私有地の事故で警察を呼ばなかったら?届出の義務と保険への影響

私有地で起きた事故でも、警察には届け出るのが原則です。その場で警察を呼ばずに相手方と別れてしまっても、今から届け出ることができ、自動車保険も使えます。
店の駐車場や自宅の前で車をぶつけ、相手方に私有地だから警察は呼ばなくてよいと言われて、連絡先だけ交換して別れた人もいるでしょう。後になって、保険が使えるのか、相手方が話を変えてきたらどうなるのかと不安になるのは自然なことです。
私有地の事故で警察を呼ばないと何が困るのか、別れた後に何をすればよいのか、保険と過失割合の考え方を順に確かめていきましょう。
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私有地の事故でも警察に届け出よう
私有地で起きた事故でも、警察に届け出ておくことは被害者の利益になります。
店の駐車場のように人や車が自由に出入りする場所は道路交通法の「道路」にあたることがあります。道路にあたる私有地の場合、警察への報告は法律上の義務です。
自宅の敷地など報告の義務がない私有地でも、警察に届け出ておけば事故があったことを示す材料が残ります。
また、人身事故であれば、場所を問わず刑事責任を問われる可能性があります。
駐車場など人が出入りする場所では届出が義務
スーパーやコンビニの駐車場、通り抜けできる私道のように、人や車が自由に出入りしている私有地は、私有地であっても道路交通法の「道路」にあたることがあります。
道路交通法は「道路」を、道路法の道路などのほか「一般交通の用に供するその他の場所」と定めています(2条1項1号)。「道路」かどうかは土地の持ち主が誰かではなく、実際に誰でも通行できる状態かどうかで決まります。
「道路」にあたる私有地で事故が起きた場合、運転者には公道での事故と同じく、次の義務が生じます(道路交通法72条1項)。
- すぐに車を止め、けが人を救護し、危険を防ぐ措置をとる義務
- 警察官に、事故の日時・場所・死傷者の数・壊れた物などを報告する義務
警察に報告する義務は、事故に関わった車の運転者、ぶつけた側とぶつけられた側の双方にあります。店の駐車場で車をぶつけられた被害者も、相手方に任せず、自分から警察に連絡するようにしましょう。
自宅の敷地でも届け出れば記録が残る
自宅の敷地や車庫で起きた事故も、警察に届け出ておけば、後で保険会社や相手方に事故の状況を説明するとき、事故が実際にあったことを示す材料になります。
自賠責保険の請求で、人身事故の証明書が取れないときに出す「人身事故証明書入手不能理由書」(損害保険会社の様式)にも、届け出た警察署と届出の年月日を書く欄があります。
自宅の敷地は「道路」にあたらないため、警察への報告義務はありません。それでも、相手方がいる事故やけが人が出た場合は、届け出ておくと安心です。
人身事故は場所を問わず刑事責任を問われる
私有地の事故でも、人を死傷させた場合は、運転者が刑事責任を問われることがあります。
自動車の運転で人を死傷させたときの過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」場合に成立し、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています(自動車運転死傷処罰法5条)。条文に「道路」という条件はないため、自宅の敷地や駐車場の事故でも成立し得ます。
道路以外の場所で人を死傷させた事故は「道路外致死傷」として、点数制度とは別の仕組みで、免許の停止などの処分を受けることもあります。
けが人が出た事故では、まず救急車を呼び、警察にも届け出ましょう。
参考:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(e-Gov法令検索)
出典元:点数制度によらない運転免許の取消し・停止(滋賀県警察)
道路交通法が適用される私有地と適用されない私有地
私有地が道路交通法が適用される「道路」にあたるかは、人や車が自由に出入りできる状態か、出入りを制限しているかで分かれます。
裁判所は、現に一般の人や車の通行に使われているとみられる状況があり、通るたびに管理者の許可を受ける必要のない場所を「一般交通の用に供するその他の場所」としています(仙台高裁昭和38年12月23日判決)。場所ごとの判断の目安は次のとおりです。
| 場所 | 道路にあたるか(目安) | 理由 |
|---|---|---|
| スーパー・コンビニなど店の駐車場 | 通路はあたりやすい | 客の車が自由に出入りし、通行している |
| コインパーキング | あたる場合がある | 料金を払えば誰でも出入りできる |
| 通り抜けできる私道 | あたりやすい | 近所の人や車が日常的に通っている |
| 月極駐車場・マンションの住民用駐車場 | あたりにくい | 使えるのが契約者や住民に限られる |
| 工場・会社の構内 | あたりにくい | 入るのに許可が必要 |
| 自宅の敷地・車庫 | あたらない | 家族など限られた人しか出入りしない |
私有地で起こった事故でも、最終的にそこが「道路」かどうかを判断するのは警察や裁判所です。表の目安で判断がつかない場所で事故が起きたら、その場で警察に連絡しておくのが確実です。
道路交通法が適用される私有地の例
道路交通法が適用されやすいのは、スーパーやショッピングセンターの駐車場で、出入口から車が行き来する通路、コインパーキング、通り抜けできる私道などです。
入口に門やゲートがなく、誰でも車で入って通り抜けられる状態なら、「道路」にあたる可能性が高いと考えてよいでしょう。
ただし、同じ駐車場の中でも、全体が車を止めるための場所と認められる駐車場で、区画線のない中央部分は駐車場を利用するための通路であり、「道路」にはあたらないと判断されています(最高裁昭和46年10月27日決定)。
出典元:仙台高等裁判所 昭和38年12月23日判決(裁判所)
出典元:最高裁判所 昭和46年10月27日決定(裁判所)
道路交通法が適用されない私有地の例
一方、自宅の敷地や車庫、月極駐車場、マンションの住民用駐車場、入るのに許可が必要な工場や会社の構内などは、道路交通法が適用されにくいとされます。
道路交通法が適用されない場所では、警察への報告義務、一時停止・速度などの交通ルール違反は基本的に問われません。
対象外となるのは道路交通法が定める義務と罰則だけで、次に挙げるような責任は道路交通法が適用されない私有地でも残ります。
- 相手方の車や物を壊したときの損害賠償(民法709条)
- 人を死傷させたときの過失運転致死傷罪などの刑事責任
- 道路外致死傷による運転免許の処分
月極駐車場でも、契約者以外の車が自由に出入りしていて、実際には誰でも通り抜けられる状態になっていれば「道路」にあたると判断される場合もあり、私有地への道路交通法の適用有無は、その場所の実際の利用実態を考慮して判断されます。
私有地の事故で警察を呼ばないと生じる不利益
私有地の事故で警察を呼ばなかった場合、交通事故証明書は発行されません。相手方との話し合いや保険金の請求をする際、事故があった事実や事故時の状況を自分で示す必要が出てきます。また事故の場所が「道路」と判断されれば、警察へ報告しなかったこと自体が罰則の対象にもなります。
交通事故証明書が発行されない
警察に届け出ていない事故には、交通事故証明書が発行されません。
交通事故証明書は、警察から提供された資料をもとに、自動車安全運転センターが交付する書面で、事故の日時・場所・当事者を証明します。
自動車安全運転センターは
警察への届出のない事故については交通事故証明書の発行はできません
と案内しています。
保険会社が保険金を支払う流れは、交通事故証明書で事故があった事実と事故に遭った当事者を確認した上で進みます。
私有地の事故で警察に届け出た際、交通事故証明書が発行されるかどうかは、警察が事故として扱うかどうかの判断次第です。県警の通達の中には、道路外で起きた事故も交通事故に含めると明示しているものもあり、警察に届け出れば交通事故証明書を作ってもらえる可能性はあります。逆に、届け出をしなければ、交通事故証明書が発行されることはありません。
警察に届け出た後で交通事故証明書を申請する方法は、次の記事で解説しています。
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保険金の請求で事故の説明を求められる
警察を呼ばなかった私有地の事故でも、自動車保険は使えます。ただし交通事故証明書がない分、保険会社から、事故があったことと事故の状況を示す書類や写真を求められます。
自動車保険の約款は、保険金請求をする際の必要書類として交通事故証明書を挙げていますが、提出できない相当な理由がある場合は除くとも定めています(三井ダイレクト損保の約款の例)。車両保険では交通事故証明書の代わりとして次のような書類と写真を出すよう定めています。
- 相手方の車とぶつかった事実を記した書類で、相手方の運転者か所有者の住所と記名があるもの
- 自分の車の壊れた部分の写真
- 相手方の車のぶつかった部分を示す写真や資料
人身事故で自賠責保険を請求するときは、人身事故の交通事故証明書が出ない理由を書く「人身事故証明書入手不能理由書」の提出が必要です。
損保ジャパンの様式には、理由の選択肢として「公道以外の場所(駐車場、私有地など)で発生した事故のため」が用意されています。
写真やドライブレコーダーの映像は自分で用意できますが、相手方の記名が必要となる書類もあります。
相手方が後になってから事故そのものや事故発生時の状況を否認してくると、保険会社による事故の確認には時間がかかるでしょう。
参考:約款のしおり(三井ダイレクト損保)
参考:自賠責保険 請求のご案内(損保ジャパン)
事故状況の記録が残らない
私有地で他の車とぶつかる事故に遭った際、警察を呼ばないままで別れると、どちらの車がどう動き、ぶつかったか、第三者の立場からの客観的な記録が残りません。
警察が現場に来ると、物損事故では事故の日時や当事者、車の壊れ具合などを記した「物件事故報告書」が、人身事故では現場を調べた結果をまとめた「実況見分調書」が作られます。
警察の記録がないと、過失割合の話し合いは、当事者の記憶と、自分で残した写真やドライブレコーダーの映像だけを頼りに進めることになります。事故の直後は自分の非を認めていた相手方が、保険会社が間に入ってから、自分の車は止まっていたと主張を変えることもあるでしょう。そうなったとき、事故の状況を示す材料が手元になければ、どちらの言い分が正しいかを確かめる手段がありません。
物件事故報告書は警察の内部の記録で、当事者が取り寄せるには手続きが必要です。それでも、警察に事故の記録が残っていれば、相手方が事故を否定したときの支えになるでしょう。
報告しないと罰則の対象になる
事故の場所が道路交通法の「道路」にあたる場合、警察に報告しなかった運転者は、3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金の対象になります(道路交通法119条1項17号)。
店の駐車場での物損事故のように、けが人がいない事故でも報告義務はあります。当事者どうしで話がついて別れた場合も、報告義務はなくなりません。
報告義務とは別に、相手方の車や物を壊したことに気づきながら、車を止めて危険を防ぐ措置をとらずに立ち去ると、当て逃げとして1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象になります(117条の5第1号)。人にけがをさせて救護せずに立ち去ると、ひき逃げ(救護義務違反)として10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(117条2項)。
私有地事故で警察を呼ばずに別れた場合に取るべき対応
私有地の事故で警察を呼ばず、すでに相手方と別れてしまったとしても、今から届け出ることはできます。
事故が起きた場所を管轄する警察署に届け出て、相手方と事故の内容を確かめ合い、自分の保険会社に連絡する順に進めましょう。けががあれば、人身事故として届け出ます。
最寄りの警察署に届け出る
警察を呼ばずに別れた事故は、事故が起きた場所を管轄する警察署に出向いて届け出ます。
兵庫県警察は、事故の届出をしていない人に向けて「これからでも結構ですから、事故発生地の警察署に届け出てください。相手の方と一緒に届出してください」と案内しています。
届出の期限を定めた公式の日数はありませんが、報告は本来「直ちに」行うものです。日がたつほど、事故があったことを確かめる手段が少なくなるため、気づいた時点ですぐに届け出ましょう。
警察署には、運転免許証、車検証、相手方の連絡先を控えたものと、撮っていれば現場の写真を持って行きます。
相手方と連絡を取って事故の内容を残す
警察への届出と並行して、相手方にも連絡し、事故の日時・場所・ぶつかった様子を、お互いに同じように理解しているか確かめます。
電話で話しただけでは、後で話の内容を否定されるおそれがあります。メールやメッセージアプリで次の内容を送り、相手方から内容を認める返信をもらっておきましょう。
- 事故の日時と場所(店の名前・駐車場のどのあたりか)
- お互いの車がどう動いていてぶつかったか
- お互いの車の壊れた部分
- 警察と保険会社に事故を届け出ること
相手方から返信が来たら、画面を保存しておきます。相手方と連絡がつかないときは、そのことも警察に伝えておきましょう。
自分の保険会社に連絡する
警察に届け出たら、日を置かずに、自分が加入している自動車保険の会社にも事故を連絡しましょう。
事故から日がたっていても、保険会社への連絡をあきらめる必要はありません。約款は事故を「直ちに」知らせるよう定めていますが、正当な理由なく連絡が遅れても、保険会社は遅れたことで生じた損害の分を保険金から差し引くと定めており、保険金がすべて支払われなくなるわけではありません(三井ダイレクト損保の約款の例)。
連絡するときは、警察を呼ばずに別れたこと、後から警察署に届け出たことを正直に伝えます。
相手方とのメッセージの記録や現場の写真があれば、保険会社に送れるよう用意しておきましょう。
けががあれば人身事故として届け出る
事故の後で首や腰に痛みが出てきたら、病院を受診して医師の診断書をもらい、警察署には人身事故として届け出ます。
兵庫県警察の案内によると、人身事故として扱ってもらうための手順は、診断書を持って事故の発生地を管轄する警察署の事故係へ申し出ることです。
人身事故として届け出ると、警察が事故の状況を調べ、実況見分調書などの記録を作ります。私有地の事故では人身事故の交通事故証明書が出ないこともありますが、その場合も自賠責保険は請求できます。
病院で治療を受けただけでは人身事故になりません。治療費や慰謝料の請求に関わるため、痛みに気づいたら早めに警察署へ届け出ましょう。
私有地で事故が起きたときの対応手順
事故の現場での取るべき対応は、私有地でも公道の事故と同じです。
けが人の救護を最優先にし、警察への届出、相手方の情報の確認、記録の保存、保険会社への連絡の順に進めます。
負傷者を救護する
事故が起きたら、まず車を止めてエンジンを切り、けが人がいないかを確かめます。
けが人がいれば、119番で救急車を呼び、救急車が来るまでの間、できる範囲で手当てをします。後ろから来る車にはねられないよう、けが人を安全な場所へ移すことも救護の一つです。
駐車場では、ほかの車が出入りし続けています。ハザードランプをつけ、周りの車に事故があったことを知らせて、二次事故を防ぎましょう。
警察に届け出る
けが人の救護をしたら、110番で警察に事故を届け出ます。
110番では、事故の場所(店の名前や住所)、けが人の有無、車が何台関わったかを伝えます。店の駐車場や私道でも、私有地だからと通報を控える必要はありません。警察が現場に来て、事故の場所が「道路」にあたるかどうかも含め、どう扱うかを判断します。
相手方から、警察を呼ばずに済ませて修理代は払うと持ちかけられても、その場で応じないようにしましょう。相手方が後で支払いを渋ったときに、事故があったことを示す記録がなくなります。
相手方の連絡先を確認する
警察を待つ間に、相手方の氏名・住所・電話番号、車のナンバー、加入している自動車保険の会社名を確認します。
運転免許証と自賠責保険の証明書を見せてもらい、写真に撮らせてもらうと、書き間違いを防げます。相手方の車が会社の車なら、会社名と連絡先も控えておきましょう。
その場で示談や支払いの約束はしません。自動車保険の約款には、加入者が保険会社に無断で相手方の賠償請求を認めてはいけないと定めているものがあります。事故の責任を口約束で認めると、後の過失割合の話し合いで不利になることがあります。
写真とドラレコの映像を残す
車を動かす前に、事故の現場をスマートフォンで撮影します。
撮っておきたいのは、2台の車の位置関係、それぞれの車の壊れた部分、駐車場の区画線や矢印、一時停止の表示、ブレーキの跡などです。少し離れた位置から全体を撮ったものと、壊れた部分に近づいて撮ったものの両方を残しましょう。
ドライブレコーダーを付けている車は、映像が上書きされないうちに保存します。録画を止めるか、SDカードを抜いておけば確実です。
相手方の車にもドライブレコーダーがあれば、映像を消さずに残しておいてほしいと頼んでおきます。
施設管理者に防犯カメラの映像保存を頼む
店やコインパーキングの駐車場で起きた事故は、施設の防犯カメラに事故の様子が映っていることがあります。
店の事務所や駐車場の管理会社に事故があったことを伝え、事故の日時と場所を示して、映像を消さずに保存してほしいと頼みましょう。車止めや壁など店の設備にぶつけた場合も、このときに伝えておきます。
防犯カメラの映像は、一定の期間が過ぎると上書きされるのが一般的です。映像を直接見せてもらえなくても、保存さえしてもらえれば、後で警察や弁護士を通じて確認を求められます。
保存を頼んだ日時と、対応してくれた人の名前を控えておくと、後のやり取りが進めやすくなります。
保険会社に連絡する
現場での対応が済んだら、自分の保険会社にも事故を伝えましょう。
保険を使うかどうかは、連絡した後で決めてかまいません。ソニー損保は、事故の連絡や相談をしただけでは等級(保険料の割引率を決める区分)に影響しないと案内しています。
けががなくても病院を受診する
事故の直後に痛みがなくても、その日か翌日のうちに病院を受診しておきましょう。
むちうちなどの症状は、事故から数日たって出てくることがあります。事故から時間がたってから受診すると、相手方の保険会社から、けがと事故との関係を疑われることがあります。
受診したら、医師に診断書を書いてもらいましょう。診断書は、人身事故の届出にも、治療費や慰謝料の請求にも使います。
私有地の事故でも自動車保険は使える
自動車保険は、日本国内で起きた事故であれば、道路か私有地かを問わず補償の対象です。私有地の事故でも、自賠責保険と任意保険をどちらも使えます。
自賠責保険(人身事故の場合)
私有地での事故で人にけがをさせた場合や、けがをさせられた場合は、自賠責保険を使えます。
自賠責保険の約款は、補償の対象を「日本国内」での自動車の「運行」(車を走らせるなど、本来の使い方で使うこと)によって他人の生命や身体を害した場合と定めています。道路かどうかの条件はないため、店の駐車場や自宅の敷地での事故も対象です。
自賠責保険が補償するのは、人のけがや死亡の損害だけです。車や物の損害は補償しません。また、補償を受けられるのは事故の相手方などの「他人」で、運転していた本人のけがは対象外です。
けがの損害には、治療費や休業損害、慰謝料などが含まれ、傷害による損害の上限は120万円です。
任意保険の対人・対物賠償・車両保険
任意保険の対人賠償・対物賠償・車両保険も、私有地の事故で使えます。
任意保険の約款は、対人賠償と対物賠償の対象を、契約している車の「所有、使用または管理に起因」する事故と定めています(三井ダイレクト損保の約款の例)。駐車場での接触も、損保各社のFAQで対物賠償や車両保険の対象として案内されています。
| 補償 | 私有地の事故で使う場面 |
|---|---|
| 対人賠償 | 相手方や歩行者にけがをさせ、自賠責保険の上限を超える賠償をするとき |
| 対物賠償 | 相手方の車や、店の壁・ポールなどを壊したとき |
| 車両保険 | 自分の車の修理代を、自分の車両保険で払うとき |
| 人身傷害保険 | 自分や同乗者のけがを、過失割合にかかわらず補償してもらうとき |
対物賠償には、自分や父母・配偶者・子の物を壊したときは補償しないという定めがあります。自宅の塀や車庫、配偶者や親の車に自分の車をぶつけた場合は、対物賠償は使えません。自分の車の修理は車両保険で補うことになります。
保険を使うと翌年の等級はダウン
私有地の事故でも、対人賠償・対物賠償・車両保険の保険金を受け取ると、翌年の契約の等級が原則として3等級下がります。
等級が下がると保険料の割引率が小さくなり、さらに事故があったことを示す「事故有係数」が3年間適用されて、保険料が上がります。
一方、人身傷害保険だけ、または弁護士費用特約だけを使った事故は「ノーカウント事故」として、等級は下がりません。
自宅の車庫で車をこすった、空き地のポールに当てたといった小さな事故では、修理代と、保険を使った場合に今後3年ほどで増える保険料を比べて、保険を使うかを決めましょう。保険会社に事故を連絡すれば、保険を使った場合の保険料の上がり方を試算してもらえます。
私有地の事故の過失割合
私有地の事故でも、過失割合は公道の事故と同じ考え方で決まります。損害保険会社は、過去の裁判例をもとにした基本の過失割合を出発点にし、事故ごとの事情で割合を修正します。
過失割合の考え方は公道の事故と変わらない
道路交通法が適用されない私有地でも、運転者には周りをよく見て安全に運転する注意義務があり、注意を怠った分が過失として損害賠償の割合に反映されます。損害賠償は民法709条に基づく民事の責任で、道路交通法が適用されるかどうかには左右されないためです。
過失割合を決めるのは、警察ではありません。愛知県警察は「警察が交通事故の示談に介入することはありません」と案内しています。過失割合は交通事故を起こした当事者どうしか、それぞれの保険会社が話し合って決まります。
駐車場の事故の基本の過失割合
私有地の事故でもっとも多い駐車場の事故には、場面ごとに基本の過失割合が示されています。損害保険会社の公式ページが示す割合は次のとおりです。
| 事故の場面 | 基本の過失割合 |
|---|---|
| 通路を進む車と、駐車区画から出る車 | 通路を進む車30:出る車70 |
| 通路を進む車と、駐車区画に入る車 | 通路を進む車80:入る車20 |
| 通路が交差する場所での出会い頭 | 50:50 |
| 駐車区画に止まっている車にぶつけた | ぶつけた車100:止まっている車0 |
| 通路を歩く歩行者と車 | 歩行者10:車90 |
駐車区画から出る車の過失が大きいのは、区画から出る車が、通路を進む車の通行を妨げないよう注意して出る立場にあるためです。
区画に入ろうとしている車との事故では、入る車の動きを予測して避けるべき通路の車の過失が大きく見られます。
基本の過失割合は、速度の出しすぎや前をよく見ていなかったなどの事情があれば、修正の対象です。駐車場の事故の場面ごとの過失割合と修正の考え方は、次の記事で解説しています。
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出典元:駐車場内で一方が駐車スペースから出る際の事故の過失割合(アクサ損害保険)
出典元:交通事故の過失割合(東京海上日動)
出典元:駐車場での事故の区分や対処の流れとは?(三井住友海上)
設備の欠陥が原因なら施設管理者にも責任を問える
駐車場の設備の欠陥が事故の原因になった場合は、駐車場を持つ店や管理会社などの施設管理者にも、損害賠償を求められることがあります。
根拠は、民法717条の「土地の工作物」の責任です。建物や塀、駐車場の設備のように土地に設置された物(工作物)の設置や管理に欠陥(瑕疵)があって、他人に損害が生じたときは、まず工作物を管理する占有者(店や管理会社など)が、占有者が損害を防ぐのに必要な注意をしていたときは所有者が、賠償の責任を負います。
駐車場で設備の欠陥が争われるのは、次のような場合です。
- コインパーキングのロック板(フラップ板)が故障していて、精算後も下がらなかった
- 照明が壊れたまま放置され、夜間に通路が見えなかった
- 通路の段差や穴が直されないまま残っていた
設備に欠陥のない事故では、責任を負うのは原則として事故の当事者で、施設管理者は責任を負いません。被害者が施設管理者に責任を求めるには、設備の欠陥と、欠陥が事故の原因になったことを示す必要があります。
相手方が事故の内容を認めない、過失割合で折り合わない、施設管理者にも責任を問えるか判断がつかない、といったときは、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。弁護士は、写真や映像、裁判例をもとに、相手方や施設管理者にどこまで請求できるかを見極め、交渉を代わりに進めます。
自分や同居の家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士に相談・依頼する費用を補償してもらえ、特約だけを使った事故は翌年の等級に影響しません。
注目!
私有地の事故を交通事故に強い弁護士に相談する
当サイトを見ても疑問が解決しない、状況が異なるので判断が難しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。
初回相談無料の弁護士も数多く掲載しておりますし、どの弁護士もいきなり料金が発生するということはありません。まずはお気軽にご相談ください。
私有地の事故でよくある質問
私有地の事故では、自分の車だけの事故や、警察の対応、違反点数、当て逃げで迷う人もいます。
自宅の敷地内で自分の車をぶつけた自損事故も届け出る?
自宅の敷地内で、自分の車を自宅の塀や車庫にぶつけただけの自損事故は、警察への報告義務はありません。
自分の車だけの事故は、約款上、交通事故証明書が保険金の請求書類に入っていません(三井ダイレクト損保の約款の例)。車両保険で直す場合は、保険会社に連絡し、指示どおりに写真などを出しましょう。
警察に民事不介入と言われたら?
警察が民事不介入というときは、過失割合や修理代の支払いなど、当事者どうしの損害賠償の話し合いには関わらないという意味です。事故の届出を受け付けないという意味ではありません。
事故があったことは警察署に届け出て記録してもらい、賠償の話し合いは保険会社や弁護士に相談しましょう。
私有地の事故でも違反点数は付く?
道路交通法の「道路」にあたる私有地での事故は、公道の事故と同じ扱いで、違反があれば違反点数が、人身事故なら付加点数が付きます。
道路にあたらない私有地で人を死傷させた事故は、違反点数には加算されず、前歴にもなりません。ただし「道路外致死傷」として、道路での事故に準じた免許の停止などの処分を受けることがあります(滋賀県警察の案内)。
私有地で当て逃げされたら?
店の駐車場などで止めていた車をぶつけられ、相手方が立ち去っていたら、すぐに警察に届け出ます。
店の防犯カメラに相手方の車が映っていることがあるので、店に映像の保存を頼みましょう。相手方が見つからない場合は、自分の車両保険(契約のタイプによります)で修理することになります。
当て逃げされたときの対処法と、相手方を探す方法は、次の記事で解説しています。
こちらも読まれています当て逃げされたらどうすればいい?対処法と泣き寝入り前にすべきこと 当て逃げされたら、修理費用の負担や本当にケガをしていないかなど、いろいろ不安になりますよね。当て逃げの被害に遭ってしまっ...この記事を読む
まとめ
私有地の事故でも、警察には届け出ておくのが原則です。店の駐車場や通り抜けできる私道は道路交通法の「道路」にあたることがあり、報告しなければ罰則の対象になります。「道路」にあたらない自宅の敷地でも、届け出ておけば事故があったことを示す材料が残ります。
警察を呼ばずに相手方と別れてしまっても、手遅れではありません。事故の場所を管轄する警察署に届け出て、相手方と事故の内容をメッセージで確かめ合い、自分の保険会社に連絡しましょう。自動車保険は私有地の事故でも使えます。交通事故証明書がない分、事故の状況を示す写真や記録をそろえておくことが、保険金の請求と過失割合の話し合いを進める力になります。
私有地の事故で困ったら交通事故に強い弁護士に相談する
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相手方が事故の内容を認めない、過失割合に納得できないといったときは、無料相談で見通しを確かめてみましょう。
交通事故に強い【おすすめ】の弁護士に相談
交通事故一人で悩まずご相談を
- 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない
- 交通事故を起こした相手や保険会社とのやりとりに疲れた
- 交通事故が原因のケガ治療を相談したい