交通事故で骨折したケースの慰謝料はいくら?過去の判例を元に解説
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交通事故弁護士相談広場編集部
交通事故に遭うと、さまざまな部位を骨折するケースがあります。まずは整形外科や脳神経外科に通院して治療を受けましょう。症状固定したら後遺障害認定を受けて弁護士に示談交渉を依頼すると、高額な弁護士基準が適用されて慰謝料が増額されやすいです。交通事故で骨折したら、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。
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交通事故でよくある骨折のパターン
交通事故に遭うと、被害者が骨折してしまうケースが多いです。具体的にどのような骨折が起こりやすいのか、まずは骨折の種類をみてみましょう。
鎖骨骨折
交通事故では、鎖骨を骨折することが多いです。鎖骨は比較的もろく、折れやすい骨だからです。事故の衝撃で肩関節の周辺に強い衝撃を受けると、鎖骨にヒビが入ったり折れたりします。
上腕骨の骨折
上腕の骨の中でも肩関節と肘関節をつないでいる骨を「上腕骨」と言いますが、交通事故では、上腕骨を骨折することもよくあります。肩関節に近い側を骨折することを「上腕骨近位端骨折」と言い、骨の中央付近を骨折することを「上腕骨骨幹部骨折」と言います。肩を強く打った場合や、転倒して手や肘をついて上腕骨に衝撃が加わった際に、上腕コツが折れたりヒビが入ったりします。
肘頭骨折
交通事故で転倒すると、肘頭に衝撃が伝わり骨折することがあります。粉砕骨折になって重傷化する例も多いです。
大腿骨の骨折
交通事故が原因で「大腿骨」を骨折するケースも多いです。大腿骨とは、脚の股関節から膝へとつながる骨です。大腿骨の中央部分である骨幹部が折れてしまうことを、「大腿骨骨幹部骨折」と言いますが、この場合、神経や血管も損傷を受ける例もあります
足関節骨折
たとえば足首や膝関節など、脚の関節部分に骨折を生じる例も多いです。一緒に靱帯を損傷することも多く、関節を動かしにくくなる後遺障害が残る可能性があるパターンです。また、骨の転移(ずれ)が大きいケースなどでは、変形障害が残ってしまうこともあります。
肋骨骨折
交通事故が原因で、肋骨を骨折する事例も多いです。歩行中に車に接触されて体幹に衝撃を受けたときに肋骨が折れる例もありますし、乗車中、バイクなどの交通事故で肋骨にヒビが入ったり折れたりすることもあります。
頸椎骨折
首の骨である「頸椎」を骨折してしまうケースもあります。追突事故などの場合には、頸椎に衝撃を受けても骨折にまでいたらず「頸椎捻挫(むちうち)」になることが多いですが、歩行中や自転車に乗っていて車に接触されるなど、より頸椎にかかる衝撃が強ければ、頸椎を骨折してしまいます。頸椎には神経が通っているので、頸椎骨折をすると神経障害が残る可能性が高まります。
鼻骨骨折
交通事故で顔面部に損傷を受けると、鼻骨を骨折してしまうケースがあります。その場合、手術をしても完全には元に戻らず、鼻の欠損障害、嗅覚障害や外貌醜状などの後遺障害が残る可能性があります。
頭蓋骨骨折
交通事故で頭部を強く打ったケースでは、頭蓋骨を骨折する事例も多いです。頭蓋骨骨折の典型例としては、頭蓋円蓋部骨折と頭蓋低骨折があります。頭蓋円蓋部骨折は、頭蓋骨の上の球の部分の骨を損傷する骨折です。線状骨折と言って頭蓋骨に線状のヒビが入る骨折と、陥没骨折と言って頭蓋骨がへこんでしまう骨折があります。頭蓋底骨折は、頭蓋の下にある骨が骨折する症状です。
頭蓋骨骨折すると、脳脊髄液減少症やびまん性軸索損傷などの難しい症状が出てしまったりすることも多く、高次脳機能障害になって脳の認知機能が低下してしまうなど、深刻な後遺障害が残りやすいです。
他にもいろいろな骨折のパターンがありますが、まずは上記のような例を押さえておきましょう。詳細については、かかっている医師に説明を求めると良いです。
交通事故で骨折したとき通院すべき病院は?
骨折したら、すぐに病院に通院する必要があります。そのとき、どこの病院に行けば良いのか悩んでしまわれる方が多いので、ご説明します。
基本は整形外科
骨折したときにかかる病院は、基本的に整形外科です。たとえば腕や脚、肋骨などの体幹骨を骨折したときには、すべて整形外科の担当です。骨折だけではなく、むちうちや捻挫などの場合にも整形外科で治療を受けられるので、交通事故に遭ったら、まずは整形外科に行きましょう。
脳神経外科
骨折の中でも頭蓋骨骨折の場合には、脳神経外科に行くべきです。頭蓋骨を骨折すると、脳や神経にダメージを受ける可能性が高いからです。脳神経外科に行くと、脳のCTやMRIなどを撮影して、脳内出血や脳萎縮などの異常を正確に把握することができるので、適切な治療を受けやすくなります。
また、頸椎や背骨などを骨折したときにも、脳神経外科の受診が必要になるケースがあります。これらの骨には神経が通っており、骨折によって神経を損傷することがあるためです。
迷っても病院に行く
交通事故に遭ったとき、どこの病院に行って良いのかわからないので病院に行かない人がいますが、その判断はNGです。交通事故に遭ったら、間違っていても良いので、病院に行くべきです。もし間違った診療科に行ってしまったら、通院先から適切な診療科を紹介してもらえます。また、大きな総合病院であれば、いろいろと精密検査を受けて適切な診療科に回してもらうことも可能です。
骨折したときにはたいてい整形外科の範疇になることが多いので、迷ったときにはとりあえず整形外科に行ってみると良いでしょう。
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交通事故で骨折したときに通院する際の注意点
交通事故で骨折したとき、通院の際にいくつか注意点があります。
まずは病院を受診する
交通事故で骨折をしたとき、重傷であれば何もしなくても病院に行くでしょうけれど、軽傷の場合、放置する方がおられます。とくに、ヒビが入った程度の場合、「少し痛い気がする」と思っても「病院に行くほどではない」と考える方がおられますし、症状を自覚しない方もおられます。
このようなケースでも、実際には身体の中で異変が起きていて、初動が遅くなったために後遺障害が残る例もあるので、必ず病院に行くべきです。たとえ軽傷であっても、交通事故でケガをした以上は通院して治療を受け、加害者に対して必要な慰謝料やその他の損害賠償を求めるべきだからです。
途中で通院を辞めない
交通事故後、通院するときには、自己判断により、途中で通院を辞めてしまわないことも大切です。忙しい方などの場合には、ある程度状態が良くなってくると病院に行かなくなってしまう方がおられます。また、骨折して6か月くらい通院を続けると、加害者の保険会社から「もうこれ以上通院の必要はない」などと、通院を辞めるように言われてしまうケースもあります。
しかし、交通事故後の通院は、医師が「完治」か「症状固定」と判断するまで継続する必要があります。完治とは、症状が完全に治ること、症状固定とは、それ以上治療を継続しても症状が改善しなくなった状態になったことを意味します。途中で通院を辞めると、本来必要な治療を受けられないので後遺症が残ってしまう可能性も高まりますし、損害賠償金のうち「入通院慰謝料」を減らされてしまうので、被害者にとっては不利益しかありません。交通事故では、通院にかかった治療費は相手に支払ってもらえるのですから、途中で通院を辞める理由は全くありません。
「治療費を打ち切る」と言われた場合の対処方法
ただ、被害者としては通院を継続したいと思っても、加害者の保険会社が治療費を打ち切ってしまう場合があります。このようなときには「自由診療」が適用されて、被害者に過大な負担がかかるので、治療を続けられなくなってしまうのです。
しかし、通院を辞めるべきではありません。治療費を打ち切られた場合にも、健康保険や労災保険を使って治療を継続できるからです。健康保険で負担した自己負担分(一般的には3割分)は後に示談するときに相手に請求できるので、領収証などを保管しておきましょう。
骨折の治療方法
次に、骨折の一般的な治療方法をご紹介します。
保存療法
骨折には、保存療法と外科手術の2種類の治療方法があります。保存療法は、ギプス固定などをして、そのまま様子をみる方法です。比較的骨折の程度が軽い場合に採用されます。数週間~数か月間安静にしますが、長期間固定しすぎると関節が固まってしまうので、できるだけ早めにリハビリを開始して元に戻していきます。
外科手術
粉砕骨折や内出血が起こっている場合など、重傷の場合には外科手術を行います。保存療法を実施してみたけれども効果がない場合に外科手術を適用するケースもあります。外科手術をするときには、タイミングや執刀医の腕など、いろいろと検討すべき要素があるので、迷ったときには医師や弁護士に相談すると良いでしょう。
骨折で認められる後遺障害
交通事故で骨折すると、さまざまな後遺障害が残る可能性があります。代表的な後遺障害は、以下の5つです。
- 欠損障害
- 機能障害
- 変形障害
- 短縮障害
- 神経障害
欠損障害
欠損障害は、腕や脚、手指足指などの全部や一部が失われる後遺障害です。失われた部位が大きくなるほど後遺障害慰謝料が高額になります。
機能障害
機能障害は、腕や脚、指などの関節を自由に動かせなくなる障害です。骨折後、骨の癒合がうまく進まないことが原因です。可動域制限の程度が重く、動かせない範囲が大きくなるほど後遺障害の等級が上がり、後遺障害慰謝料の金額が高額になります。
変形障害
変形障害は、腕や脚に「偽関節」が発生したり、骨の癒合不全が残ってしまったりする場合です。偽関節は、骨折した部分がきちんと癒合せずに、本来関節ではない場所が曲がってしまう障害です。
短縮障害
短縮障害とは、骨折が原因で脚の骨が元より短くなってしまう症状です。健側の足の長さと患側の長さを比較することで、後遺障害を認定します。短縮した長さにより、後遺障害の等級が変わり、短縮度合いが酷くなると後遺障害慰謝料が高額になります。
神経障害
神経障害は、骨折した部分に疼痛、熱さやしびれなどの症状が残ってしまうものです。神経を損傷した場合や、長期間ギプス固定していた場合、交感神経に異常が起こった場合などに神経障害が残ってしまう可能性があります。
交通事故で骨折したときに認められる慰謝料
交通事故が原因で骨折すると、どのような慰謝料がどのくらい支払われるのか、相場の金額をご紹介します。
入通院慰謝料
まずは「入通院慰謝料」という慰謝料を支払ってもらえる可能性があります。入通院慰謝料とは、交通事故でケガをして病院に入通院したときに発生する慰謝料です。入通院期間が長くなると慰謝料も増額されます。具体的な金額の相場は以下の通りです。
- 6か月通院 116万円
- 1か月入院、6か月通院 149万円
- 2か月入院、8か月通院 194万円
- 3か月入院、10か月通院 230万円
入通院慰謝料は、後遺障害が残るか残らないかにかかわらず、支払われます。骨折の場合、100万円~400万円程度になるケースが多いです。
後遺障害慰謝料
交通事故で骨折して、後遺障害が残ったときには、認定された「等級」に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによって被害者が受ける精神的苦痛に対する賠償金です。
後遺障害には1級から14級までの等級があり、1級がもっとも重く、14級がもっとも軽いです。たとえば交通事故で両腕を骨折して両腕を方から失った場合や、頭蓋骨骨折で高次脳機能障害となり、自力では何もできなくなってしまったときには1級が認定されます。骨折をして癒合したけれども、痛みやしびれなどの神経症状が残ってしまったら、12級や14級が認定される可能性があります。
各等級の後遺障害慰謝料の金額は、以下の通りです。
- 1級 2800万円
- 2級 2370万円
- 3級 1990万円
- 4級 1670万円
- 5級 1400万円
- 6級 1180万円
- 7級 1000万円
- 8級 830万円
- 9級 690万円
- 10級 550万円
- 11級 420万円
- 12級 290万円
- 13級 180万円
- 14級 110万円
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骨折で支払われる慰謝料についての判例
交通事故で骨折したとき、判例ではどのくらいの慰謝料が認められているのでしょうか?
以下でみてみましょう。
東京地裁平成20年5月12日
会社員が交通事故で脳外傷などの頭部外傷や右ひざ関節の靱帯損傷を受け、上下顎骨骨折や顔面骨骨折によって外貌醜状が残り、併合6級の後遺障害認定を受けた事案です。入通院慰謝料400万円、後遺障害慰謝料が1300万円認められています。
大阪地裁平成18年12月25日
小学生だった被害者が、足指の機能障害で9級15号、左足瘢痕で12級13号となり、併合8級の後遺障害認定を受けた事案です。裁判所は後遺障害の内容が複雑かつ重症であること、経過観察や継続治療が必要で今後も手術する可能性があることなどを考慮して、入通院慰謝料368万円、後遺障害慰謝料996万円を認めました。
名古屋地裁平成18年12月13日
40代の被害者が交通事故に遭って足関節の運動制限が残り、後遺障害9級が認定された事案です。入通院慰謝料が250万円、後遺障害慰謝料が750万円認められました。
千葉地裁平成22年(ワ)第3409号事件
大学生が交通事故で左脛骨開放骨折や左下腿皮膚欠損創の傷害を負い、併合6級が認められた事案です。入院期間は104日でした。この事案では、入通院慰謝料が220万円、後遺障害慰謝料1330万円の合計1550万円の慰謝料が認められています。
東京地裁平成19年(ワ)第20442号、平成20年(ワ)第22072号事件
40代の会社員が骨盤骨折や右股関節脱臼骨折、頭部外傷などになった交通事故の事案です。入院期間は434日で、後遺障害は併合4級が認定されました。慰謝料は、入通院慰謝料が403万円、後遺障害慰謝料が1670万円の、合計2073万円の慰謝料が認定されています。
骨折でなるべく高額な慰謝料を請求する方法
交通事故で骨折したときに、できるだけ高額な慰謝料を請求するにはどのようなことに注意したら良いのでしょうか?
後遺障害認定を受ける
慰謝料を増額させるには、後遺障害認定を受けることが重要です。後遺障害認定を受けると、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料を受け取れるので、慰謝料の金額が一気に上がるからです。後遺障害慰謝料が認められないと、入通院慰謝料しか支払われません。
また、後遺障害には1級から14級があり、等級が上がると後遺障害慰謝料の金額が上がるので、なるべく高い等級の後遺障害認定を受けることも大切です。
弁護士に示談交渉を依頼する
高額な慰謝料を獲得したいときには、弁護士に示談交渉を依頼すべきです。弁護士に示談交渉を依頼すると、慰謝料の計算基準が変わるからです。被害者が自分で示談交渉をするときには、低額な任意保険基準が適用されるので、慰謝料の金額が低くなりますが、弁護士に依頼すると弁護士基準が適用されるので、一気に慰謝料が増額されます。
入通院慰謝料が2倍くらいになるケースがありますし、後遺障害慰謝料は2~3倍程度になります。
示談が決裂したら裁判を起こす
示談が決裂した場合、ときには裁判をすることも必要です。相手の保険会社が必ずしも法的に正しい主張をするとは限らないからです。自賠責保険で後遺障害認定を受けられなかった場合でも、裁判をすれば後遺障害が認められるケースがありますし、裁判では弁護士基準(裁判基準)が適用されるので、被害者が示談交渉をするよりも慰謝料が上がります。
裁判するときには、訴訟の専門家である弁護士の力を借りる必要があるので、相手の言い分に納得できない場合には、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。
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交通事故で骨折したら、弁護士に相談しましょう
交通事故で骨折したときには、後遺障害認定を受けてなるべく高額な慰謝料獲得を目指すべきです。自分一人でできることには限界があるので、迷ったときには弁護士に相談しましょう。
交通事故に強い【おすすめ】の弁護士に相談
交通事故一人で悩まずご相談を
- 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない
- 交通事故を起こした相手や保険会社とのやりとりに疲れた
- 交通事故が原因のケガ治療を相談したい