当て逃げされたらどうすればいい?対処法と泣き寝入り前にすべきこと

当て逃げに遭った自動車

当て逃げとは

当て逃げとは、物損事故を起こしてしまったにも関わらず、警察への報告義務などを果たさずに、その場から立ち去ることを言います。

また、当て逃げは法律上の用語ではありません。

当て逃げとひき逃げの違い

当て逃げと似ている言葉にひき逃げがありますが、こちらも法律上の用語ではありません。

一般に、当て逃げとひき逃げの違いは、事故によってケガをした人がいるか否かです。

当て逃げは自動車同士の接触事故などで負傷者がいないケースに使われます。

ひき逃げは接触事故によって怪我人、死傷者がいる場合に使われる言葉です。

当て逃げでよくあるケース

当て逃げは駐車場や道路など、さまざまな場所で発生します。

駐車場での当て逃げ

駐車場に止める際、他の車両にぶつけてしまい、そのまま逃げてしまうケースがあります。

駐車場内の走行中でなくても、駐車スペースに車を止めてドアを開けた際、隣の車に傷をつけてしまい、そのまま立ち去ってしまうケースも珍しくありません。

特にぶつけた相手の車両が無人の場合、加害者側が「バレないだろう」と事故への関わりを避けるため逃げてしまうことがあるようです。

走行中に接触、そのまま逃げられた

走行中に車同士が接触し、そのまま走り去られてしまうケースもあります。

  • ささいな事故だから問題ないだろう
  • 車のキズがたいしたことなさそう
  • 飲酒して運転しているのがばれるとまずい

など、さまざまな理由から、逃走してしまうようです。

気づかないうちに当て逃げに遭っていた

自分が乗車していない時に当て逃げされていた場合、どこで当て逃げされたのか不明というケースもあります。

わかりにくい場所のキズだと、昼間明るいところで見てはじめて当て逃げに遭っていた事実に気づくこともあるでしょう。

当て逃げで問われる責任(処分)

当て逃げを起こした加害者には

  • 刑事責任
  • 行政責任
  • 民事責任

3つの責任に対して処分が行われます。

大した事故ではないと自己判断し、軽い気持ちで当て逃げをしてしまうと、思いのほか厳しい処分を受けることもあります。

刑事責任(処分)

道路交通法では「交通事故があったとき、その当事者は直ちに車両等の運転を停止し負傷者を救護・道路における危険を防止等必要な措置をとることと、警察に報告すること」を義務としています。(道路交通法72条第1項)

当て逃げをすると、たとえ軽微な事故であっても前述の危険防止措置義務と報告義務に違反していることになりますから、下記の処分に科される可能性があります。

  • 報告義務違反:3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金
  • 危険防止措置義務違反:1年以下の懲役または10万円以下の罰金

器物損壊罪にはならない

相手車両だけでなく、ガードレールなどを壊して立ち去った場合も当て逃げに該当します。

物を壊してしまった罪ですから、器物損壊罪になるのでは?と思われるかもしれません。

しかし当て逃げは通常、過失(故意による損壊ではない)と考えられるため、物を破壊する故意が成立要件となる器物損壊罪には該当しません。

行政責任(処分)

物損事故は通常、行政処分の対象ではありません。
そのため、違反点数は加算されず、免許停止や取り消しにもなりません。

しかし当て逃げに関しては7点(安全運転義務違反2点+危険防止措置義務違反5点)が加算されます。
いままで免許停止などの前歴のない場合でも30日の免許停止処分になります。

違反点数と点数ごとの処分内容について詳しくは下記の記事で解説しています。

民事責任(処分)

当て逃げは、行政責任と刑事責任に加えて、民事責任にも問われます。
民法で定められている損害賠償責任です。

これは、故意または過失によって相手に与えてしまった損害を賠償する義務です。
例えば相手の車両にキズをつけてしまった場合は修理費用を賠償する必要があります。

損害賠償の損害には、

  • 財産的損害(修理費用など)
  • 精神的損害(慰謝料)

物損事故では通常、財産的損害の賠償責任のみ問われます。

ただし、積荷の破損や事故の影響の実際をふまえ、慰謝料が支払われるケースも稀にあります。

交通事故による自動車の修理代の請求については下記の記事も参考にしてください。

当て逃げ事件の問題解決の流れ

当て逃げをされてしまったら、軽微な事故でもきちんと対処をしましょう。

相手が特定できれば、修理費などを請求できます。

警察への連絡

当て逃げされたら、警察へ届け出をします。

警察に報告しないと相手を検挙することができません。

また、事故証明書を作成してもらうためにも警察への連絡は不可欠です。

事故証明書は保険会社へ保険金を請求する際などに使用します。

当て逃げした相手方の情報を確認

当て逃げをした相手についてわかっていることがあれば、忘れないようにメモをするなどして記録しておきます。
車種やナンバー等がわかればよいですが、もしわからなくても車両の大きさや色、運転手や同乗者の性別や特徴なども書き留めます。

ドライブレコーダーを搭載している場合は、録画された画面を確認します。

駐車場での当て逃げの場合は防犯カメラを確認してもらうなど、駐車場を管理している管理人や店舗などに協力を求めましょう。

目撃者がいないかも確認し、見つかった場合は状況を聞き、氏名や連絡先を確認しておきます。

証拠の確保

当て逃げに遭ってしまった後は、その証拠を確保しましょう。次のようなものが証拠になり得ます。

  • ドライブレコーダーの画像 … 上書きや消去されないように保存します。
  • 被害状況の写真や動画 … スマートフォンなどで被害の状況を記録します
  • 防犯カメラなどの映像 … 駐車場や街頭の監視カメラ、防犯カメラの映像があれば確認します
  • 目撃者 … 事故現場の目撃者がいる場合、後日証言してもらえるか交渉します

保険会社への連絡

相手や相手の保険会社が不明な場合や、保険を使うか決めかねている場合でも、自身の加入している保険会社へは、連絡をしましょう。

保険を使用すると保険の等級がダウンしてしまうので、保険会社へ連絡しないほうがよいのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし連絡するだけで等級がダウンすることはありませんので、保険会社へ補償内容についてよく確認しましょう。

ケガがある場合は病院の診断を受ける

当て逃げ事故によってケガをした場合は、必ず病院へ行きましょう。

当日は軽いと思っていたケガでもあとで後遺症などが出る場合もありますし、当日はあわてていて、ケガの程度を自覚しにくい場合もあります。

また、ケガを負った場合は、物損事故ではなく人身事故になります。

当て逃げではなくひき逃げとして扱われますから、加害者へ科される刑事罰や行政罰、損害賠償請求額も大きくなります。

当て逃げからひき逃げへの切り替え

ケガをしていることに気づいたら医師に診断書作成を依頼し、警察へ届けることで物損事故から人身事故への切り替えを行います。

警察は人身事故などの重要性の高い事故に関しては、より力を入れて捜査する傾向があり、検挙率も高いですから、当て逃げよりも検挙される可能性が高まります。

当て逃げの犯人が見つかった場合

当て逃げした相手が見つかった場合は、示談交渉をして損害賠償請求を行います。

損害賠償をめぐる示談交渉に

物損事故では相手の加入している保険の対物賠償責任保険が適用されるため、基本的には相手側の保険会社との交渉になります。

当て逃げ事件の損害賠償で請求できる項目

当て逃げの被害で請求できる項目は次のようなものです。

  • 車両の修理費用または買い替え費用
  • 代車費用
  • 積み荷などの損害
  • レッカー代

物損事故のため、慰謝料は基本的には支払われません。

当て逃げに対する損害賠償請求の時効

当て逃げによる損害賠償の時効については、不法行為に基づく損害賠償請求権の時効を民法は下記のように定めています。

  • 不法行為(当て逃げ)の時から20年間
  • 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者(当て逃げした犯人)を知った時から3年間

このことから、相手が見つからない場合の時効は20年間と考えられます。

当て逃げされてもなかなか相手がみつからない場合でも、20年間は損害賠償請求できることは覚えておくといいでしょう。

ただし、当然ですが、時間が経てば経つほど加害者の捜索は困難になります。

当て逃げ事故の被害を把握した時点で速やかに対応を進めることが重要です。

当て逃げで泣き寝入り前にすべきこと

当て逃げ事件は、ひき逃げ事件に比べて検挙率が低く、相手を特定できずに泣き寝入りになってしまうことも少なくありません。

それでは、当て逃げ被害にあってしまった際に、すべきこととは何でしょうか。

物損だけでも警察にしっかり届け出る

物損事故については、警察へ届けるわずらわしさや時間がないなどの理由で届け出をためらうこともあるでしょう。

しかし、車両が見た目以上にダメージを負っている場合もありますし、あとになってケガをしていることが判明することも考えられます。

物損だけでも、事故後は速やかに警察に届け出ることが大切です。
あとでケガをしていることが分かった場合は医師に診断書作成を依頼して、人身事故へ切り替えることも重要なポイントです。

写真や動画の証拠を確保する

写真や動画は客観的な証拠として非常に役立ちます。

ドライブレコーダーや防犯カメラの映像などでナンバーが確認できれば検挙に役立つ重要な証拠となります。

弁護士に相談する

当て逃げにあってしまった際に、示談交渉をするなら、弁護士に相談することも検討しましょう。

特にはじめは物損事故だと思っていても、後になってケガの症状が出てきいたようなケースでは、事故の扱いは人身事故となります。

人身事故の場合は、弁護士に相談することで請求できる慰謝料の基準が上がり、損害賠償金額も大きくなります。

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当て逃げの犯人が見つからない場合

当て逃げの犯人が特定できない場合、また、特定に時間がかかっている場合に、損傷した車両をそのままにしておくことはできません。

それでは車両の修理費用はどうしたらよいのでしょうか。

保険会社の補償を利用する

当て逃げの犯人が見つからない場合は、

  • 自費で修理を行う
  • 自身の加入している保険会社の車両保険を利用する

いずれかの方法で対応することになります。

ただし、車両保険の種類によっては当て逃げのケースでの利用はできない場合や、免責金額が設けられていて補償対象にならないケースもあります。

さらに、翌年度の保険等級が3段階下がってしまうケースが多いため、保険料の負担と比較して慎重に検討する必要があります。

負傷者がいる場合は政府保障事業の保障を受けられる場合も

交通事故の相手方が無保険の場合に利用できる政府保障事業ですが、物損事故である当て逃げでは対象にならず、利用できません。

ただし、あとでケガが判明した場合など、負傷者がいるケースでは保障を受けられる可能性があります。

まとめ

当て逃げの被害にあってしまっても、すぐに泣き寝入りする必要はありません。

警察へ報告し、まずは相手の特定を目指しましょう。保険会社へ連絡することや、ケガがわかった時点で病院を受診することも重要です。

当て逃げ被害についてお困りの際は、弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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