交通死亡事故の慰謝料はどのくらい?残された遺族ができることは?
交通事故の被害者が亡くなってしまった時、本来ならば被害者が受け取るべき損害賠償金を相続人が受け継ぐ形で、被害者に対し示談交渉を行い、請求することが可能です。また、慰謝料については近親者固有の慰謝料請求権があることを知っておかなければなりません。
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死亡事故の場合、弁護士への依頼なしで損害賠償請求を行うことは難しい
交通事故で不幸にも被害者が死亡してしまった場合、慰謝料を含む損害賠償金を請求することが可能です。本来、交通事故の慰謝料は、被害者の精神的損害に対する賠償で、損害賠償請求を行えるのは被害者本人ですから、慰謝料という名目で賠償金を請求するのはおかしいのではないか、という見方もあります。
しかし現状では、損害賠償請求の権利は相続人に相続され、また遺族の受けた精神的損害に対する慰謝料を請求できるという解釈で示談が行われるのが普通です。
また、死亡事故に対する損害賠償金は多額となるため、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)の限度額を超えてしまうケースが多いようです。そのため、任意保険でどの程度の補償が行われるのかも重要となってきます。
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死亡事故で加害者に請求できる項目は?
死亡事故の損害賠償は、傷害を負った場合と同様に積極損害と消極損害に分けられます。
積極損害とは実際に支払った費用で、死亡するまでの治療費、入院費、入院に伴う雑費、そして葬儀費などがあります。
この他、入院付添費、入院雑費、家族の駆けつけ費用などが認められることがあるので、領収書などをきちんとそろえたうえで、弁護士など専門家に相談することをお勧めします。
一方、消極損害とは事故に遭わなければ得られたはずの利益で、休業損害と逸失利益が該当し、死亡事故の場合は逸失利益の方が多額になることが一般的です。
自賠責保険においては、死亡に至るまでの傷害の損害は、傷害による損害の規定が準用されます。
被害者が亡くなった場合、損害賠償請求できる範囲は?
被害者が死亡した場合、加害者へ請求できる損害賠償は、次の3項目です。
- 葬儀代
- 逸失利益
- 慰謝料(死亡本人および遺族)
また、後遺障害に対する損害賠償金支払い後、被害者が死亡した時、事故と死亡との間に因果関係が認められる時は、その差額が認められています。
葬儀費はいくらまで認められる?
自賠責保険の場合、葬儀費は60万円が限度と規定されています。しかし、領収書などの立証資料がきちんと保管されていれば、必要かつ妥当な実費として100万円までは認められます。
認められる費用は、通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用で、香典をもらったとしても損害賠償金から差し引かれませんが、墓地の費用や香典返し、接待費用、参列者の交通費などは費用として認められません。
また、自賠責基準では限度額が100万円ですが、弁護士(裁判)基準では通常150万円が認められており、より高額の葬儀費が認められた判例もあります。領収書をきちんとそろえ、弁護士に相談するのが得策と言えます。
死亡事故の逸失利益は、生活費が控除される
逸失利益とは、被害者が交通事故に遭わなければ得ていたと考えられる経済的な利益のことです。
死亡事故の逸失利益の基本的な考え方は後遺障害によるものと同じですが、生活費が控除されます。被害者が生存していれば得られた利益を算出しますが、亡くなったことで生活費の支出がなくなるため、基礎収入から生活費を差し引くという考え方によって計算されます。
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また、被害者が亡くなっているため、後遺障害の際に用いた労働能力損失率は100%となりますので、計算上は示されません。
基本的な計算式は次の通りです。
それぞれの用語を詳しく見ていきましょう。
基礎収入額とは?
損害賠償請求における休業損害の計算と同様に、給与所得者や事業所得者、家事従事者、無職者など、被害者の事故当時の年収や就業状況によって算出されます。
給与所得者の場合
原則として事故前年度の収入(賞与込み)となり、手取り額ではなく総支給額が基礎収入額で、源泉徴収票などを提出して証明します。
事業所得者の場合
原則として事故前年度の申告所得額が基礎収入額となりますが、この額が賃金センサスによる平均賃金よりも相当に低い場合、被害者の年齢や職業、事故前の職歴や稼働状況などが総合的に考慮され、賃金センサスの平均賃金が採用されることもあります。
家事従事者(主婦、主夫)の場合
原則として賃金の女子平均賃金が基礎収入額となります。
無職(失業者)の場合
原則として、事故前の収入を得ていた時の収入額や賃金センサスから判断されますが、労働能力や労働意欲があることが前提となる場合があります。
幼児、生徒、学生
原則として、賃金センサスに基づいて算出されます。
賃金センサスとは、毎年厚生労働省が行う賃金構造基本統計調査です。
生活費控除率とは?
自賠責保険の支払い基準によると、「生活費の立証が困難な場合、被扶養者がいるときは年間収入額または年相当額から35%を、被扶養者がいないときは年間収入額または年相当額から50%を生活費として控除する」と定められています。
死亡事故の被害者に対して生活費を立証することは困難ですから、概ね次の水準が適用されています。
死亡事故 被害者 | 控除率 |
---|---|
一家の支柱(被扶養者が1人の場合) | 40% |
一家の支柱(被扶養者が2人以上の場合) | 30% |
女性(主婦、独身、幼児などを含む) | 30% |
男性(独身、幼児などを含む) | 50% |
ライプニッツ係数とは?
損害賠償における逸失利益は、本来であれば将来において年、または月ごとに得るはずの金額を一括して受け取ることになるため、中間利息を控除する必要が生じます。
その際に用いられる数字がライプニッツ係数です。
ライプニッツ係数は喪失期間が短いほど小さく、長いほど大きくなります。
喪失期間(年) | ライプニッツ係数 | 喪失期間(年) | ライプニッツ係数 |
---|---|---|---|
1年 | 0.9524 | 35年 | 16.3742 |
2年 | 1.8594 | 36年 | 16.5469 |
3年 | 2.7232 | 37年 | 16.7113 |
4年 | 3.5460 | 38年 | 16.8679 |
5年 | 4.3295 | 39年 | 17.0170 |
6年 | 5.0757 | 40年 | 17.1591 |
7年 | 5.7864 | 41年 | 17.2944 |
8年 | 6.4632 | 42年 | 17.4232 |
9年 | 7.1078 | 43年 | 17.5459 |
10年 | 7.7217 | 44年 | 17.6628 |
11年 | 8.3064 | 45年 | 17.7741 |
12年 | 8.8633 | 46年 | 17.8801 |
13年 | 9.3936 | 47年 | 17.9810 |
14年 | 9.8986 | 48年 | 18.0772 |
15年 | 10.3797 | 49年 | 18.1687 |
16年 | 10.8378 | 50年 | 18.2559 |
17年 | 11.2741 | 51年 | 18.3390 |
18年 | 11.6896 | 52年 | 18.4181 |
19年 | 12.0853 | 53年 | 18.4934 |
20年 | 12.4622 | 54年 | 18.5651 |
21年 | 12.8212 | 55年 | 18.6335 |
22年 | 13.1630 | 56年 | 18.6985 |
23年 | 13.4886 | 57年 | 18.7605 |
24年 | 13.7986 | 58年 | 18.8195 |
25年 | 14.0939 | 59年 | 18.8758 |
26年 | 14.3752 | 60年 | 18.9293 |
27年 | 14.6430 | 61年 | 18.9803 |
28年 | 14.8981 | 62年 | 19.0288 |
29年 | 15.1411 | 63年 | 19.0751 |
30年 | 15.3725 | 64年 | 19.1191 |
31年 | 15.5928 | 65年 | 19.1611 |
32年 | 15.8027 | 66年 | 19.2010 |
33年 | 16.0025 | 67年 | 19.2391 |
34年 | 16.1929 |
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死亡事故は被害者本人の慰謝料と、遺族の慰謝料がある
交通事故によって被害者が亡くなってしまった場合、慰謝料には2種類の規定があることに注意が必要です。
自賠責保険の支払い基準によると、次の2つの金額が定められています。
- 被害者本人の慰謝料:350万円
- 遺族の慰謝料は、遺族慰謝料請求権者の人数により、請求者1名の場合は550万円、2名の場合は650万円、3名以上の場合は750万円が支払われ、被害者に被扶養者がいるときはさらに200万円が加算されます。
弁護士(裁判)基準では、より高額の慰謝料となる
一方、通称赤い本「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部)に掲載されている死亡事故の場合の慰謝料基準は次の通りです。
一家の支柱 | 2,800万円 |
---|---|
母親、配偶者 | 2,500万円 |
その他 | 2,000万円~2,500万円 |
弁護士(裁判)基準は目安として公開されているもので、自賠責基準のように定められた金額が支払われるわけではありません。しかし、死亡事故の慰謝料においては、かなりの差が出てきます。
葬儀費の計算や逸失利益の算定も、弁護士(裁判)基準の方がはるかに金額は高く、特に死亡事故のような、被害者や遺族が大きな損失を被る場合は、弁護士に示談交渉を依頼するべきだと言えるでしょう。
死亡事故だと誰が損害賠償請求を行うのか?
交通事故の損害賠償請求は、原則として被害者本人が行うものです。しかしながら死亡事故においては、本人が請求を行うことはできませんから、被害者の相続人が行います。
相続人になる順位や相続分については、民法の規定通りになります。
遺族の慰謝料の範囲は?
遺族の慰謝料請求権は、近親者固有の慰謝料請求権を定めた民法711条に規定されるところです。
(民法第711条)他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
条文によると被害者の父母、配偶者、子どもと規定されていますが、関係が深い場合、兄弟姉妹、祖父母、内縁の妻などに慰謝料の請求権を認められた場合があります。
このように、慰謝料を受け取る権利がある者が複数いる場合、加害者との交渉に加えて権利者間の調整が必要となります。
弁護士などの専門家に相談し、手続きなどを行ってもらうのが得策です。
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