交通事故の通院をやめるタイミング。いつまで続けるか判断の目安

通院をやめようとする患者とNGを出す女医

交通事故に遭った場合、通院をやめるタイミングはどう判断すればいいのでしょうか?
交通事故の怪我での通院をいつまで続けるべきかは、被害者の症状の回復、治療の進捗によって異なります。治療中なのに自己判断で、あるいは医師ではなく保険会社の言いなりになって通院を勝手にやめてしまうと、被害者にとって大きな不利益になる場合があります。

この記事では、交通事故の通院をやめるタイミングについて、一般的な判断基準や目安、交通事故の怪我治療を進める上での注意点などを解説します。被害に合った適正な慰謝料・治療費を獲得するためにも、交通事故の通院に関する正しい知識を身につけましょう。

交通事故の通院はいつまで続ける?

交通事故に遭った場合、通院をいつまで続けるべきかには、明確なタイミングがあります。
通院を終了するのは、医師から完治または症状固定を言い渡された時です。

通院終了のタイミングは完治または症状固定したら

通院は、治療の必要性や効果に応じて行うものです。したがって、通院を終了するタイミングは、完治または症状固定したらというのが一般的な基準です。
完治とは、怪我が回復し事故前と同じ状態に回復した状態を意味します。症状固定とは、怪我の影響が治りきらず、治療を続けても症状が変わらない状態を指します。
交通事故で怪我をした部位が完治または症状固定の状態になったことを医師から告げられたら、通院をやめても問題ありません。

交通事故の通院の終了は誰が判断する?

完治・症状固定で治療終了の判断は医師が行う

通院の終了は、完治・症状固定で治療終了の判断は医師が行います。医師は、患者の症状や治療の経過を診察した上で、最終的には完治または治療終了の診断書を発行します。
診断書には、診断名、治療終了の日付や理由、後遺症の有無や今後の見立てなどが記載されます。

医師が作成した診断書は、保険会社との交渉や裁判で、交通事故の被害を証明する重要な証拠になります。
診断書の内容を実際の被害と正しく合ったものにするためにも、通院の終了は痛みがなくなったからと自己破断するのではなく、医師の判断に従って決定するのがベストです。

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交通事故の通院の終了時期の目安

交通事故による通院の終了時期は、怪我の内容や重症度、回復の具合など、人によって大きな個人差があります。

ただし、交通事故の怪我として代表的な以下の3つの症状については、治療期間の目安とみなされている数字があります。

打撲の通院期間の目安:治療開始から1ヶ月程度

打撲の場合、通院期間はおおよそ1カ月とみなされるのが標準的です。

打撲は交通事故における最も軽く、一般的な怪我の症状です。交通事故の衝撃で身体を自動車のハンドルや扉にぶつけた、二輪等で転倒して地面に打ち付けた場合などのケースがあり得ます。
頭部・頸部の強打や骨折などもない単純な打撲・打ち身であれば、痛みや腫れが治まれば完治となります。

むちうちの通院期間の目安:治療開始から3ヶ月程度

むちうちの場合、通院期間は3カ月程度と言われています。

むちうち(むち打ち症)という呼び方は頸部(首)外傷全般を指す総称・通称であり、医学的な傷病名ではありません。
正式名称としては、最も多い一般的なもので外傷性頚部症候群(頚椎捻挫・頚部挫傷)、重症度の高いものでは神経根症(頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症性神経根症)、脊髄損傷などもむち打ちで起こる具体的症例に含まれます。

被害の大きいむちうちの場合、後遺障害として完治せずしびれや痛みの症状が残るケースもあり、実際には必ずしも3カ月でむちうちの症状が完全に回復・緩和するとは限りません。

骨折の通院期間の目安:治療開始から6ヶ月程度

骨折の場合の通院期間は6カ月程度が目安とされています。

骨折というと指や脚の骨折をイメージするのが一般的ですが、交通事故の場合、その衝撃の大きさから鎖骨・肩甲骨・胸骨・肋骨・骨盤・大腿骨、頭の骨など、細かく治りづらい骨や太く大きい骨を骨折してしまうことも多々あります。
そのため、6カ月程度、打撲やむちうちよりも長い期間が治療期間の目安とみなされています。

保険会社による治療期間の目安「DMK136」

上に上げた交通事故による打撲・むちうち・骨折の治療期間の目安は、すべて保険会社が設定しているものです。打撲・むちうち・骨折3つの治療期間の目安を指して「DMK136」と呼ばれます。Dが打撲のD・MがむちうちのM・Kが骨折のK、136がそれぞれの治療期間を表す数字です。

治療期間の長さは、交通事故に遭った場合の入通院慰謝料にストレートに影響していきます。保険会社の立場からすれば、治療期間はなるべく短い方が入通院慰謝料の支払いは抑えられ、同じ症状なら同じ程度の慰謝料金額で対応できた方が業務上の処理も一律にできてシンプルです。そうした保険会社側のニーズ・必要から、交通事故の主たる症状である打撲・むちうち・骨折に対して治療期間目安を定めたものがDMK136です。

DMK136はあくまで一般的な目安ですが、怪我の重症度や回復の進みなどの違いもあり、実際の治療期間には個人差があります。
怪我の状況に合った最適な入通院慰謝料を請求するには、目安であるDMK136に縛られず、医師の指示に従って通院を続けることが大切です。

交通事故の通院費の負担が苦しい場合

交通事故に遭った被害者の治療費や通院費は、加害者が加入する保険会社が直接負担するのが通常です。
加害者側の任意保険会社は、病院に対して被害者の治療費・通院費を立て替えて支払い、追って保険会社が自賠責保険に対して自賠責が支払う分の保険金を請求します。
この仕組みのことを任意一括対応と言い、任意保険会社が治療費・通院費の立て替え払い・自賠責保険への請求を代行することから、被害者は治療費の負担を気にすることなく事故の怪我の治療・回復に専念できます。

ただし、

  • 保険会社が任意一括対応に応じない
  • 加害者・相手方保険会社との示談交渉が長引いた
  • 保険会社が治療費を打ち切ってきた

などのケースでは、治療費・通院費は被害者の自己負担となる場合があります。
怪我の具合が悪く働けない状態だったりすると、通院費の負担は被害者の生活の大きな負担となり、経済的に困難な状況に陥ります。

交通事故の通院費の負担が苦しい場合に取れる方法としては以下のものが上げられます。

加害者側の任意保険会社と内払金の交渉をする

慰謝料の支払いにも時間がかかっており、通院費の負担から経済的に苦しい場合は、加害者側の任意保険会社と内払金について交渉することができます。
内払金とは、被害者側の経済的事情をふまえた要望に応じて、加害者側保険会社が通院費・治療費を含む慰謝料・損害賠償金の一部を先払いすることを指します。

内払金が支払われるかは任意保険会社の判断次第

内払金の支払いを認めるかどうかは、任意保険会社側の判断次第となります。また、内払金は、すでに発生した損害額の範囲で支払われるのが一般的です。
たとえば事故直後から発生している治療費・通院費、交通事故の影響で仕事を休んだことにともなう休業損害などが上げられ、費目ごとに損害の発生を証明する書類等の提出が必要です。

内払金の請求は、任意保険会社側で独自の定めがない限り、請求できる回数の制限はありません。請求できる金額は、最終的に支払われる慰謝料・損害賠償金の全額を天井として、保険会社ごとのルールで別途、内払い金としての支払い金額上限を設けているケースもあります。請求が認められた場合、1週間~1カ月程度の間で支払われます。

自賠責保険に仮渡金を請求する

加害者が加入する任意保険会社に請求する内払金の他には、加害者側の自賠責保険会社に請求する仮渡金があります。

仮渡金は、自動車に乗る人が法律で強制加入となる自賠責保険の制度で、怪我の状態によって金額も4種類と決められています。

仮渡金制度の請求金額
金額 対象
290万円 死亡者
40万円
  • 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有する場合
  • 上腕または前腕骨折で合併症を有する場合
  • 大腿または下腿の骨折
  • 内臓破裂で腹膜炎を起こした場合
  • 14日以上入院を要する傷害で30日以上の医師の治療が必要な場合
20万円
  • 脊柱の骨折
  • 上腕または前腕の骨折
  • 内臓破裂
  • 入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を必要とする場合
  • 14日以上の入院を必要とする場合
5万円 11日以上の医師の治療を要する場合

仮渡金の請求に必要な書類

  • 仮渡金支払請求書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 医師の診断書または死体検案書
  • 請求者の印鑑証明
  • 委任状および委任者の印鑑証明(請求権者が複数いる場合)
  • 戸籍謄本(死亡事故の場合)

仮渡金を請求できるのはひとつの事故に対して1回だけ、請求から1週間後あたりまでに振り込まれます。
仮渡金制度は強制保険である自賠責保険の中の制度のため、加害者の運転する車が任意保険に加入していなかった場合にも利用することができます。

仮渡金はもらいすぎたら返済が必要

なお、最終的な損害賠償金額が仮渡金を下回る場合、仮渡金の支給でもらいすぎた分の金額は自賠責保険に返済することになります。
ただし、仮渡金は自賠責保険が定める制度で、あくまで最低限の補償にとどまります。
加害者および任意保険会社に請求できる慰謝料・損害賠償金総額に比べれば、通常はかなり低額にあたります。示談交渉成立後には、自賠責保険から受けた仮渡金を差し引いた金額が振り込まれるケースが大半でしょう。

交通事故の通院を勝手にやめるデメリット

交通事故の通院をやめるのは医師から完治または治療終了を告げられたタイミングです。
医師からの指示でもなく、勝手に治療をやめてしまうと、怪我の回復の進捗に悪影響を及ぼすおそれがあるのは当然のこととして、他にも以下のようなデメリットを受けるおそれがあります。

通院停止後の治療費は請求できなくなる

通院をやめてしまうと、当然ですが治療が途絶えてしまうため、治療が不十分な場合、症状が悪化してしまう可能性があります。
自己判断で治療をやめてしまった場合、保険会社からすれば、通院停止後の治療費については被害者本人の責任で、事故との因果関係がないと主張することができます。
通院をやめた後に症状が悪化してから通院を再開しても、この因果関係の不存在をタテに、保険会社から追加の治療費支払いを拒否、請求できなくなるおそれがあります。

慰謝料を満額もらえなくなる

慰謝料は、被害者が受けた精神的な苦痛に対する補償で、その金額には、通院回数や治療期間も大きく影響します。
そのため、自己判断で通院をやめると、その時点で交通事故の怪我による治療は終了とみなされ、慰謝料の額が減額される可能性があります。

また、通院をやめることで、事故発生後の継続的な回復経過を追えなくなり、慰謝料請求に必要な事故の影響期間の立証が困難となる可能性もあります。

適切な後遺障害等級認定を受けづらくなる

後遺障害等級認定とは、交通事故で受けた怪我の影響が完治せず身体に残った後遺症の程度を、自賠責損害調査事務所が審査・認定し、等級によって評価する制度です。加害者に対して後遺障害慰謝料を請求するには、単に後遺症が残ったと主張するだけで認められることはありません。後遺障害等級の認定が必ず必要となります。

通院を途中でやめてしまうと、後遺症の診断や治療の経過が不明確になり、継続的な回復過程を確認・把握できなくなることから、適切な後遺障害等級認定を受けづらくなる可能性があります。

保険会社が治療費の打ち切りを言ってきたら

保険会社は、医師による治療が継続していても、自社が想定する治療期間の目安を超過したことを理由に、治療費の支払い打ち切りを通告してくることがあります。

保険会社は、自分たちの利益を守るために、治療費の支払いを渋ることがあります。
保険会社は、治療費の負担を抑える意図から、怪我症状ごとの治療期間の目安を自社として持っています。実際の怪我の具合がどのような状態であれ、この治療期間の目安を越えると、ある種、機械的に治療費の支払い停止を言い渡してくるのです。
また、過剰診療(事故に関係のない治療を行っている)・漫然治療(回復に寄与するわけでもない通院・治療を続けている)の疑いなどを理由に、治療費打ち切りを通告してくるケースもあります。

しかし、こうした保険会社による治療停止の判断は、必ずしも正しいとは限りません。

医師が治療終了しない限りは治療を継続する

保険会社が治療費の打ち切りを言ってきたとしても、医師が治療終了しない限りは治療を継続することが重要です。

医師は、被害者の症状や治療の必要性を最もよく把握している専門家です。医師が治療の継続を勧める以上、被害者はその指示に従って通院を続けるべきです。保険会社は、医師の判断に反することはできません。

もし保険会社が治療費の支払いを拒否したり、減額を求めてきた場合は、弁護士への相談をご検討ください。
弁護士は、被害者の権利を守るために、医師と連携して保険会社との交渉を行います。適切な支払いに応じない場合は訴訟等の対応を取ることも可能です。

立替払いも厳しい場合は健康保険・労災保険の活用を

保険会社から治療費を打ち切られた後も治療を継続する場合、費用は自己負担で立て替える形で治療を続ける必要があります。
内払金・仮渡金など損害賠償金の前払いの仕組みを活用した上で、なお立替払いが厳しい場合は、私達が通常病院等へかかる際に使っている健康保険や、労災保険を活用して治療することもできます。

健康保険を使った交通事故の怪我治療の特徴と注意点

健康保険は、治療費の7割を負担してくれるので、自己負担分3割のみの支払いで済みます。(高齢者や母子家庭等の場合は自己負担分1~2割)
健康保険は交通事故による怪我でも利用することができますが、健康保険機関に「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。健康保険機関は提出された「第三者行為による傷病届」の内容に基づき、被害者の怪我治療によって発生した健康保険負担分の金額を、加害者に請求することになっています。

労災保険を使った交通事故の怪我治療の特徴と注意点

また業務中の事故による怪我であれば、労災保険による治療に切り替えることで、労災病院や労災指定医療機関にて無償で治療を受けることも可能です。
就業中の交通事故による怪我に対して労災を利用する際は、労働基準監督署への届出等を含む会社側の対応も必要となります。
治療費打ち切り後でも費用ゼロで治療を受けられるなど労働者にとってのメリットが多い手続きではありますが、その手続きの複雑さなどを嫌う会社側が労災申請そのものを受け付けないケースもままあります。
万一、会社側に労災申請を拒否された場合は、事故の補償に関してとあわせて弁護士に相談することをおすすめします。

通院が増えると慰謝料も増える?

交通事故で怪我を追った場合、通院が増えると慰謝料も増えると言われることがありますが、これは本当でしょうか?

実際には、慰謝料の額に通院日数が影響するのは事実であるものの、通院日数に応じて単純に増えていくわけではありません。

計算上、通院日数に応じて慰謝料が増えるわけではない

通院日数と慰謝料の金額の関係については、自賠責保険基準の入通院慰謝料の計算式で考えると把握しやすいです。

自賠責基準における入通院慰謝料は以下の計算式で算出します。

  • 日額4300円×入通院日数
  • 入通院日数 = 治療期間(治療開始から治療終了までの日数) または 実治療日数 x 2 どちらか短い方

「実治療日数(実際に治療を受けた日数)」という項目が通院日数に当たります。
自賠責基準の計算式では、治療機関 か 実治療日数x2 のうち、いずれか短い方の数字を入通院日数として採用されます。

自賠責保険の入通院慰謝料と通院日数の関係

たとえば、治療期間が60日、実治療日数が20日だった場合、治療期間:60日 実治療日数x2:40日となるため、短い方 実治療日数x2:40日が入通院日数として採用されます。
一方、治療期間が30日、実治療日数が20日と1月の間で集中して治療に通っていた場合、治療期間:30日 実治療日数x2:40日 となり、短い方として治療期間:30日が入通院日数として採用されます。

このように、ただやみくもに治療日数が多ければ入通院慰謝料が相応に増えていくわけではありません。
もちろん怪我の治療に対して適切な通院日数は必要ですが、実際の治療状況に応じて慰謝料金額は調整されていきます。
この点は、総額の高低こそあるものの、自賠責基準以外の慰謝料計算基準である任意保険基準・弁護士基準についても同様のことが言えます。

ムダな通院は過剰診療・漫然治療のリスク

慰謝料請求に有利だろうという誤解からムダな通院を繰り返した場合、かえって相手方保険会社から、過剰診療や漫然治療を疑われるリスクがあります。
過剰診療や漫然治療とは、治療の必要性や効果がないにもかかわらず続けた通院を指します。保険会社から過剰診療・漫然治療と判断された場合、該当する治療行為に対する治療費や入通院慰謝料の請求は、保険会社によって否定される可能性があります。ムダな通院は、被害者にとって不利益になり得るのです。

まとめ

交通事故の通院は、医師の判断で、完治または症状固定・治療終了を言われたタイミングで終了するのが通常です。
通院の終了時期の目安は、症状や部位によって異なりますが、任意保険会社が定めた一般的な目安としてDMK136というものが存在します。

保険会社から治療費の打ち切りを通告され、通院費の負担が苦しいからと通院を自己判断でやめてしまうと、治療費や慰謝料の請求が困難になる可能性があります。
治療費の打ち切り後、費用負担が苦しい場合は、内払金・仮渡金などの仕組みで損害賠償金の前払いを要求することも可能です。

被害に合った適正な慰謝料・治療費を獲得したいなら弁護士に相談を

交通事故に精通した弁護士であれば、示談交渉のプロフェッショナルである保険会社と対応に渡り合うことができます。
大きな怪我の場合は医師との連携・情報共有も図りながら、法的知識のないご相談者が本来持つ被害者としての権利を守り、最大限の利益を獲得できるようサポートしてくれます。

交通事故の怪我の治療による病院への通院や治療に関して困った場合や、加害者や保険会社との示談交渉で被害に合った適正な慰謝料・治療費を獲得したい場合は、交通事故に強い弁護士への相談をご検討ください。

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