自筆証書遺言で注意すべきポイントとケース別の遺言書の書き方
自筆証書遺言でトラブルを防ぐために押さえておきたいポイントについて書いています。また、子どもの認知や遺贈、祭祀継承者の指定など自筆証書遺言に書いておきたい内容と書き方を事例ごとに紹介しています。
自筆証書遺言でトラブルを避けるために
せっかく自分で遺言を書いたのに、内容があいまいで遺族が混乱してしまうというケースがあります。自筆証書遺言を書く場合は、トラブルを避けるために次の点を踏まえて作成しましょう。
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相続財産を特定できるようにする
不動産は地番などまで書く、預貯金は金融機関の口座番号まで書いておくなど。
あいまいな表現は避ける
「自宅の土地は長男に、農地は次男と長女で好きなように分けなさい」と書くと、農地の分け方を巡ってもめることになります。誤解を招かないように具体的に書くことが大切です。
極端に不公平にならないように配慮する
「老後の面倒を見てくれた」と多めに相続させたい場合や、「この子だけ進学させてやれなかったから財産を多く渡したい」といった気持ちがあったとしても、相続人には遺留分という最低限受け取る権利があります。それを侵さないように分配し、また遺族が納得できるような理由を付言事項で書いておくといいでしょう。
遺言そのものに不備がないようにする
日付や署名・押印などは漏れがないようにします。修正する場合は下記を参考にしてください。
自筆証書遺言のケース別書き方とポイント
ではケース別に書き方の事例をご紹介します。
ケース1:法定相続分と異なる分け方をしたい
法定相続人は受け取れる相続分が民法で定められています。しかし、これは目安であり、実際は被相続人が遺言で分け方を指定することができます。(遺言がない場合でも、相続人全員の話し合いで納得すれば法定相続分以外の分け方ができます。)
1.各相続人の相続分を次のように指定する。
妻 山田正子 2分の1
長男 山田明 6分の1
長女 田中直子 3分の1
2.付言事項
長女の直子は家庭の経済的な事情で進学をあきらめ、病気がちな母の看病をして遺言者を支えてくれました。そのことに考慮して財産の分割を指定します。
ケース2:相続人以外の人に相続させたい(遺贈)
長男の妻や入籍していない事実婚の場合などは遺言でその旨を書いておきましょう。
1.遺言者の事実上の妻である池田玲子に全財産の2分の1を遺贈する。
2.付言事項
籍は入れていませんが、長年生活を共にし、遺言者の生活を支え財産形成に寄与してくれたことを考慮して、本来配偶者が受け取るべき法定相続分と同じ割合を遺贈したいと思います。
ケース3:団体などに寄付したい
どこに何をどれだけ寄付したいのかを明記しておきます。
1.東京都渋谷区○○丁目8番5の身体障害者施設「△△△△」に、現金500万円を寄付する。
2.付言事項
遺言者はすでに死亡した身体障害者の弟がおり、同施設にお世話になっていました。そこで自分の死後は財産の一部を寄付したいと考え、現金を遺贈します。
ケース4:子どもを認知したい場合
遺言で子どもを認知すると、死後遺言執行者が認知の届出をする必要があります。そのため、遺言で執行者の指定をしておきます。
認知された子は他の子と同じだけの法定相続分がありますが、急に知らない子どもの存在を知った遺族が混乱しないように、どの財産を相続させるかを指定しておくといいでしょう。
1.次の者は遺言者と鈴木みどりとの間の子であるので認知する。
本籍 神奈川県横須賀市○町5丁目4番7
住所 神奈川県川崎市△町1丁目2番5
氏名 鈴木圭太 ○年○月○日生まれ
2.鈴木圭太に□□銀行△△支店の遺言者名義の定期預金(口座番号 1324576)を相続させる。
3.この遺言の遺言執行者として神奈川県横浜市○○町5丁目6番7の弁護士 加山誠を指定する。
ケース5:子どものいない夫婦で、妻に全財産を渡したい場合
子どもがいない場合は配偶者と被相続人の親(親がいない場合は兄弟姉妹)が法定相続人になります。親には遺留分がありますが、兄弟姉妹にはないため、法定相続人が配偶者と兄弟姉妹になった場合は遺言で全財産を妻に相続させると指定することができます。
1.遺言者に属する一切の財産は、妻山田正子に相続させる。
ケース6:前の配偶者との間に子どもがいる場合
離婚した配偶者の間にできた子どもも遺言者の実子であり、相続する権利があります。ただ、遺産分割協議などの話し合いの場に出て来にくいということが考えられます。その場合は何を相続させるかを具体的に書いておくと安心です。
1.長男 山田明に次の財産を相続させる。
○○銀行△△支店の遺言者名義の定期預金 (口座番号1245789)すべて
2.前妻 佐々木まゆみとの間の長男 佐々木浩司に次の財産を相続させる。
△△銀行□□支店の遺言者名義の普通預金(口座番号9865432)すべて
ケース7:相続させたくない(廃除したい場合)
相続人を廃除するには、遺言執行者の指定が必要です。
1.次男 山田健次は、長年にわたって遺言者と妻に暴力、暴言をふるい、さらに金品をだまし取るなどの非行を重ねたため、推定相続人から廃除する。
2.この遺言の遺言執行者として神奈川県横浜市○○町5丁目6番7の弁護士 加山誠を指定する。
訂正をする場合
書き損じた場合は訂正が可能です。
その場合は、訂正したい箇所(または削除したい箇所)を二重線で消し、署名押印と同じ印鑑で変更箇所に押印します。修正液などで消すのは無効となるので、注意しましょう。
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