逆走事故の過失割合|10対0になる場面と被害者にも過失がつくケース

逆走事故の過失割合

逆走事故の過失割合は、センターラインを越えてきた車や高速道路の逆走車との事故なら、逆走した側の過失100%(10対0)が基本です。一方通行を逆走してきた車と交差点でぶつかった場合は逆走された側にも過失がつき、自転車がからむ事故は場面によって割合が大きく変わります。

逆走してきた車にぶつけられたのに、相手方の保険会社から被害者にも過失があると言われ、納得できずにいる人もいるでしょう。過失がつくかどうかは、事故の場面と、被害者がその場でどう運転していたかで決まります。

場面ごとの基本の過失割合と、被害者に過失がつくケース、逆走した運転者の責任、示談交渉の進め方を順に確かめていきましょう。

逆走車との事故の過失割合

逆走車との事故の過失割合は、逆走された側が逆走車を予測できる立場だったかどうかで分かれます。対向車線や高速道路の本線で正面から来る逆走車は予測できないため逆走車100:0が基本で、交差点や自転車がからむ事故では、逆走された側にも注意する義務が残ります。

主な場面の基本の過失割合は次のとおりです。

事故の場面 基本の過失割合 理由
センターラインを越えてきた対向車と衝突 越えてきた車100:0 対向車がはみ出してくることは予測できない
高速道路の本線を逆走してきた車と衝突 逆走車100:0 高速道路は一方向にしか走らない前提で造られている
信号のない交差点で、一方通行を逆走してきた車と出会い頭に衝突 逆走車80:20 交差点では、逆走されていた側にも安全を確かめる義務が残る
一方通行を逆走してきた車と、交差点を直進する自転車が衝突 車90:自転車10 直進どうしの車80:自転車20に、車の一方通行違反が加わる
一方通行を逆走してきた自転車と、交差点を直進する車が衝突 自転車50:車50 直進どうしの車80:自転車20に、自転車の一方通行違反が加わる
道路の右側を走ってきた自転車と、対向の車が衝突 自転車20:車80 自転車の違反より、避けられる立場の車の責任が重く見られる

表の割合は基本の過失割合で、実際の割合は、速度や前方の見方など事故ごとの事情で修正されます。

センターラインを越えてきた車との事故

一般道で、センターラインを越えて対向車線に入ってきた車と衝突した事故は、越えてきた車の過失が100%、越えられた側は0%が基本です。

センターラインを越えてきた車と対向車が衝突した事故(基本過失割合 越えてきた車100:対向車0)

道路交通法17条4項は、車両は道路の中央から左の部分を通行しなければならないと定めています。センターライン(中央線)が引かれた道路では、中央線から左側が自分の走る部分です。自分の車線を正しく走っていた車は、対向車が中央線を越えてくることまで予測して運転する必要はありません。そのため、正しく左側を走っていた車の過失は、原則としてゼロです。

越えてきた理由が居眠りでも、わき見やカーブでの速度の出しすぎでも、越えてきた車の過失が100%であることに変わりはありません。

ただし、越えられた側が大きく速度を超えていた、前をよく見ていなかったといった事情があれば、越えられた側にも過失がつくことがあります。被害者側に過失がつくケースは、次の章で説明します。

高速道路の逆走車との事故

高速道路の本線を逆走してきた車との事故では、逆走車の過失が100%、逆走された側は0%が基本です。

高速道路の本線を逆走してきた車と正しく走っていた車が衝突した事故(基本過失割合 逆走車100:正しく走っていた車0)

高速道路は、多くの区間で上りと下りが中央分離帯で分けられ、それぞれの本線を車が一方向にだけ走る前提で造られています。本線を走る運転者が、正面から車が向かってくることを予測するのは困難です。しかも双方が高速で近づくため、気づいてから避けるまでの時間がほとんどありません。逆走車の責任が全面的に問われるのはこのためです。

ただし、逆走車を避ける余裕があった場合は、逆走された側にも過失がつくことがあり、その判断の仕方は次の章のとおりです。

一方通行の逆走車との事故

信号のない交差点で、一方通行を逆走してきた車と出会い頭にぶつかった事故は、逆走車80:逆走されていた側20が基本の過失割合です。センターラインや高速道路の逆走と違い、逆走されていた側にも過失がつきます。

信号機のない交差点で一方通行を逆走してきた車と違反のない車が衝突した事故(基本過失割合 逆走車80:違反のない車20)

一方通行の道路は、車が一方向にしか来ないことが前提です。逆走してくる車は、ほかの運転者が予測できない危険を持ち込むため、逆走車の過失が80と重く評価されます。

それでも逆走されていた側の過失が0にならないのは、信号のない交差点では、どちらの車にも、交差する道路から来る車に注意して安全を確かめる義務があるためです。一方通行の道路から車は来ないはずだと思い込んで確認を怠れば、その分が過失として評価されます。

信号のない交差点の事故は、道幅や一時停止の規制の有無によって、80:20から増減することがあります。交差点の事故の過失割合を場面ごとにまとめた記事は、次のとおりです。

逆走してきた自転車との事故

自転車がからむ逆走事故の過失割合は、自転車と車のどちらが逆走したかで大きく変わります。

自転車は道路交通法上の「車両」なので、車と同じく道路の左側を通行しなければなりません(17条4項)。道路の右側を走る自転車は通行区分違反で、いわゆる自転車の逆走にあたります。それでも車の過失が80と重く見られるのは、道路の状況によって自転車が右側を走る場面は多く、車の運転者は対向の自転車を予測し、減速や停止で衝突を避けられると考えられているためです。

道路の右側を走ってきた自転車と対向の車が衝突した事故(基本過失割合 自転車20:車80)

車が一方通行を逆走して自転車とぶつかった場合は、道幅が同じ程度の交差点で自転車と車がともに直進した事故の割合(自転車20:車80)が出発点です。ここに車の一方通行違反が加わって車の責任が重くなり、自転車10:車90になります。

信号機のない交差点で一方通行を逆走してきた車と直進する自転車が衝突した事故(基本過失割合 車90:自転車10)

自転車が一方通行を逆走して交差点に入った場合は、同じ出発点に自転車の一方通行違反が加わり、自転車50:車50まで自転車の過失が大きくなります。ただし、一方通行の標識に「自転車を除く」という補助標識があれば、自転車が逆向きに走っても一方通行の違反にはなりません。

信号機のない交差点で一方通行を逆走してきた自転車と直進する車が衝突した事故(基本過失割合 自転車50:車50)

逆走事故で被害者にも過失がつくケース

逆走された被害者にも過失がつくのは、被害者の側にも、事故の原因になった、または被害を大きくした落ち度があった場合です。逆走事故では、速度の出しすぎ、前方の不注意、避けられたのに避けなかったことの3つが主に問われます。

逆走車の保険会社が被害者の過失を主張してきたら、次の3つのどれを根拠にしているのかを確かめましょう。根拠のない主張なら、受け入れる必要はありません。反論の材料になるのは、事故直前の状況を記録したドライブレコーダーの映像や現場の写真、目撃者の証言です。

制限速度を大きく超えていた

逆走された被害者が制限速度を大きく超えて走っていた場合は、被害者にも過失がつくことがあります。

速度を出していると、逆走車に気づいてから止まるまでの距離が長くなり、避けられたはずの衝突を避けられなくなります。衝突したときの衝撃も大きくなり、けがや車の損傷が重くなるのも問題です。過失割合の基準(別冊判例タイムズ)では、被害者の速度違反は事故の型ごとに決まる基本の割合を修正する要素とされ、超過の程度が大きいほど被害者の過失は大きく見られます。

速度違反の有無を判断する材料は、ドライブレコーダーの映像や、事故後の車の止まった位置、ブレーキ痕などです。

一方、制限速度を少し超えていた程度で、逆走車がどの速度でも避けられない位置から現れた場合は、速度違反があっても被害者の過失が増えないことがあります。

前をよく見ていなかった

被害者がスマートフォンを見ていた、わき見をしていたなど、前をよく見ていなかったために逆走車に気づくのが遅れた場合は、被害者にも過失がつくことがあります。運転者には、逆走車がいてもいなくても、前方に注意して運転する義務があるためです。

前方不注視が問われるのは、前を見ていれば逆走車に気づけた状況だった場合で、逆走車がどの地点から見えていたかが争点になります。カーブの先や坂の頂上から逆走車が急に現れた、夜間に無灯火で走ってきたなど、前を見ていても気づけなかった状況なら、被害者の過失は問われにくくなります。

逆走車を避ける余裕があった

逆走車に早い段階で気づき、減速や車線変更で避けられたのに、そのまま走り続けて衝突した場合は、被害者にも過失がつくことがあります。避ける余裕があったかどうかの判断材料は、逆走車に気づいた地点からの距離と時間、周りの車の状況、道路の見通しです。

反対に、逆走車に気づいてすぐにブレーキを踏んだ、左に寄ったなど、できる限りの回避をしていれば、避けられなかったことを理由に過失を問われることは通常ありません。

逆走車を避けて起きた事故も逆走車に責任を問える

逆走車を避けようとして、ガードレールにぶつかったり、ほかの車と接触したりした事故でも、逆走車の運転者に損害賠償を請求できます。

ぶつかっていなくても損害賠償を請求できる

逆走車と接触していない事故でも、逆走がなければ事故は起きなかったといえる場合は、逆走車の運転者に損害賠償を請求することが可能です。

根拠は民法709条の不法行為で、故意または過失によって他人の権利を侵害した者が損害を賠償する責任を負うという定めです。逆走は道路交通法に違反する運転なので、逆走が原因でほかの車が避けきれずに事故を起こしたのであれば、逆走した運転者は事故の損害を賠償する責任を負います。

けがをした場合は、逆走車の側は自動車損害賠償保障法3条の賠償責任も負い、被害者は逆走車の自賠責保険に直接請求することもできます(同法16条)。

接触していない事故で争いになりやすいのは、逆走と事故との因果関係です。逆走車がいたことや、逆走車を避けるためにハンドルを切ったことを、ドライブレコーダーの映像や目撃者の証言で示す必要があります。避け方が大きすぎた、速度を出しすぎていたといった事情があれば、避けた側の過失として賠償額から差し引かれる点にも注意が必要です。

接触のない事故の過失割合と請求の進め方は、次の記事で解説しています。

立ち去った逆走車はドラレコと警察で特定する

接触のない事故では、逆走車がそのまま走り去ってしまうことがあります。逆走車が立ち去った場合は、すぐに警察に事故を届け出て、ドライブレコーダーの映像をもとに逆走車を特定してもらいましょう。

警察に届け出ると、事故の記録が残り、交通事故証明書(事故があったことを証明する書類)を取れるようになります。逆走車を探してもらうには、車の色や車種、ナンバー、走り去った方向といった手がかりが必要です。ドライブレコーダーの映像は上書きされる前に保存し、警察に提出できるようにしておきましょう。同乗者や周りの車の運転者が見ていれば、連絡先を聞いておくと、後で証言を頼めます。

交通事故があったとき、事故に関わった車の運転者に、車を止めてけが人を救護し、警察に報告する義務を課しているのが道路交通法72条1項です。逆走車が事故を起こしたことに気づきながら立ち去っていれば、救護と報告の義務の違反になり得る行為です。

逆走車が見つからないままけがの治療費などを払ってもらえないときは、国の政府保障事業を使えます。手続きは、損害賠償と示談交渉の章で説明します。

逆走した運転者が負う責任

逆走した運転者は、道路交通法違反としての行政処分と刑事罰、人を死傷させた場合の刑事責任、被害者への損害賠償責任の3つを負います。違反の種類は、逆走した場所によって変わります。

通行区分違反と通行禁止違反の違反点数と反則金

自動車やバイクの逆走は、どこを逆向きに走ったかによって、通行区分違反と通行禁止違反に分かれます。どちらも違反点数は2点で、反則金の額が違います。

逆走の場面 違反の種類(条文) 違反点数 反則金(普通車)
センターラインを越えて道路の右側を走る/高速道路の本線を逆向きに走る 通行区分違反(17条4項) 2点 9,000円
一方通行の道路を逆向きに走る 通行禁止違反(8条1項) 2点 7,000円
高速道路の本線で転回・後退する 本線車道横断等禁止違反(75条の5) 2点 9,000円

表は普通車の額で、反則金は車種によって異なります。

自転車の逆走も、2026年4月1日から、16歳以上の運転者は青切符(交通反則通告制度)の対象です。反則金は、右側通行などの通行区分違反が6,000円、一方通行の逆走などの通行禁止違反が5,000円です。

高速道路の本線を逆向きに走る行為も、道路の右側部分を通る点で通行区分違反にあたります。本線でUターンやバックをして逆走を始めた場合は、本線車道横断等禁止違反にもあたります。

反則金を納めれば、刑事手続きには進みません。納めなかった場合などは刑事手続きの対象となり、法定刑は、通行区分違反(119条1項6号)も通行禁止違反(119条1項2号)も、3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金です。人を死傷させた場合は、次に説明する刑事責任と、けがの程度に応じた付加点数が別に加わります。

出典元:道路交通法施行令 別表第二・別表第六(e-Gov法令検索)
出典元:自転車をはじめとする軽車両の反則行為と反則金の額(警察庁)
出典元:交通反則通告制度について(警察庁)
参考:道路交通法(e-Gov法令検索)

人を死傷させれば過失運転致死傷罪に問われる

逆走して人にけがをさせたり死亡させたりした運転者は、通常、過失運転致死傷罪に問われます。

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合に成立する罪で、法定刑は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(自動車運転死傷処罰法5条)。進む向きを確かめるのは運転上の基本的な注意で、逆走はこれを怠った結果です。

逆走が飲酒や薬物の影響によるもので、正常な運転が困難な状態だった場合は、より重い危険運転致死傷罪(同法2条1号・2号)に問われることがあります。

自動車運転死傷処罰法と、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の違いは、次の記事で解説しています。

一方通行や高速道路の逆走は危険運転致死傷罪になることも

一方通行の道路や高速道路を、重大な交通の危険を生じさせる速度で逆走して人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪に問われることがあります。

危険運転致死傷罪の類型のひとつに、通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為があります(自動車運転死傷処罰法2条11号)。法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑、死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑で、過失運転致死傷罪よりはるかに重い罪です。

通行禁止道路は政令で決められていて、一方通行の道路や、高速道路・自動車専用道路の反対車線(右側部分)が含まれます。一般道でセンターラインを越えた場合は、越えた先の右側部分が通行禁止道路にあたらないため、2条11号の危険運転には当たりません。逆走しただけで危険運転致死傷罪になるわけではありません。

参考:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(e-Gov法令検索)
参考:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令(e-Gov法令検索)

被害者への損害賠償責任

逆走した運転者は、刑事責任とは別に、被害者に生じた損害を賠償する民事上の責任を負います。刑事罰を受けても、反則金を納めても、被害者への賠償責任は消えません。

損害賠償の根拠は、民法709条の不法行為です。けがをさせた人身事故では、自動車損害賠償保障法3条により、車を自分のために運行させていた人(運行供用者)も賠償責任を負います。運行供用者は運転者本人とは限らず、会社の車を仕事で運転中に逆走した場合は、会社も責任を負う立場です。

逆走した運転者が任意保険に入っていれば、賠償金は逆走車の保険会社から支払われ、示談交渉も逆走車の保険会社の担当者と進めることになります。

参考:民法709条(e-Gov法令検索)

高速道路の逆走事故の発生状況

全国の高速道路では、2024年に、事故になったか、警察などに車を止められた(確保された)逆走が220件あり、おおむね2日に1回の頻度で起きています。このうち事故に至ったのは50件で、逆走事故は、死亡事故になる割合が高速道路の事故全体の約38倍、死傷事故になる割合が約4倍と、重い事故になりやすいのが特徴です。

数値は、国土交通省と高速道路会社が警察の協力を得てまとめた全国の高速道路の集計で、NEXCO東日本が公表しています。死亡事故になる割合は、2011~2024年の逆走事故581件と高速道路の事故全体710,828件を比べたものです。

インターチェンジ付近で多い

高速道路の逆走は、インターチェンジやジャンクションの出入口・合流部で最も多く起きています。2024年の逆走220件の発生場所は、分合流部・出入口部が91件(41%)、料金所の前後が53件(24%)、本線の単路部(出入口や料金所から離れた区間)が36件(16%)でした。

分合流部・出入口部は、本線から道が分かれたり、ランプが本線に合流したりする場所です。料金所の前後と合わせると、逆走の65%がこうした出入りの場所の近くで起きています。

インターチェンジ付近では、本線への合流や出口の手前で、前方から向かってくる車がいないかにも注意を向けておきましょう。

出典元:高速道路における逆走の発生状況(NEXCO東日本)

高齢の運転者が多い

2024年に高速道路で逆走した運転者は、65歳以上が約7割を占め、75歳以上だけで109件(49%)でした。事故に至った50件に限ると、65歳以上の割合は約5割に下がります。

逆走を始めた理由をみると、逆走になると分かっていて逆走を始めた故意が20%、逆走になると気づかずに逆走を始めた過失が36%、逆走を終えた後も逆走したと気づいていない認識なしが33%でした。認識なしには、認知症などが疑われる例が含まれます。

過失や認識なしの逆走では、運転者自身が逆走に気づいていないため、自分から止まって引き返すことは期待できません。逆走車を見かけた側が、早めに避けることが身を守る手段になります。

出典元:高速道路における逆走の発生状況(NEXCO東日本)

逆走車を見かけたら減速して左に寄る

高速道路で逆走車を見かけたとき、または逆走車がいるという情報を聞いたときは、速度を落として十分な車間距離を取り、最も左側の車線を走りましょう。逆走車は追越し車線(最も右側の車線)を走ってくる傾向があるため、左側の車線に移れば正面からの衝突を避けやすくなります。

前方に逆走車が見えたら、路肩などの安全な場所に停車して衝突を避けます。後続車に追突されないよう、ハザードランプをつけて合図しましょう。

逆走車を見かけたら、同乗者から110番に通報してもらうか、サービスエリアなどの非常電話、料金所の係員に知らせます。運転者が走りながら電話をかけるのは危険なので、自分で通報するときは安全な場所に止まってからにしましょう。

逆走車と衝突したときは、車内にとどまらず、運転者も同乗者も後続車に注意しながら車を降り、ガードレールの外などの安全な場所に避難してから110番に通報します。後続車の運転者が、前方の止まっている車に気づいているとは限らないためです。

逆走事故の損害賠償と示談交渉

逆走事故の被害者は、治療費や慰謝料、車の修理費などを逆走した運転者の側に請求できます。被害者に過失がない事故では、自分の保険会社に示談交渉を任せられないため、逆走車の保険会社とのやりとりをどう進めるかが大切です。

被害者が請求できる主な損害

逆走事故の被害者が請求できる損害は、けがに関する損害と、車などの物の損害に分かれます。

損害の種類 主な項目
けがに関する損害 治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料
後遺障害が残った場合 後遺障害慰謝料、逸失利益(将来得られたはずの収入)
死亡事故の場合 死亡慰謝料、逸失利益、葬儀費用
物の損害 車の修理費、レッカー代、代車費用

慰謝料には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の3つの基準があり、どの基準で計算するかで金額が大きく変わります。逆走車の保険会社が示す金額は、弁護士基準より低い自賠責基準や任意保険基準で計算されていることが多いのが実情です。

修理費が、事故当時の車の価値(時価)と買替諸費用(登録費用など)の合計を上回るときは、修理費ではなく時価を基準に賠償額が決まり、買い替えた場合は買替諸費用も請求できます。

逆走事故は正面衝突になりやすく、けがが重くなる傾向があります。示談で一度合意すると、後から追加で請求するのは困難なので、治療を終えてから損害の全体を確かめて合意しましょう。慰謝料の3つの基準と計算方法は、次の記事で解説しています。

過失がなければ自分の保険会社は示談交渉できない

センターラインを越えてきた車や高速道路の逆走車との事故で、被害者の過失が0の場合は、被害者が入っている保険会社は、逆走車の側と示談交渉ができません。

保険会社が契約者に代わって示談交渉する示談代行は、契約者が相手方に賠償責任を負う場合に、保険会社が賠償金を支払う立場として行うものです。契約者に賠償責任が発生しない事故では、保険会社は示談代行ができません。賠償責任のない事故で保険会社が報酬を得て交渉することは、弁護士でない者が報酬を得て他人の法律事務を扱うことを禁じた弁護士法72条に触れるためです。

そのため、過失0の被害者は、逆走車の保険会社の担当者と自分で交渉することになります。逆走車の保険会社が被害者の過失を主張し、自社の支払基準で計算した示談金を示してきても、交渉に慣れた担当者を相手に一人で反論し続けるのは大きな負担です。

自分や同居の家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士に相談・依頼する費用を保険で補ってもらえます。弁護士費用特約だけを使った事故は、翌年の等級(保険料の割引率を決める区分)に影響しません。逆走車の保険会社から過失を主張された、示談金の額に納得できないといったときは、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。

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参考:弁護士法(e-Gov法令検索)

相手方が無保険・不明なら政府保障事業を使う

逆走車が自賠責保険に入っていなかった場合や、逆走車が立ち去って見つからない場合は、国の政府保障事業で、けがの損害の補償を受けられます。

政府保障事業は、自賠責保険の対象にならないひき逃げや無保険車による事故の被害者を、国が自賠責保険と同じ限度額で救済する制度です。限度額は、傷害で120万円、後遺障害で等級に応じて75万円~4,000万円、死亡で3,000万円です。健康保険や労災保険から給付を受けた分は差し引いて支払われます。車の修理費などの物の損害は対象外です。

請求は、損害保険会社や共済組合の窓口で受け付けています。保険代理店では受け付けていないため、損害保険会社の窓口に直接請求しましょう。

自分の自動車保険に人身傷害保険(自分や同乗者のけがを自分の保険で補償する保険)が付いていれば、政府保障事業とどちらを先に請求するかは自由に選べます。ただし、両方から重複して受け取ることはできません。ひき逃げされたときの補償の受け方は、次の記事で解説しています。

出典元:政府保障事業(国土交通省)

逆走事故でよくある質問

逆走事故では、自分が逆走してしまったときの行動や、過失割合を誰が決めるのか、逆走はなぜ起きるのかを知りたい人もいます。

自分が逆走していると気づいたらどうする?

高速道路で自分が逆走していると気づいたら、すぐに路肩などの安全な場所に止まり、ハザードランプをつけます。車から離れてガードレールの外側などに避難し、110番か非常電話で逆走したことを通報して、警察官が来るまで安全な場所で待ちましょう。その場でUターンして戻ろうとするのは、本線車道での転回にあたり、正面衝突の危険も高めます。

逆走事故の過失割合は誰が決める?

逆走事故の過失割合は、警察が決めるものではなく、事故の当事者どうし、または双方の保険会社の話し合いで決まります。話し合いで合意できなければ、最終的には裁判所が判断します。被害者に過失がない事故では自分の保険会社は交渉できないため、逆走車の保険会社と話し合うのは、被害者本人か、依頼した弁護士です。

逆走はなぜ起きる?

高速道路の逆走の多くは、わざとではなく、運転者が気づかないうちに起きています。2024年の集計では、故意に始めた逆走は約2割にとどまり、約7割は気づかないまま始めたか、最後まで気づかなかったものでした。起きやすいのはインターチェンジや料金所の付近で、運転者は高齢者が多く、認知症などが疑われる例も含まれます。

まとめ

逆走事故で被害者の過失が0になるのは、センターラインを越えてきた車や高速道路の逆走車との事故が基本です。一方通行の逆走車と交差点でぶつかった事故では、逆走されていた側にも20%の過失がつき、自転車がからむ事故は場面によって割合が大きく変わります。

逆走車の保険会社から被害者にも過失があると言われたときは、速度、前方の見方、避ける余裕のどれを根拠にしているのかを確かめ、ドライブレコーダーの映像と照らし合わせましょう。被害者に過失がない事故では自分の保険会社に交渉を任せられないため、一人で抱え込まず、弁護士費用特約が使えるかも確かめておくと安心です。逆走車とぶつかっていない事故や、逆走車が立ち去った事故でも、請求の道は残っています。

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