追突事故の慰謝料はいくら?相場の早見表と計算方法・増額のコツ

追突事故の慰謝料

追突事故の被害に遭った場合、ケガをしたり会社を休まざるを得なくなったりと、さまざまな損害が発生します。

そのため、できるだけ納得の行く慰謝料がほしいと考える人も多いのではないでしょうか。ここでは追突事故でもらえる慰謝料の相場や増額のコツなどについて解説します。

追突事故でもらえる慰謝料はいくら?相場の早見表

追突事故の慰謝料は「ケガで通院した分(入通院慰謝料)」と「後遺症が残った分(後遺障害慰謝料)」に分かれ、同じ事故でも自賠責基準より弁護士基準のほうが2〜3倍高くなるのが特徴です。まずは目安となる相場を早見表で確認しましょう。

通院期間別 入通院慰謝料の相場(弁護士基準)
通院期間 軽症(むちうちなど) 重傷
1ヶ月 19万円 28万円
2ヶ月 36万円 52万円
3ヶ月 53万円 73万円

※自賠責基準では通院3ヶ月の入通院慰謝料は最大38.7万円が目安で、弁護士基準と比べて低くなります。

むちうちで後遺症が残った場合の後遺障害慰謝料の相場
後遺障害等級 弁護士基準 自賠責基準
14級 110万円 32万円
12級 290万円 94万円

追突事故で多いむちうちは、後遺症が残ると14級または12級が認定される可能性があります。重い等級や死亡事故の場合の相場は、記事内の各計算方法・等級表で詳しく解説しています。

追突事故の慰謝料の計算方法

追突事故でケガをすると、通院が必要になったり後遺症が残ったりと、精神的・肉体的にさまざまな損害が出ます。交通事故における慰謝料とは、こうした損害に伴う精神的な苦痛を埋め合わせるために被害者が受け取れるお金のことです。

追突事故で請求できる慰謝料の種類

追突事故で請求できる慰謝料は、主に次の2つです。

  • 入通院慰謝料…ケガで入院・通院が必要になった場合にもらえる慰謝料。通院期間が長いほど高くなります。
  • 後遺障害慰謝料…むちうちなどの後遺障害が残った場合にもらえる慰謝料。認定された等級が重いほど高額になります。

(被害者が亡くなった場合は死亡慰謝料も発生しますが、追突事故ではまれなケースです。)

追突事故慰謝料の金額算定基準

慰謝料の計算基準には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の3つがあり、どれを使うかで金額が大きく変わります。

  • 自賠責基準…最低限の補償を目的とした基準で、3つの中でもっとも低くなります。
  • 任意保険基準…保険会社が示談提案時に使う独自基準。自賠責基準より少し高い程度です。
  • 弁護士基準(裁判基準)…過去の裁判例をもとにした基準で、もっとも高額。弁護士に依頼した場合に適用されます。

追突事故でも、保険会社の提示額をそのまま受け入れず弁護士基準で交渉することが増額のポイントです。

入通院慰謝料の計算方法

入通院慰謝料は、各算定基準で決められたベースとなる金額に通院日数や入院日数をかけて算出されます。

自賠責保険基準の計算方法

自賠責保険基準の場合、1日あたりの慰謝料4,300円をベースに調整を行い、最終的な慰謝料を算出します。

具体的な計算式は以下の通りです。

  • 自賠責基準による入通院慰謝料=4,300円x(治療期間 または 実際に治療した日数x2 いずれか短い方)

任意保険基準の計算方法

任意保険基準は公開されてはいませんが、実際に通院した日数に一定の金額をかけるなどして算出される場合が多いようです。

通常は自賠責保険基準と同程度~少し多い程度の金額になるといわれています。

弁護士基準(裁判基準)の計算方法

弁護士基準(裁判基準)における慰謝料金額は、民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準(通称:赤い本)に載っている算定表をもとに算出します。

算定表は以下表のようなもので、最終的な金額は入通院期間で決定します。

別表Ⅰ
入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月
通院 53 101 145
1ヶ月 28 77 122 162
2ヶ月 52 98 139 177
3ヶ月 73 115 154 188
別表Ⅱ(むちうちなど軽症の場合)
入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月
通院 35 66 92
1ヶ月 19 52 83 106
2ヶ月 36 69 97 118
3ヶ月 53 83 109 128

後遺障害慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料は後遺障害等級認定にしたがって算出され、自賠責・任意保険・弁護士基準のどれを使うかで金額が変わるのは入通院慰謝料と同じです。追突事故で多いむちうちの場合、認定される可能性があるのは主に14級・12級です。

むちうちで認定されやすい等級の後遺障害慰謝料の相場
等級 弁護士基準 任意保険基準 自賠責基準
12級 290万円 100万円 94万円
14級 110万円 40万円 32万円

数字が小さい等級ほど障害が重く、慰謝料も高額になります。1級〜13級を含む全等級の相場一覧や等級認定の仕組みは、下記で詳しく解説しています。

追突事故の慰謝料金額の相場

ここでは追突事故の慰謝料金額の相場について、具体例を交えながら紹介します。

通院3ヶ月の場合

まず、軽症かつ通院3ヶ月で治療が終了した場合の入通院慰謝料についてみてみましょう。

自賠責基準の場合、入通院慰謝料は4,300円×対象日数で算出できます。

対象日数は、治療期間または実際に治療した日数の2倍のうちの短い方が採用されるので、治療期間が3ヶ月であれば、自賠責基準による入通院慰謝料は最大38.7万円となります。(治療期間90日または治療日数45日の場合)

任意保険基準における慰謝料の算定基準は各保険会社によって異なりますが、自賠責基準とあまり変わらない金額に落ち着くことが多いと言われています。

弁護士基準(裁判基準)の場合は算定表を使って算出します。軽症の場合、通院日数3ヶ月であれば53万円となります。

3つの計算基準による通院3ヶ月の入通院慰謝料の比較
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
最大38.7万円 自賠責基準と同程度 53万円

むちうちの後遺症が残った場合

次に、むちうちの後遺症が残った場合の後遺障害慰謝料について見てみましょう。

むちうちの場合、認定される可能性がある後遺障害等級は14級・12級です。
自賠責基準の場合、それぞれの後遺障害等級に対応する慰謝料は次のようになります。

  • 14級…32万円
  • 12級…94万円

任意保険基準は各保険会社の内部ルールのため非公開ですが、自賠責基準で算出した金額に少し上乗せされたくらいとイメージしておくとよいでしょう。

一方、弁護士基準の場合は次のようになります。

  • 14級…110万円
  • 12級…290万円
3つの計算基準によるむちうちの後遺障害慰謝料の比較
認定等級 自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
14級 32万円 自賠責基準と同程度 110万円
12級 94万円 自賠責基準と同程度 290万円

自賠責基準と弁護士基準を比べると、およそ3倍の差があることがわかります。

追突事故の慰謝料事例

追突事故の被害者がもらえる慰謝料は、どの算定基準を使って計算するかによって大きく変わります。

ここでは、弁護士が介入した結果慰謝料が増額されたケースを紹介します。

信号待ち中の追突事故で示談金が約130万円増額したケース

  • 30代男性会社員
  • 後遺障害等級:併合14級
  • 傷病名:頚椎捻挫、外傷性頚部症候群、腰部挫傷、両下腿三頭筋筋挫傷
  • 示談金:169万7802円⇒
    300万円に増額

事故の概要

本件ケースは自動車対自動車の事故であり、被害者が信号待ちで停止していた際に、後部車両が前方不注視で追突してきたものです。

この事故により、被害者は頚椎捻挫などのケガを負い、後遺障害等級併合14級が認定されました。

結果

相手方保険会社の提示額が裁判基準より低かったため、裁判基準で示談できるように弁護士が介入しました。

相手方の保険会社と示談交渉を行った結果、約130万円の増額に成功しました。
 
本事例の担当弁護士:ベリーベスト法律事務所

追突事故で請求できる慰謝料以外のお金

追突事故にあった場合、受け取れるお金は慰謝料だけではありません。
治療費のような事故に伴う支出、あるいは休業損害のように事故のせいで入ってこなくなったお金も相手方に請求することができます。

  • 治療費(治療が必要になった場合の治療費)
  • 休業損害(仕事を休んで収入が入ってこなくなった場合の補填分)
  • 通院交通費(通院に必要な交通費)
  • 付添看護費(付き添いが必要な場合の費用)
  • 葬儀関係費(被害者が亡くなった場合の葬儀費用など)
  • 家屋等改造費(事故の後遺症で自宅のバリアフリー化が必要になった場合の費用)
  • 逸失利益(後遺症が残ったせいで将来もらえる収入が減った場合の補償金)

追突事故の示談金の総額と内訳

追突事故の示談金は、示談で決める損害賠償金の総額で、慰謝料に治療関係費・休業損害・逸失利益・物損を合計した金額です。慰謝料は示談金の一部にすぎず、実際に受け取る総額は慰謝料の早見表より大きくなります。

被害者が受け取る示談金の目安は、むちうちで通院3ヶ月・休業10日の会社員なら弁護士基準で60万円台、通院6ヶ月で後遺障害14級が認定された年収400万円の会社員なら300万円前後です。いずれも、相手方の保険会社が病院へ直接支払う治療費を除いた金額で、通院期間・休業日数・年収が変われば金額も変わります。

示談金は慰謝料・治療関係費・休業損害・逸失利益・物損の合計

追突事故の示談金は、5つの費目を合計して決まります。費目ごとに金額の決まり方が違い、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)のどれで計算するかで金額が変わる費目と、実費がそのまま認められて基準による差が出ない費目があります。

表の基準による差の欄は、最も低い自賠責基準と最も高い弁護士基準を比べたものです。

追突事故の示談金の内訳と金額の決まり方
費目 内容 金額の決まり方 基準による差
慰謝料 入通院慰謝料・後遺障害慰謝料 入通院期間と後遺障害等級で決まる 大きい(弁護士基準は自賠責基準の2~3倍)
治療関係費 治療費・通院交通費・診断書料など 実費 なし
休業損害 ケガで仕事を休んだ分の収入 日額×休業日数 あり(自賠責基準は原則1日6,100円。2020年4月1日以降の事故)
逸失利益 後遺障害で将来の収入が減る分 年収×労働能力喪失率(働く力が落ちた割合)×ライプニッツ係数(一括で受け取る際の調整係数) あり(自賠責基準は後遺障害慰謝料と合わせて等級ごとの上限額まで)
物損 車の修理費・代車費用・評価損(事故歴で下がった車の価値) 修理費の見積もりと車の時価 なし(評価損は認められるかどうかが争いになりやすい)

物損は修理費の見積もりが出れば損害額が確定するため、治療が続いている間に、ケガの損害とは別の示談書で先に解決する例が多くなっています。物損の示談書は対象を物損に限る文言で作られるのが通常で、署名した後もケガの損害は別に請求できます。ただし署名する前に、ケガの損害を含む一切の請求を放棄する文言(清算条項)が入っていないことを確かめましょう。

慰謝料そのものの金額は、記事冒頭の早見表で示したとおり通院期間と後遺障害等級で決まります。慰謝料に他の費目を足すと示談金がいくらになるかを、追突事故で多いむちうちの例で計算します。

むちうちで通院3ヶ月の示談金は弁護士基準で60万円台が目安

むちうちで通院3ヶ月、後遺障害が残らなかった場合、被害者に振り込まれる示談金は弁護士基準で60万円台が目安です。次の条件で計算します。

  • ケガ:むちうち(頚椎捻挫)
  • 治療期間:3ヶ月(90日)、実際に通院した日数:45日
  • 職業:会社員(事故前3ヶ月の収入から計算した日額1万円)、休業日数:10日
  • 過失割合:追突された側が0

表の自賠責基準の列は、相手方の任意保険会社が自賠責基準と同程度の金額を提示してきた場合の目安です。自賠責保険そのものから受け取れる金額は、ケガの損害で治療費を含めて被害者1人につき120万円までです。

むちうちで通院3ヶ月の示談金の内訳(後遺障害なし)
費目 弁護士基準(裁判基準) 自賠責基準で計算した場合
入通院慰謝料 53万円 38.7万円(4,300円×90日)
休業損害 10万円(1万円×10日) 10万円(収入を証明した場合。証明がなければ6,100円×10日=6.1万円)
通院交通費 約3万円(往復600円×45日) 約3万円
治療費 実費(保険会社が病院へ直接支払うため、振り込みには含まれない)
振り込まれる示談金の目安 約66万円 約52万円

※自賠責基準の入通院慰謝料は日額4,300円×対象日数で、対象日数は治療期間(90日)と実通院日数×2(90日)の少ない方です。日額は2020年4月1日以降の事故の値です。

追突された側の過失割合が0であれば、過失相殺(被害者側の過失分を差し引く計算)による減額はなく、被害者は計算した金額をそのまま相手方の保険会社に請求できます。

同じ通院3ヶ月でも、弁護士基準と自賠責基準で示談金に約14万円の差が出て、差のほとんどは入通院慰謝料の差です。休業損害と通院交通費はどちらの基準でも実額に近い金額になるため、保険会社の提示額が低いと感じたときは、慰謝料がどの基準で計算されているかを確かめてください。

家事を担う主婦・主夫も休業損害を請求でき、日額は会社員と別に、厚生労働省の賃金統計(賃金センサス)を基に計算します。

出典元:自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(国土交通省)

後遺障害14級が認定された場合の示談金は年収400万円で300万円前後

むちうちの症状が残り、後遺障害14級9号が認定されると、通院6ヶ月・年収400万円の会社員の例で、示談金は弁護士基準で300万円前後になります。通院だけで治った場合の費目(入通院慰謝料・休業損害・通院交通費)に、後遺障害慰謝料と逸失利益の2つが加わるためです。

14級の認定には、症状固定(治療を続けても改善が見込めなくなった状態)まで6ヶ月程度の通院が目安になります。以下の表は、通院期間を6ヶ月(180日、実通院90日)、年収400万円の会社員(事故前3ヶ月の収入から計算した日額1万円)、休業日数10日の条件で計算した内訳です。表の自賠責基準の列の意味は、通院3ヶ月の表と同じです。

むちうちで後遺障害14級が認定された場合の示談金の内訳
費目 弁護士基準(裁判基準) 自賠責基準で計算した場合
入通院慰謝料(通院6ヶ月) 89万円 77.4万円(4,300円×180日)
休業損害 10万円 10万円
通院交通費 約5万円(往復600円×90日) 約5万円
後遺障害慰謝料(14級) 110万円 合計75万円が上限(慰謝料32万円+逸失利益)
逸失利益 約92万円(400万円×5%×4.5797)
振り込まれる示談金の目安 約306万円 約167万円

逸失利益は、年収に労働能力喪失率とライプニッツ係数をかけて計算します。14級の労働能力喪失率は5%で、むちうちの14級では労働能力喪失期間を5年として計算するのが実務の目安です。ライプニッツ係数は、将来にわたって減る収入を一括で受け取るときに利息分を差し引くための係数で、5年分は4.5797です(民法404条の法定利率3%で計算した値。2020年4月1日以降の事故)。

自賠責保険が後遺障害14級に対して支払う金額は、慰謝料と逸失利益を合わせて75万円が上限です。年収400万円の例では逸失利益だけで上限を超えるため、支払額は75万円になり、弁護士基準との差は後遺障害の部分だけで120万円を超えます。

記事の事例で紹介した併合14級の事案も、自賠責基準と弁護士基準の差が金額に表れた例です。相手方の保険会社の提示額169万7802円は自賠責基準で計算した約167万円に近く、弁護士の介入後の300万円は弁護士基準の約306万円に近い金額です。

なお、300万円前後という目安は年収400万円・喪失期間5年の場合の数字で、逸失利益は年収と労働能力喪失期間で大きく動きます。年収が高い場合や、画像検査などで症状を裏づけられて12級13号(労働能力喪失率14%)が認定された場合は、示談金はさらに高くなります。

出典元:自賠責保険・共済の限度額と補償内容(国土交通省)
出典元:労働能力喪失率表(自賠責保険支払基準 別表Ⅰ・国土交通省)
参考:民法404条(法定利率)|e-Gov法令検索

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振り込まれる示談金は慰謝料と休業損害が中心

示談成立後に被害者の口座へ振り込まれるのは、慰謝料・休業損害・通院交通費が中心です。治療費は、多くの場合、相手方の保険会社が病院へ直接支払っているためです。

相手方が任意保険に加入している追突事故では、相手方の任意保険会社が治療費を病院へ直接支払う一括対応で治療が進み、被害者は窓口で治療費を払わずに通院できます。一括対応で支払った治療費は、相手方の保険会社が示談の時点で既払い金(すでに支払った分)として示談金の総額から差し引いてきます。

自賠責保険が支払う保険金はケガの損害で120万円まで

相手方の保険から支払われる保険金は、自賠責保険と任意保険の2段階です。自賠責保険が支払うのは、ケガの損害(治療費・休業損害・慰謝料の合計)については被害者1人につき120万円までです(自動車損害賠償保障法施行令で定める保険金額)。後遺障害の損害は別枠で、等級ごとの上限額(14級は75万円)が限度です。

むちうちで通院3ヶ月の例では、治療費を含めても自賠責保険の120万円に収まるのが通常です。通院6ヶ月で後遺障害14級が認定された例では、ケガの損害のうち120万円を超えた分と、後遺障害の損害のうち75万円を超えた分を、相手方の任意保険が支払います。

万一、相手方が任意保険に加入していない場合、被害者は治療費をいったん自分で病院へ支払い、相手方の自賠責保険に直接請求する被害者請求で上限額までを受け取ります。上限額を超える損害の請求先は加害者本人です。被害者自身が人身傷害保険に加入していれば、約款で定めた基準で計算した損害額の不足分を人身傷害保険から受け取ることも可能です。

示談金が振り込まれるのは示談成立から2週間程度

示談金は、示談書に署名して保険会社へ返送した後、2週間程度で指定した口座に振り込まれます。治療中に振り込まれるものは休業損害の先払いなど一部に限られ、慰謝料を含む示談金の総額は治療の終了後、後遺障害がある場合は等級認定の後に確定します。

ケガがない追突事故の示談金は修理費・代車費用・評価損などの実費

追突されてもケガがなく、車の損傷だけで済んだ場合、示談金は修理費・修理中の代車費用・評価損(事故歴で車の価値が下がった分)などの実費が中心です。修理費が車の時価額を上回る場合は全損として扱い、時価額と買い替えにかかる諸費用を請求します。慰謝料はケガによる精神的な苦痛を補償するお金のため、物損だけの追突事故では原則として発生しません。

追突事故では追突された側の過失割合が0になるのが基本で、過失割合が0なら物損の示談金も過失相殺を受けずに全額請求できます。修理費や評価損がどこまで認められるかは、下記の記事で解説しています。

追突事故の慰謝料を請求する方法

過失割合0の場合、保険会社は示談交渉を代行できない

自分の過失割合が0の場合、保険会社に示談交渉を依頼することはできません。

支払責任がある場合を除き、保険会社が契約者に代わって示談交渉を行うことは法律で禁止されているからです。

過失割合が0の場合は被害者自身が交渉するか、弁護士に交渉を依頼する必要があります。

被害者自身での示談交渉

まず考えられるのが、被害者自身が示談交渉を行う方法です。
しかし、被害者自身が示談交渉を行う場合、相手方の担当者との知識格差から交渉で不利になりやすいなどの懸念があります。
保険会社は示談交渉のプロなので、経験も知識もない方が交渉を有利に進めるのは簡単ではありません。

弁護士に示談交渉を依頼する

交通事故の問題を最も完全な形で解決できるのが、弁護士に依頼する方法です。
弁護士費用はかかるものの、法的知識のあるプロに交渉を一任できるので、事故対応の負担は自分で行う場合に比べ、グッと軽くすることができます。
慰謝料の算定にあたっては裁判基準で算定するため、なるべく高額な慰謝料を請求できる点も大きなメリットです。

なお、加入している自動車保険で弁護士特約が使える場合は、弁護士費用も補償されます。
そのため実質的な負担なく、弁護士に交渉を依頼することが可能です。

追突事故時の慰謝料請求の流れ

追突事故の発生から慰謝料請求の流れをおおまかにまとめると以下のようになります。

  1. 警察への連絡
  2. 保険会社への連絡
  3. 加害者の情報を確認する
  4. 事故現場の記録・証拠収集
  5. 病院を受診・治療する
  6. 症状固定の場合:後遺障害等級認定の手続きを行う
  7. 治療が終了したら慰謝料を計算
  8. 保険会社との示談交渉
  9. 示談成立

警察への連絡

追突事故に遭った際は、まず警察に連絡し事故の発生を報告する必要があります。

警察への報告は道路交通法上の義務です。
報告を忘れると、適正な事故対応を怠ったことになり、保険金請求に必要な交通事故証明書が作成されず、保険金を支払ってもらえなくなる可能性もあります。

警察が来る前に示談を済ますのはNG

なお、一度成立した示談はやり直しができないのが原則です。
警察が来る前に相手と示談しないようにしましょう。
相手に「警察を呼ばないでくれ」「大事にしたくないので、その場で示談したい」と頼まれても、きちんと断り、警察に連絡することが大切です。

保険会社への連絡

自分の加入している自動車保険会社にも連絡をします。
追突事故で自分に過失がない場合、保険会社が示談交渉を代行することはありませんが、弁護士特約の活用について含めた対応や手続きの進め方をサポートしてくれます。まずはコールセンターに報告・相談してみましょう。

加害者の情報を確認する

相手の氏名や連絡先、保険会社といった加害者の情報を確認します。
免許証や保険証などの公的な書類を確認させてもらい、できれば写真に撮っておきましょう。

事故現場の記録・証拠収集

警察が到着するまでの間に、ドライブレコーダーのSDを抜く、事故現場や車の損傷部分の写真を撮る、事故の目撃者を探して連絡先を聞くといった証拠集めもしておきましょう。

病院を受診・治療する

交通事故のケガの中には、あとから痛みが出てくるタイプのものもあります。
追突事故でおきやすいむちうちも、症状が遅れて出ることの多い怪我です。

痛みや出血の有無にかかわらず、必ず病院に行き、医師の診察を受けてください。
また、医師の指示にしたがい、必要な検査や治療はきちんと受けるようにしましょう。
 

症状固定の場合:後遺障害等級認定の手続きを行う

治療をしてもケガが治りきらず、これ以上の治療効果も見込めないことがあります。これを症状固定といいます。
この場合は、後遺症が残ってしまったということで、後遺障害等級認定の手続きを行います。

追突事故によるむちうちでも、治療しても治らない痛みやしびれといった症状が残った場合、後遺障害14級・12級が認められる可能性があります。

治療が終了したら慰謝料を計算

治療が終了した段階で、後遺障害慰謝料を含む慰謝料の総額がわかります。
治療期間、後遺障害等級認定などをもとに慰謝料の計算を行いましょう。

保険会社との示談交渉

計算した慰謝料の数字をベースに、保険会社と示談交渉を行います。

追突事故により過失割合10:0の場合、保険会社は示談交渉の代行を行えないため、自分で交渉するか、弁護士に交渉を依頼するかの2択になるのが通常です。
最も高額な裁判基準の慰謝料での和解を望む場合には、弁護士に交渉を依頼するとスムーズです。

示談成立

当事者双方の間で話し合いがまとまれば示談成立となります。
示談成立から慰謝料が支払われるまでの期間は、2週間程度が目安です。

不成立の場合、調停・裁判へ

追突事故発生前後の状況や過失割合をめぐって争いがある場合など、示談がまとまらない場合は調停・裁判といった裁判所での手続きに移行して、事件の解決を目指すことになります。

追突事故の慰謝料を増額させるコツ

痛みがなくても病院に行く

事故直後に病院で診察を受けていないと、あとで身体に痛みが出たとしても事故との因果関係が認められない可能性があります。

事故発生直後に痛みがなくても、必ず病院に行くようにしましょう。

治療が完了するまで通院はやめない

入通院慰謝料の金額は、入通院日数をベースに算定されます。

適正な金額の慰謝料を受け取るためにも、治療が終わるまで通院を続けることが重要です。

痛みがよくなってきたからと自己判断で通院をやめてしまうと、その分慰謝料の金額も下がり、本来もらえるはずの慰謝料を失うおそれがあります。

追突事故でよくある「保険会社の治療費打ち切り」

追突事故で受けた怪我の治療を受け一定期間が経過すると、まだ治療中にも関わらず、途中で保険会社が治療費の打ち切りを通告してくることがあります。
保険会社の話を受けて「そういうものなのか」と治療や通院をやめてしまう方もいますが、これは決して得策とは言えません。

医師が治療終了を言ってこない以上、治療は継続中の状況です。
治療を続けていることを伝え、治療費を打ち切りしないよう、ハッキリ主張する必要があります。
自力での交渉に不安を感じる場合は、弁護士に相談しましょう。

後遺症が残る場合:後遺障害等級認定の手続きを行う

追突事故によりなんらかの後遺症が残った場合は、後遺症を追ったことによる精神的苦痛の補償として後遺障害慰謝料をもらえる場合があります。
症状固定といわれた後にも残っている症状がある場合は、忘れずに後遺障害等級認定の手続きを行いましょう。
 

弁護士に依頼し、裁判基準で慰謝料を請求する

交通事故の慰謝料は、算出方法によって最終的な金額が大幅に異なる可能性があります。

そのためできるだけ有利な条件で慰謝料を受け取りたいのであれば、これまでの裁判例をもとに作られた裁判基準(弁護士基準)をもとに交渉を進めるべきです。

納得のできる金額の慰謝料をもらうためにも、弁護士に依頼し、裁判基準で交渉をまとめてもらうようにしましょう。

追突事故の慰謝料に関するよくある質問

Q. 追突事故の慰謝料はいくらもらえますか?

ケガの程度や通院期間、後遺症の有無によって変わります。軽症で通院3ヶ月の場合、弁護士基準では入通院慰謝料が53万円程度が目安です。むちうちの後遺症(14級)が残った場合は、後遺障害慰謝料として弁護士基準で110万円程度が加算されます。

Q. むちうちで後遺症が残った場合の慰謝料はいくらですか?

むちうちで認定される可能性が高いのは後遺障害14級・12級です。後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準)は14級で110万円、12級で290万円です。これに入通院慰謝料や逸失利益などが加わるため、最終的な受取額はさらに大きくなります。

Q. 通院3ヶ月の場合の慰謝料の相場は?

軽症で通院3ヶ月の入通院慰謝料は、自賠責基準で最大38.7万円、弁護士基準では53万円程度が目安です。同じ通院期間でも、どの算定基準を使うかで金額が大きく変わります。

Q. 物損だけ(ケガなし)でも慰謝料はもらえますか?

慰謝料はケガによる精神的苦痛を補償するお金のため、ケガのない物損のみの追突事故では、原則として慰謝料は発生しません。ただし車の修理費・買い替え費用・代車費用・評価損(事故歴による価値の下落分)などの物的損害は相手方に請求できます。

Q. 過失割合が0でも自分で交渉しないといけませんか?

過失割合が0の場合、ご自身の保険会社は示談交渉を代行できません(法律上、支払責任がない場合の代行は禁止されているためです)。被害者本人が交渉するか、弁護士に依頼するかのいずれかになります。弁護士特約が使えれば、自己負担なく弁護士に交渉を任せられます。

まとめ

追突事故の被害にあった場合、過失割合や治療費、慰謝料の金額などをめぐって相手方の保険会社と意見が合わず、交渉が難航することがあります。

自分に有利な条件で示談を進めるためにも、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

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