実況見分はやり直し出来る?実況見分調書や供述調書に不満ある場合

実況見分

交通事故直後、警察による実況見分が行われる。事故のショックからうまく説明できず、曖昧な表現になってしまう可能性も。しかし、納得いくまで記載されている内容を確認し、自分の主張がきちんと書かれているかを確認するまで、署名捺印は避けることが大切。

事実が記載されていない調書には絶対に署名捺印しない!

交通事故における実況見分とは、その事故がどのような原因で発生し、どのようになったかを記録するもので、原則として事故発生直後に事故当事者の立ち合いの元で行われます。

これは警察が刑事訴訟法に基づいて行う証拠収集活動で、その際に作成される調書は実況見分調書と呼ばれます。

実況見分調書の作成には、原則として当事者など全員が立ち会う

警察官は、事故が発生した状況を図や文章を用いた書類にするために、現場の写真を撮影したり、タイヤのブレーキ痕を測定したり、あるいは事故の当事者や目撃者から話を聞いたりします。

この実況見分を基にして作成された実況見分調書は、裁判において事故状況を証明する最も重要な証拠となりますので、事故当事者にとって実況見分は最大限の注意を払って応じるべきことになります。

過失割合の判断基準ともなる実況見分調書

交通事故の過失割合とは、事故が発生した責任の所在を示す数字で、80:20、あるいは70:30というように合計100となる割合で示され、損害賠償額をこの割合で負担するというものです。

この過失割合は基本的に保険会社が決めますが、決定基準は警察が事故を検証して作る実況見分調書になります。

実況見分調書に重要な要素は、事故後の現場状況と、事故当事者や目撃者の証言です。

通常のケースでは現場での実況見分のときに作成されますが、後日改めて所轄の警察署に事故当事者が呼び出され、調書を取られることもあります。

それらの証言を総合して実況検分調書は最終的に作成されます。

被害者と加害者はどうやって判断される?

交通事故の際、当事者を被害者と加害者に分けて呼びますが、普通の刑事事件のように明確な区別はありません。

一般的には、事故の原因を作ってしまった方が加害者と呼ばれることが多いのですが、交通事故に関しては、過失割合にも見られるように、どちらかが100%悪いという判断がなされるケースは少ないのです。

そして事故原因を作ってしまった方が大きな負傷を負っている場合もよくありますので、第三者的には、どちらも加害者であり被害者でもあるという見方がされることもあります。

過失割合が五分五分に近い場合、心情的に相手が加害者なのに!と心情を悪くしてしまうケースもあります。

交通事故証明書に記載される甲と乙

交通事故の当事者が、保険金請求などのために自動車安全センターに発行を依頼する交通事故証明書には、事故の当事者を「甲」「乙」として記載されています。

多くの場合は「甲」の過失割合が高く、「乙」が低いのが通例のようですが、これは決して警察が「甲」が加害者と判断したわけではなく、実況見分は事情聴取を経て客観的に判断を行った結果なのです。

警察は民事不介入を原則としていますので、交通事故証明書の記載順によって被害者と加害者を判断することはないとしていますが、この証明書を見た保険会社担当員や、弁護士、あるいは裁判所といったところは、「甲」が加害者、「乙」が被害者と見なす傾向が強いようです。

この交通事故証明書の元となる実況見分や聴取には、妥協せずに自分の主張を通すことが大事だということは、この点からも明らかです。

後の示談交渉などにおいて、もしこの記載に不満や不安がある場合は、交通事故の専門家である弁護士などに相談することをお薦めします。

実況見分に立ち会えなかった場合はどうする?

以上のように、交通事故直後の実況見分は、その後の示談交渉の行方を決定すると言っても過言ではない重要な要素です。

しかし、例えば交通事故で負傷を負ってしまい気分が悪く実況見分に立ち会えない、あるいは救急車で搬送されてしまってその場にいられなかった、ということはよくあります。

実況見分調書は当事者の双方から聴取を行って作成されますが、当事者の一方が怪我で実況見分に立ち会えない場合、その場にいない当事者にとって不利な調書が作れられてしまう、という話を聞きます。

当事者がいなくても、実況見分は行われる

15_001交通事故後、加害者、または被害者に関わらず、大きな負傷を負っていればすぐに救急車で搬送されます。

場合によれば、そのまま入院ということにもなってしまいます。

すると、当然ながら事故直後の実況見分に立ち会うことができません。

このような時には、現場に残っている当事者の一方、または目撃者だけで実況見分は行われます。

正当ではない実況見分調書を突き付けられる場合も!?

一方だけが現場に残って作成された実況見分調書は、たとえ悪意がなくても一方的な内容になってしまいます。

目撃者がいない時にはなおさらで、立ち会えなかった当事者にとって非常に不利な実況見分調書ができあがってしまうケースも実際にあります。

原則として、警察は交通事故の当事者双方のから聴取を行い、実況見分調書を作成します。

当事者の一方が、事故直後の実況見分、または後日の事情聴取に応じられない場合、警察の担当捜査官が入院先などに赴き、改めて事情を聞き、実況見分調書が作られます。

この場合、事故現場の状況などが既に記入され、自分が記憶しているものとは違う事故状況に同意を求められることもあります。

疑いたくはないが、警察が信じられなくなるケースも

警察官たいていの交通事故処理は、上記のような筋の通った手続きが行われていますが、世の中にはいい加減な警察官もいて、双方の当事者に事情を聞かず、一方の意見だけで実況見分調書を作ってしまうケースがあるようです。

万が一、自分の主張がまったく受け入れられず調書が作成されてしまった場合、署名捺印は絶対に行ってはいけません。

手術後、意識がもうろうとしていてまともに受け答えができないのに聴取を求める警察には、丁重にお帰りいただき、はっきりと自分の意見を主張できる状態になってから応じるようにしましょう。

また、付添人の方にも、強く拒否するように伝えておくと良いでしょう。

実況見分のやり直しは可能なのか?

自分に不本意な実況見分調書が作られてしまった場合、実況見分をもう一度やり直し、実況見分調書を作り直してもらうことができます。

その方法には2通りのパターンがあります。

とにかく、署名捺印を拒否すること

実況見分調書には、事故当事者の署名捺印が必要です。

この際、言われるがままに署名捺印をせず、しっかりと書類の内容をチェックすることが大切です。

そして事実と違うことが書かれていたら、署名捺印を拒否し、実況見分のやり直しを要求することができます。

実際の現場に戻って実況見分をやり直すことは現実的ではないかもしれませんが、保険会社が過失割合を判断する実況見分調書に、事実と違った自分に不利になる表現が書かれてしまうことは防げます。

レアなケースだが、ねつ造されてしまうことも

非常にレアなケースですが、年に数件の実況見分調書の偽造や改ざんが報告されています。

これは明らかに犯罪行為ですから、訴訟に値するケースとなります。

ねつ造まで行かなくても、実況見分のやり直しを拒否されることがあります。

実況見分調書や供述調書は、警察という捜査機関が作成する文書で、必要がないと判断されれば、当事者の要求を拒否することも可能なのです。

このような状況に納得がいかず、不満の残る過失割合で示談が進められ、交渉が長引き調停や裁判となってしまうような場合には、自分で供述書や上申書を作成する必要がでてきます。

当事者自身でも可能ですが、交通事故に詳しい弁護士などに相談することをお薦めします。

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