人身事故の罰則まとめ|罰金の金額と物損事故との違い

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佐藤 學(元裁判官、元公証人、元法科大学院教授)

人身事故

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人身事故と物損事故の違い

まずは、人身事故と物損事故にどのような違いがあるのか、基本的なところから理解しておきましょう。

人身事故では賠償金が高額になる

人身事故と物損事故では、損害賠償金が大きく異なります。人身事故の場合、人が死傷するので非常に多くの種類の損害が発生しますし、金額的にも多額になります。例えば、人身事故の場合には、主に、以下のような損害が発生し、加害者は被害者に賠償しなければなりません。

  • 治療関係費
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 慰謝料
  • 被害者が死亡すれば葬儀費用

被害者に重大な後遺障害が残った場合や被害者が死亡した場合、逸失利益や慰謝料は非常に高額となり、合計で1億円を超えることも珍しくありません。

一方、物損事故では上記のような損害は発生しないので、加害者が被害者に支払うべき損害賠償としては、せいぜい車の修理費用の数万~数十万円程度になります。(ただ、慰謝料については、一般的には認められませんが、財産的損害が填補されるだけではなお、慰謝されないような損害を被ったと認められる場合には、慰謝料が認められることがあります)

このように、加害者にかかる損害賠償の負担が人身事故と物損事故とでは全く異なります。

人身事故と物損事故の違いのまとめ

人身事故と物損事故の違いをまとめると、以下の通りです。

人身事故 物損事故
免許の点数(付加点数) 加算あり 基本的に加算なし(あて逃げのケースのみ例外)
刑事罰 あり 基本的になし(あて逃げのケースのみ例外)
民事損害賠償 損害の種類が多く高額 損害の種類が少なく低額
加害者にかかる負担 非常に重い 軽い

ひと言で「交通事故」と言っても、人身事故と物損事故では加害者にかかる負担が全く異なってくるので、くれぐれも人身事故を起こさないように注意しましょう。

人身事故で加算される免許の点数

次に、人身事故を起こした場合、実際にどのくらいの点数が加算されるのか、見てみましょう。交通事故には、人身事故と物損事故があります(道路交通法67条2項)。以下における説明では、特に断らない限り、一般の例にならい、交通事故は人身事故の意味で用いています。

基礎点数と付加点数

点数には、「基礎点数」と「付加点数」とがあります。

基礎点数は、個々の違反行為に付される基本的な点数であり、付加点数は、違反行為が原因となって交通事故を起こしたとき、及びあて逃げをしたときに、その交通事故を起こしたこと、又はあて逃げをしたことを理由に、その違反行為に係る基礎点数に加算される点数です。
すなわち、「付加点数」には、交通事故を起こした場合の付加点数と物損事故を起こした場合の物の損壊に係る措置に違反(あて逃げ)をした場合の付加点数とがあります。

交通事故を起こした場合の基礎点数は、通常、一般違反行為となる「安全運転義務違反」の2点です。

点数制度上の「違反行為」は、一般違反行為と特定違反行為の2種類に分類されます(道路交通法施行令(以下、単に「令」といいます)33条の2第3項本文)。

一般違反行為とは、「自動車又は一般原動機付自転車の運転に関し法若しくは法に基づく命令の規定又は法の規定に基づく処分に違反する行為で、令別表第2の1の表の上欄に掲げるもの」をいいます(令33条の2第1項1号)。

特定違反行為とは、特に悪質・危険な違反行為として「令別表第2の2の表の上欄に掲げるもの」をいいます(令33条の2第2項1号)。

一般違反行為には、それぞれ令別表第2の1の表に定める一般違反行為の種別ごとに定められた基礎点数が付されます。

ただし、同時に、2以上の種別の違反行為をしたときは、これらの違反行為の点数のうち、最も高い点数を付し、同じ点数のときはいずれかの違反行為に係る点数を付すとされています(令別表第2の備考の一の1)。

酒気帯び運転の基礎点数は加重で評価されるケースも

また、酒気帯び運転(呼気中のアルコール濃度が0.15mg/ℓ以上0.25mg/ℓ未満の場合。以下「0.25未満」とします)の基礎点数は13点ですが、酒気帯び運転(0.25未満)と他の違反行為とが競合する場合に、包括的に独自の違反類型として評価するとされています。
これらの違反行為は、酒気帯び運転(0.25未満)と酒気帯び加重の対象となっている違反行為とを同時にした場合に、これらの違反行為を単一の違反行為として包括的に評価する概念です。

例えば、酒気帯び運転(0.25未満)と酒気帯び加重の対象となっている安全運転義務違反とを同時にした場合には、酒気帯び(0.25未満) 安全運転義務違反等として包括的に評価され、その基礎点数である14点が付されます。

一方、酒気帯び運転(0.25未満)とは異なり、酒気帯び運転(呼気中のアルコール濃度が0.25mg/ℓ以上の場合。以下「0.25以上」とします)の基礎点数は、一般違反行為の中で最も高い点数(25点)となっていることから、酒気帯び運転(0.25以上)と他の違反行為が競合する場合には、酒気帯び運転(0.25以上)として評価し、酒気帯び運転(0.25未満)の場合にのみ、酒気帯び加重類型が設けられています。

交通事故を起こしたことによる付加点数は、加害者の不注意の程度と交通事故の種別(被害の程度)によって異なります。具体的には、以下の表の通りです。

違反行為に付する付加点数(交通事故の場合)

交通事故の場合の付加点数の表(令別表第2の3の表)
加害者の不注意の程度 交通事故の種別(被害の程度) 付加点数
専ら 死亡事故 20点
上記以外 13点
専ら 傷害事故(治療期間が3月以上であるもの又は後遺障害が存するもの) 13点
上記以外 9点
専ら 傷害事故(治療期間が30日以上3月未満であるもの) 9点
上記以外 6点
専ら 傷害事故(治療期間が15日以上30日未満であるもの) 6点
上記以外 4点
専ら 傷害事故(治療期間が15日未満であるもの)又は建造物損壊事故 3点
上記以外 2点

このように、加害者に専ら不注意がある場合かそれ以外かにより、取扱いが異なります。専ら不注意がある場合の方が、当然高い付加点数となります。なお、治療期間は、当該負傷者の数が2人以上である場合にあっては、これらの者のうち最も負傷の程度が重い者の治療期間とします。

次に、交通事故の種別(被害の程度)によって付加点数が異なります。死亡事故の場合には最も高い付加点数となり、専ら加害者の不注意による場合には、1回の死亡事故で加害者の免許が取り消されます。被害の程度が軽くなってくると、付加点数も低くなります。

単なる物損事故では、交通事故の付加点数は付されず、その原因となった違反行為に付する基礎点数のみが付されるが、住居などの「建物」にぶつかって損壊させたケース(建造物損壊事故)では例外的に3点又は2点の付加点数となります。

ひき逃げ、酒酔い運転の基礎点数

交通事故を起こしたとき、ひき逃げや酒酔い運転をすると、さらに高い累積点数となりますので注意が必要です。ひき逃げ、酒酔い運転は、いすれも特定違反行為です。

例えば、酒酔い運転をしていた運転者が、不注意により死亡事故を起こし、かつ救護義務違反(ひき逃げ)をした場合には、ひき逃げの基礎点数35点に対し、酒酔い運転の基礎点数が35点に死亡事故に係る付加点数20点が付され、その累積点数は90点となります。

点数と免許の関係

以下で、運転免許の停止や取消しの処分の基準を示します。

免許停止処分等の累積点数と処分日数、前歴の関係
免許停止になる日数 30日  60日  90日  120日  150日  180日   
過去3年以内の免許停止などの前歴
0回 6点~8点 9点~11点 12点~14点 それ以上になると取消し
1回   4点~5点 6点~7点 8点~9点 それ以上になると取消し
2回     2点 3点 4点 それ以上になると取消し
3回       2点 3点 それ以上になると取消し
4回以上         2点 3点 それ以上になると取消し
免許取消しの欠格期間と累積点数、前歴の関係

免許が取り消される欠格期間()内は前歴がある場合

1年(3年)

2年(4年)

3年(5年)

4年(5年)

5年

過去3年以内の免許停止や取消しの前歴

0回

15点~24点

25点~34点

35点~39点

40点~44点

45点以上

1回

10点~19点

20点~29点

30点~34点

35点~39点

40点以上

2回

5点~14点

15点~24点

25点~29点

30点~34点

35点以上

3回以上

4点~9点

10点~19点

20点~24点

25点~29点

30点以上

これまでに免許の停止や取消しの処分を受けていると、低い点数でも簡単に免許を停止されたり取り消されたりします。

また、酒酔い運転などの特定違反行為により交通事故があると、基礎点数と付加点数の合計点数がより高くなり、欠格期間が10年になるケースもあります。

点数がリセットされるまでの期間について

交通違反や交通事故を起こし、一定の点数を付されても、その後3年が経過すると点数はリセットされ、0点として扱われます。点数制度では、「過去3年以内の所定の違反行為や交通事故の点数を累積する」こととされているからです。

また、点数計算の例外事由としては、以下の7つの場合があります(令33条の2第3項各号)。

  • 違反行為をしないで、1年以上経過したときは、それより前の違反行為の点数は累積しない(1号)
  • 免許の取消処分を受け、その取消処分の期間中に違反行為がなければ、その処分を受ける前の違反行為の点数は累積しない(ただし、前歴1回となる)(2号)
  • 免許の停止処分を受け、その停止処分の期間中に違反行為がなければ、その処分を受ける前の違反行為の点数は累積しない(ただし、前歴1回となる)(3号)
  • 違反行為に係る累積点数が免許の拒否(免許試験に合格した者に免許を与えないこと)の基準に該当したことがあり、かつ、当該違反行為をした後それぞれ2年又は1年の欠格期間内に違反行為をしたことがない者は、当該違反行為に係る点数と、その後の違反行為に係る点数とは累積しない(ただし、前歴1回となる)(4号)
  • 違反行為に係る累積点数が免許の保留(免許試験に合格した者に6月を超えない範囲内で免許を保留すること)の基準に該当したことがあり、かつ、当該違反行為をした後6月の期間内に違反行為をしたことがないか、又は当該期間内に免許を受けた場合は、違反行為に係る点数と、その後の違反行為に係る点数とは累積しない(ただし、前歴1回となる)(5号)
  • 点数が3点以下となる軽微な違反行為をした者が、過去2年以上違反行為をしたことがなく、しかもその軽微な違反行為をした後、3月以上の免許期間を違反行為なしに経過すれば、その他の違反行為に係る累積点数にその軽微な違反行為に係る点数は累積しない(6号)
  • 違反者講習を受けた場合、その後に違反行為をした場合の累積点数の計算においては、受講の基準に該当することとなった軽微違反行為及び当該行為をする前の軽微違反行為に係る点数は累積しない(7号)

なお、累積されていた違反点数がリセットされ、0点として扱われるのは、次の3つの場合です。

  1. 違反行為をした翌日から1年以上の間無事故・無違反であったときは、累積されていた違反点数はリセットされ、0点として扱われ、その後にした違反や事故の点数に加算されません。
  2. 免許を受けている者が、点数が3点以下となる軽微な違反行為をし、過去2年以上違反行為をしたことがなく、かつ当該軽微な違反行為をした後、3月以上無事故・無違反であったときは、その軽微な違反行為の点数はリセットされ、0点として扱われ、その後にした違反や事故の点数に加算されません。
  3. 過去3年以内に免許停止や取消しの行政処分がなく、軽微違反行為で累積された点数が6点に達した場合でも、違反者講習を受けたときは、累積された6点はリセットされ、0点として扱われ、その後にした違反や事故に加算されません。

免許の取消処分や停止処分の手続の流れ

点数が累積されて免許の取消処分や停止処分になる場合、どのような手続の流れになるのでしょうか?

免許の取消処分や停止処分の対象となった人には、処分の内容に応じて次の通知書(管轄する警察により呼称が異なります)が郵送されます。

  • 免許の取消処分又は長期(90日以上)の停止処分の対象となった人には、意見の聴取通知書(点数制度による処分の場合)又は聴聞通知書(点数制度によらない処分の場合)
  • 中期(60日)又は短期(30日)の停止処分の対象となった人には、行政処分出頭通知書
  • 違反者講習を受講せず短期(30日)の停止処分の対象となった人には、免許停止出頭通知書

意見の聴取(又は聴聞)

免許の取消処分又は長期(90日以上)の停止処分に該当する場合は、公安委員会又は警察本部長が主宰する「意見の聴取(又は聴聞)」が行われます。

意見の聴取(又は聴聞)とは、道路交通法104条(「意見の聴取」の場合)又は同法104条の2(「聴聞」の場合)により、免許の取消処分又は長期(90日以上)の停止処分に該当する場合に、処分を受ける人が違反や事故に関して意見を述べ、かつ有利な証拠を提出する機会を与え、その内容を検討した上、処分が公正適切に行われることを保障するための制度です。
ただし、述べられた意見や提出された証拠が処分に当たり考慮されることがあるとはいえ、必ず処分の軽減がなされるという制度ではありません。

この意見の聴取(又は聴聞)により、累積点数に応じて、取消処分又は90日以上180日までの停止処分が決定されます。
取消処分が決定された場合は、1年から10年の間、免許を取得することができない期間(欠格期間)が指定されます。正当な理由なく意見の聴取(又は聴聞)を欠席すると、書面審査で処分が決定されます。出席できない場合は、代理人を出席させることができます。

停止処分者講習の受講で停止期間が短縮

免許の停止処分を受けた人は、公安委員会が行う停止処分者講習を受講することにより、停止処分の期間が下記表の通り短縮されます。

短縮される日数は、考査の成績や受講態度等により違いがあり、短縮されない場合もあります。

停止処分者講習による停止期間の短縮
停止処分の期間 短縮される期間
30日の停止 29日以下の日数
60日~120日の停止 停止日数の2分の1以下の日数
150日の停止 70日以下の日数
180日の停止 80日以下の日数

なお、違反者講習を受講せず短期(30日)の停止処分の対象となった人は、停止期間を短縮する停止処分者講習(短期30日)は受講できません。

人身事故で刑事罰・罰金が発生するケース

次に、人身事故で適用される「刑事罰」について見ていきましょう。

刑事罰と免許の点数の違い

よく混同されるのですが、免許停止で加算される「点数」と「刑事罰」は全く異なる制度です。点数は「免許の効力」のみに関連する規制であり、点数が加算されたからと言って「犯罪」ではありませんし、本人に「前科」もつきません。

これに対し、刑事罰が科されるのは「犯罪行為」に対してであり、刑事的な処罰を受ければ一生消えない「前科」がついてしまいます。

人身事故による刑事処分(目安)

交通事故や交通違反を起こした場合、罰金で済むことも多く、正式な刑事裁判にもならないので、法廷に出頭することもないケースが多くあります。

以下の表は、交通事故の種別(被害の程度)と刑事処分(目安)の関係を示したものです。なお、死亡事故及び傷害事故の例は、過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)の場合です。

交通事故の種別(被害の程度)と刑事処分(目安)の関係
交通事故の種別(被害の程度) 刑事処分(目安)
死亡事故 拘禁刑(7年以下)又は罰金(50万円~100万円)
傷害事故(後遺障害が存するもの) 拘禁刑(5年以下)又は罰金(30万円~50万円)
傷害事故(治療期間が3月以上であるもの) 拘禁刑(3年以下)又は罰金(30万円~50万円)
傷害事故(治療期間が30日以上3月未満であるもの) 加害者に専ら過失がある場合:罰金(30万円~50万円)
被害者にも過失がある場合:罰金(20万円~50万円)
傷害事故(治療期間が15日以上30日未満であるもの) 罰金(15万円~30万円)
傷害事故(治療期間が15日未満であるもの) 罰金(10万円~20万円)

罰金のような場合、お金で済むと軽く考えている人もいますが、実際には、罰金以上の刑が確定すると、その情報は法務省の訓令である犯歴事務規程に基づいて検察庁でも管理されます。検察の運営や裁判を適正に行うためのもので、刑事裁判で前科調書という書面が提出されるのは、この記録に基づきます。
また、本籍地の市区町村が備える犯罪人名簿があります。犯罪人名簿は、選挙権・被選挙権の確認や、法令に基づく資格の調査に用いられるもので、罰金以上の刑を受けた者を記載しています。道路交通法関係の違反による罰金は名簿に記載しない扱いをとる自治体が多く、必要があるときは検察庁に照会して確認する運用がとられています。前科記録が戸籍に記載されることはありません。

人身事故で科される可能性のある刑事罰

令和8(2026)年6月25日に自動車運転死傷処罰法(以下「法」といいます)の改正法(法2条ついては、1号を改め、2号を3号とし、4号から7号までを3号ずつ繰り下げ、3号を5号、8号を11号とし、2号、4号及び6号を加える。法3条については、1項中の一部を改め、同項後段を加える)が成立し、同年7月21日から施行されています。

人身事故で成立する犯罪は、以下の通りです。

過失運転致死傷罪(法5条)

過失運転致死傷罪(法5条)は、自動車の運転者に要求される通常の注意を怠り、その結果、人を死傷させた場合に成立します。この罪は、最も基本となる人身事故です。

例えば、わき見運転などの前方不注視、速度違反、ハンドル操作ミス、車間距離不保持、一時不停止、左右の安全不確認など、注意義務に違反する運転により、歩行者や被害車両との衝突を回避できずに交通事故を起こし、被害者を死傷させた場合に、被疑者(加害者)に過失運転致死傷罪が成立することになります。

その処罰としては、7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科されます(ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑が免除される場合があります)。

危険運転致死傷罪(法2条)

危険運転致死傷罪には、2つの類型がありますので、ここでは、まず法2条について見てみます。

参考:危険運転致死傷罪 第二条-e-Gov 法令検索

危険運転致死傷罪(法2条)は、故意に一定の悪質で危険な運転行為を行い、その結果、人を死傷させた場合に成立します。

危険運転致死罪(法2条)は、裁判員裁判の対象事件になります。

危険運転とは、以下の運転行為になります。

  • 身体に血液1リットルにつき1.0ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態での走行(1号)
  • 薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行(2号)
  • 制御困難な高速度での走行(3号)
  • 殊更にタイヤを滑らせ又は浮かせることにより、制御困難な状態での走行(4号)
  • 進行制御技能なしでの走行(5号)
  • 最高速度が時速60キロメートル以下である場合は最高速度を時速50キロメートルを超える速度以上の高速度、最高速度が時速60キロメートルを超える場合は最高速度を時速60キロメートル超える速度以上の高速度、あるいは、その他当該高速度に準ずる速度であって、道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度での運転(6号)
  • 人車の通行を妨害する目的をもって、重大な交通の危険を生じさせる速度で、走行中の車の直前に進入(割り込み)し、その他これに著しく接近する運転(7号)
  • 車の通行を妨害する目的をもって、重大な交通の危険を生じることとなる速度で、走行中の車の前方で停止し、その他これに著しく接近する運転(8号)
  • 高速道路等において、車の通行を妨害する目的をもって、走行中の車の前方で停止し、その他これに著しく接近して、走行中の車に停止又は徐行させる運転(9号)
  • 赤信号や警察官の手信号などを殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転(10号)
  • 通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転(11号)

危険運転致死傷罪(法2条)の主な改正点

今般の危険運転致死傷罪(法2条)の改正は、主に、次のようなものです。

  • 「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」との要件を明確化するため、血液1リットルにつき1.0ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上の数値基準を規定し、基準値を超えた場合には、一律に危険運転致死傷罪が適用されます。
  • 道路・交通の状況に応じた重大な交通の危険の回避が著しく困難な高速度を捉える類型を新設した上で、最高速度が時速60キロメートル以下である場合は最高速度を時速50キロメートルを超える速度以上の高速度、最高速度が時速60キロメートルを超える場合は最高速度を時速60キロメートル超える速度以上の高速度の数値基準を規定し、基準値を超えた場合には、一律に危険運転致死傷罪が適用されます。
  • 殊更にタイヤを滑らせ又は浮かせることにより、進行制御が困難な状態にさせて自動車を走行させる類型を新設し、いわゆるドリフト走行やウィリー走行を故意に行った結果、人を死傷させた場合に危険運転致死傷罪が適用されます。

その処罰としては、人を負傷させた場合には15年以下の拘禁刑、人を死亡させた場合には1年以上の有期拘禁刑がそれぞれ科されます。有期拘禁刑の限度は20年ですので、危険運転致死罪(法2条)となった場合、最長20年の拘禁刑が科される可能性があります。

危険運転致死傷罪(法2条・3条)の場合、結果が傷害でも死亡でも「罰金」がないので、必ず拘禁刑となります。執行猶予がつかない限り、現実に刑務所で一定の期間服さなければなりません。

なお、危険運転致死罪(法2条)を犯し、その場から逃げた場合には、危険運転致死罪とは別にひき逃げの罪(10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)も成立し、その場合、最高で30年の拘禁刑が科されます。

交通事故は起こさないのが一番ですが、もし起こしてしまっても、ひき逃げは絶対にしてはなりません。

危険運転致死傷罪(法3条)

次に、法3条の危険運転致死傷罪について見てみます。

参考:危険運転致死傷罪 第三条-e-Gov 法令検索

危険運転致傷罪(法3条)は、アルコール(1項前段)や薬物(1項後段)、又は病気(2項)の影響により、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し、その結果、アルコールや薬物、又は病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合に成立します。

その処罰としては、人を負傷させた場合には12年以下の拘禁刑、人を死亡させた場合には15年以下の拘禁刑がそれぞれ科されます。

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(法4条)

アルコールや薬物を摂取したりして交通事故を起こした場合、しばらく時間が経過するのを待って、それらによる影響が消えてから出頭しようとする人がいます。

例えば、事故を起こした時に、アルコールに酔っていたか、どのくらい酔っていたかなどを警察等に分からないようにするために、さらにアルコールを飲んだり、その場から逃げたりして、アルコールに酔っていたか、どのくらい酔っていたかといったことが分からないようにした場合です。こうした場合、「逃げ得」にもなりかねません。

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(法4条)は、アルコールや薬物の影響により、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し、運転上必要な注意を怠って人を死傷させたとき、その運転のときのアルコールや薬物の影響の有無や程度の発覚を免れる目的で、さらにアルコールや薬物を摂取したり、その場を離れて身体に保有するアルコールや薬物の濃度を減少させるなど、その影響の有無や程度の発覚を免れるべき行為をした場合に成立します。

参考:危険運転致死傷罪 第四条-e-Gov 法令検索

その処罰としては、12年以下の拘禁刑が科されます。

アルコールや薬物の発覚を免れるため、その場から逃げた場合には、別にひき逃げの罪も成立し、その場合、最高で18年の拘禁刑が科されます。

アルコールや薬物を摂取した状態で交通事故を起こしても、決して逃げてはなりません。

無免許運転による加重(法6条)

無免許運転による加重の罪(法6条)は、法2条(5号を除きます)ないし法5条の罪を犯したとき、無免許で運転した場合に成立します。

参考:危険運転致死傷罪 第六条-e-Gov 法令検索

無免許運転も、飲酒運転に劣らず危険な行為ですから、法によって厳しく処罰されます。その処罰としては、

  • 危険運転致傷罪(法2条。5号を除きます)を犯した者が無免許であったとき、6月以上の有期拘禁刑(1項)
  • 危険運転致死傷罪(法3条)を犯した者が無免許であったとき、人を負傷させた場合には15年以下の拘禁刑、人を死亡させた場合には6月以上の有期拘禁刑(2項)
  • 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(法4条)を犯した者が無免許であったとき、15年以下の拘禁刑(3項)
  • 過失運転致死傷罪(法5条)を犯した者が無免許であったとき、10年以下の拘禁刑(4項)

がそれぞれ科されます。

過失運転致死傷罪を犯した場合、無免許運転であれば、拘禁刑のみで罰金はありません。

なお、危険運転致死罪(法2条)を犯した者が無免許であった場合、刑罰を加重する規定は存しないが、危険運転致死罪の刑が上限の最高刑であるため、処罰する上で不都合はないのです。

人身事故を起こしてしまったら弁護士に相談を

以上のように、人身事故を起こしてしまったら、免許の問題だけでは済まず、重く処罰されるリスクが高まります。なるべく罪を軽くするためには刑事弁護の専門家によるサポートが必要です。交通事故について困ったことがあれば、すぐに弁護士に相談に行きましょう。

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