必要があります。支払いができない場合には、被害者や被害者の遺族から裁判を起こされて、資産や給料等を差し押さえられてしまうおそれもあります。そのようなことになったら、自己破産せざるを得ません。

このようなことにならないために、最近では自転車保険への加入が推奨されています。自治体によっては、自転車保険への加入が義務づけられているところもあります(東京都、兵庫県など)。

以下では、自転車保険の仕組みや内容を確認しておきましょう。

自転車保険の仕組み

自転車保険の仕組みは、自動車保険のものとは異なります。保険の名称は、保険会社により異なりますが、一般的に、「個人賠償責任補償」と「傷害補償」の組み合わせによってできています。

個人損害賠償責任補償

個人損害賠償責任補償は、他人を傷つけたり、他人の物を壊したりして、損害賠償責任を負ったときに、賠償金を保険会社に補填してもらえる保険です。自転車に乗っていて、相手に怪我をさせたり死亡させたり、所持品や自転車を壊してしまったりしたときに、保険会社が相手に必要な支払いをしてくれます。つまり、自転車事故で、自分が加害者になったときのための保険だと考えることができます。自動車で言うと、対人対物賠償責任保険に相当するものです。

限度額まで支払いをしてもらうことができますが、なるべく高くしておくことをおすすめします。最低でも、1億円以上に設定しておきましょう。

なお、個人損害賠償責任補償は、通常、自転車事故以外のケースでも補償が受けられます。例えば、うっかり他人のものを壊してしまったり、人を傷つけてしまったりした場合などに補償してもらえます。

傷害補償

傷害補償は、自転車事故で、自分が怪我をしたり死亡したりした場合に補償を受けられる保険です。相手が自動車の場合の事故で、特に有効な保険です。自動車保険で言うと、人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険に相当します。

一般的に、次のような補償を受けることができます。

入院保険金 自転車事故で怪我をして入院すると、入院1日についてあらかじめ設定された金額(1000円~1万円程度。プランによって異なります)の保険金を受け取ることができます。補償期間があり、通常、最大180日までとされています。
手術保険金 交通事故で怪我をして、手術を受けるときに給付を受けられる保険金です。手術の種類に応じて、決められた計算方法により、保険金の支給を受けられます。
通院保険金 自転車事故で怪我をしたため、通院した際に受け取れることができる保険金です。
死亡・後遺障害保険金 交通事故で後遺障害が残ったり、死亡したりした場合に支給される保険金です。

保険料について

自転車保険は、月々数百円で加入できるものから1000円以上かかるものまで、補償の内容・程度によってさまざまです。

その他の特約について

自転車保険には、示談代行サービスをつけることができる保険や、弁護士費用特約をつけられるものもあります。示談交渉サービスがついていると、自転車事故を起こしたとき、被害者との示談交渉を保険会社が代行してくれるので、とても楽です。弁護士費用特約をつけておくと、交通事故に遭ったときに弁護士に法律相談する費用や示談交渉を依頼する費用を保険会社が負担してくれるので、安心です。

オプションをつけるとその分保険料は高額になりますが、安心を買うための費用と思えば、高いというものでもありません。

たとえ条例等によって加入を義務づけられていなくても、自転車を運転するならば、必ず自転車保険に加入しておきましょう。

自転車で交通事故にあった場合に必要な対応

自転車事故に遭ったら、どのような対応をすべきなのか、以下で順を追って確認します。

警察への通報・届け出

まずは、警察に届け出ることが必要です。道路交通法により、交通事故の当事者は警察に対する事故の報告を義務づけられています(道路交通法72条1項後段)。これに違反すると、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられる可能性があります(道路交通法119条1項10号)。

事故の相手が警察に通報することもありますが、加害者が進んで通報をしないなら、被害者の立場であっても通報すべきです。

警察を呼ばないのは、義務違反

事故現場で自動車のドライバーが「通報しないでほしい」と言ってくることもありますが、警察を呼ばない(警察に届出をしない)のは、運転者に課されている義務に違反する行為です。警察を呼んでない(事故の届出をしない)と、交通事故の賠償金を請求するのに必要な「交通事故証明書」が発行されず、事故が起こったことを証明することができなくなるためです。
自転車事故で重大な怪我をしたり自転車が壊れたりしても、後に相手に何の請求もできなくなってしまいます。加えて、自転車も道路交通法上の「車両」ですから、事故当事者になった場合には、自転車の運転手にも事故の報告義務があります。

人身事故として届け出る必要性

自転車で自動車相手に事故に遭ったら、基本的に人身事故として届け出ておくべきです。たいした怪我をしていないときや、その場では痛みがない場合などには、物損事故として届け出てしまうことがあります。しかし、そのような場合でも、意外と大きな怪我をしていると分かることや、後に痛みが出てくることなどがあります。物損事故として届け出ていたら、自転車の損壊などの物損にしか賠償を受けることができないので、治療費や慰謝料などの支払いを受けられなくなるおそれがあります。

後に切り替えをすることも可能ですが、必ずしも認められるとは限りません。初めから、人身事故として届け出ておきましょう。

その場での示談は避ける

自転車で自動車相手に事故に遭うと、相手のドライバーが「今ここで、お金を支払う約束をするから、示談してほしい。」と言ってくることがあります。被害者が軽傷や一見無傷の場合に「300万円支払うから、これで十分でしょう」と言われたら、被害者としても、「示談した方が得かも」と思ってしまうことがあります。しかし、このような申出には、絶対に応じるべきではありません。

事故現場で示談をすると、その内容が有効となってしまいます。しかし、事故後、当時考えていなかったような重い症状が出てくることもありますし、後遺障害が残ってしまうおそれもあります。そのような場合、既に示談をしていたら、発生した症状についての賠償金を全く受け取ることができなくなります。

例えば、実は事故で頭を損傷していて、後日、高次脳機能障害が発生し、日常生活や仕事などに重大な支障を発生することがあります。この場合、数千万円以上もの賠償金を請求することができるケースも多いのですが、その場で示談をしていたら、全く支払いを受けることができないのです。

生活に支障が出て仕事もできなくなって家族にも苦労をかけて苦しい思いをするのに、相手からは300万円しか支払われないのです。そのようなことにならないためにも、事故現場での示談は頑として断りましょう。

自転車運転者は痛みがなくても病院へ

自転車で自動車相手に交通事故に遭ったら、必ずその後、病院で診察を受けましょう。事故現場や直後には、痛みやしびれなどの自覚症状がないことが多いので、被害者はいちいち病院に行かないことがあります。しかし、交通事故での怪我には、自覚症状がないものも多いのです。

例えば、むち打ち症の場合には、事故後数日が経過してから症状が出てくることもよくありますし、脳に損傷を受けている場合にも、現場では自覚症状がないことがあります。自分では気づいていなくても、細かい骨折などをしている可能性もあるのです。

交通事故に遭ったら、必ず「その日のうちに」遅くとも「翌日には」、整形外科を受診しましょう。

自分や家族の保険加入状況を確認

自転車事故に遭ったときには、自転車保険に加入しているかどうかを確認しましょう。自転車保険に加入していたら、相手に与えた損害(物損など)の支払いをしてもらうことができますし、自分の自転車保険から、入通院費用や後遺障害保険金などを支払ってもらうことができます。弁護士費用特約がついていたら、1事故1名につき300万円、法律相談については1事故1名につき10万円まで弁護士費用を保険会社が負担しますので、多くのケースの場合、無料で弁護士に相談をしたり、示談交渉を依頼したりすることができます。家族が自転車保険に加入している場合にも、各種の補償や弁護士費用特約を利用できることがあるので、併せて確認しましょう。

また、自転車保険ではなく、自動車保険に加入している場合にも、弁護士費用特約を利用することができます。自分や家族が自動車保険に加入しているなら、弁護士費用特約がついていないかどうか、保険会社に問い合わせて確認しましょう。特約がついているなら、すぐに弁護士に相談に行って必要なアドバイスを受けておくと、後に有利に示談交渉や後遺障害認定を受けることができます。

自転車事故での過失割合の基本的な考え方

以下では、自転車対自動車の事故における過失割合がどのくらいになるのか、確認していきましょう。

自転車対自動車の事故の場合、自動車同士の事故における過失割合とは基本的な考え方が異なります。

なお、この過失割合については、東京地裁民事交通訴訟研究会編「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂5版〕」(以下「別冊判タ38号」といいます)及び日弁連交通事故相談センター東京支部編「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準 上巻(基準編)」(以下「赤い本」といいます)を参考にしていますが、両書で異なる場合は、その旨指摘することとします。

自転車の過失割合が小さくなる

自転車と自動車とでは、圧倒的に自転車の立場が弱いのです。自転車の方が車体が小さく、スピードも出ませんし、安定性もありません。自動車の方が、事故を避けやすい立場にあります。また、自転車の運転者は、事故によって大怪我をする可能性が高くなります。自転車対自動車の事故で、自動車のドライバーが怪我をすること自体少ないでしょう。そのため、自転車の運転者を保護する必要があります。

同じ行動をとった場合には、自転車の過失割合は小さくなり、自動車の過失割合が大きくなります。

自転車の場合の過失割合の修正要素

自転車と自動車の交通事故では、以下のような事情を過失割合の修正要素として考慮します。

自転車の過失割合が小さくなる場合

  • 自転車を運転していたのが児童等や高齢者の場合
  • 自転車横断帯や横断歩道を通行中の場合
  • 住宅街や商店街の場合、道路幅が狭い場合
  • 車が大型車の場合
  • 車に重過失、著しい過失がある場合

上記のような場合には、自動車側がより注意して走行すべきなので、基本の過失割合よりも、自動車側の過失割合が5%~20%程度加算されます。

自転車の過失割合が大きくなる場合

  • 夜間の場合
  • 見通しがきかない交差点の場合
  • 自転車に重過失、著しい過失がある場合

別冊判タ38号では、自転車の著しい過失の例として、酒気帯び運転、2人乗り、無灯火、並進、傘を差すなどしてされた片手運転、脇見運転などの著しい前方不注視、携帯電話等の無線通話装置を通話のために使用したり、画像を注視したりしながら運転すること等を挙げ、自転車の重過失の例として、酒酔い運転、いわゆる「ピスト」等の制動装置不良等を挙げています。しかし、赤い本では、別冊判タ38号と一部異なっており、「酒気帯び運転」は著しい過失とせず、「酒酔い運転」は重過失ではなく、著しい過失とし、また、「制動装置不良」は重過失ではなく著しい過失とし、「片手運転」はそれ自体では重過失とも著しい過失ともしていません。他の例は、赤い本でも同じですが、ただ1点、自転車の重過失の例として、両手ばなし運転を挙げています。また、赤い本では、自転車の過失割合が大きくなる例として、右側通行、高速度進入を挙げています。

上記のような場合には、自転車に責任があると考えられるので、自転車側の過失割合が5%~15%程度加算されます。

自転車と自動車の過失割合

以下で、典型的なケースにおける、自転車と自動車の過失割合を確認していきましょう。

信号機のある交差点の事故

信号機のある交差点において、直進車同士の事故の場合の基本の過失割合は、以下の通りです。

信号機の色 自転車の過失割合 自動車の過失割合
自転車側の信号が青、自動車側の信号が赤の場合  0 100
自転車側の信号が赤、自動車側の信号が青の場合 80 20
自転車側の信号が黄、自動車側の信号が赤の場合 10 90
自転車側の信号が赤、自動車側の信号が黄の場合 60 40
自転車側の信号が赤、自動車側の信号が赤の場合 30 70

信号機のない交差点の事故

信号機のない交差点の場合の過失割合は、以下の通りです。

対向方向から進入した場合

  自転車の過失割合 自動車の過失割合
自転車が直進、自動車が右折 10 90
自転車が右折、自動車が直進 40 60

なお、別冊判タ38号では、右折の自転車の過失割合が50、直進の自動車の過失割合が50となっています。

ところで、交差点における右折自動車と直進自転車との衝突事故のうち、自動車が同一道路を同一方向から進入した場合、右側通行で直進する自転車の過失割合が15、右折する自動車の過失割合が85です。

直進自転車と左折自動車との事故

自転車対自動車の事故には、交差点における直進自転車と左折自動車との事故があります。一つは、先行して左折する自動車が、後方の確認が不十分であったため、道路の左側に寄って走行してきた自転車と接触した場合です。この場合、自転車にも軽度の前方不注視による左折合図の見落とし等の過失があることが前提となります。もう一つは、自動車が、先行する自転車を追い越して左折する際に、直進自転車に衝突した場合です。それぞれの場合の基本の過失割合は、以下の通りです。

  自転車の過失割合 自動車の過失割合
自動車が先行して左折 10 90
自動車が追い越し際に左折 0 100

渋滞中の車両間の事故

渋滞中は、車両の陰になって自転車を発見しにくいのに、車両間をぬって自動車が交差道路を直進あるいは交差道路方向に右折進行しようとしたため、直進車から見て交差道路を直進あるいは右折車から見て対向直進していた自転車に衝突して交通事故が起こることもあります。この場合、自転車の側からは、自動車の頭部がゆっくり出てきているのに、発見が遅れたことになるため、自転車の過失割合は10、自動車の過失割合が90となります。

進路変更に伴う事故

進路変更をするときにも、非常に事故が起こりやすいのです。

自動車が進路変更をした場合

先に走っていた自動車が進路変更をしようとしていたときには、基本的に、自転車の過失割合が10、自動車の過失割合が90となります。ただし、進路変更禁止場所である場合や進路変更の合図を出していなかった場合などには、自動車の過失割合が10%程度、加算されます。

自転車が進路変更した場合

先に走っていた自転車が進路変更する場合、前方に障害物があるかどうかで過失割合の基準が変わります。

前半に障害物がなければ、自転車の過失割合が20、自動車の過失割合は80となります。

前方に障害物があり、自転車がそれを避けるために進路変更をした場合には、自転車の過失割合が10、自動車の過失割合が90となります。

自転車が進路変更の合図をしていなかった場合には、いずれの場合も、自転車の過失割合が、10%程度加算されます。

ドア開放時の事故

自動車が自転車の前方にある場合、自動車のドア開閉時に自転車が衝突して事故が起こることもあります。別冊判タ38号や赤い本には、ドア開放時の事故の例は挙げられていませんが、バイクと自動車の事例として取り上げられており、自転車と自動車の事故にも参考となりましょう。

それによれば、ドア開放時の事故の過失割合は、自転車が10、自動車が90となります。

ただし、自動車がハザードランプ等で合図をしていなかった場合には自動車の過失割合が、5%程度加算されます。反対に、タクシーがハザードランプ等で合図をして停止した直後の場合又はトランクが開いているなど、ドア開放が予測されるような事情があった場合には、自転車側の過失割合が、5%~10%程度加算されます。

相手の保険会社は、被害者に高い過失割合を押しつけてくる

以上のように、自転車事故では、基本的に自動車同士の事故よりも、自転車の過失割合が小さくなります。自転車の運転者が児童等や高齢者の場合、住宅街や商店街などで事故が起こった場合、横断歩道上の事故だった場合などには、自転車の過失割合がさらに小さくなります。

しかし、自転車事故の被害者が、相手の保険会社と交渉をしていると、相手の保険会社は、上記の基準よりも大きい過失割合を押しつけてくることが多いものです。被害者が何も言わないで納得してしまうと、本来より大きく過失相殺をされて、請求できる賠償金の金額が大きく減ってしまいます。自転車事故の被害者が「どうしてこんなに大きな過失割合を適用されるのか?」と疑問を持つことも多いのですが、相手に言っても「これが適切な基準です」「嫌なら、示談することはできません」などと言われてしまい、聞き入れてもらえません。

自転車での事故で過失割合が不満なら弁護士に相談を

自転車事故の被害者が、適正な過失割合を認定してもらうためには、弁護士に対応を依頼する必要があります。

弁護士は、法律のプロですから、いろいろな交通事故のケースにおける適正な過失割合の基準を把握しています。相手の保険会社も、弁護士相手に無茶な過失割合を主張しようとはしません。そこで、弁護士に依頼すると、過失割合を適正に算定してもらうことができて、賠償金が大きく上がります。

自転車保険や自動車保険に弁護士費用特約がついていたら、無料で弁護士相談を受けることもできます。自転車事故に遭ったら、まずは一度、交通事故問題に強い弁護士による相談を受けましょう。

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