自動車運転で苦手なことは?1,000人アンケートで見えてきた年代・性別によるリスク意識の違い
このたび交通事故弁護士相談広場では、全国1,000人のドライバーを対象に、自動車の運転で苦手に感じることについてアンケート調査を実施しました。
アンケートでは大きく「天候・時間」、「道路構造」、「交通環境」、「運転操作」と4つのテーマに分け、運転時に起こる様々なシチュエーションを「特に抵抗はない」「やや苦手」「苦手」の三択で回答いただきました。
アンケート調査の結果をもとに、年代や性別による自動車運転への苦手意識の違い、また苦手意識と実際の事故経験との相関など、自動車を普段使いしているドライバーの心理とその影響を検証していきます。
自動車運転で苦手なことに関するアンケート
実施:交通事故弁護士相談広場 編集部
回答方法:Webアンケート調査
調査日時:2024年01月14日~16日
調査対象:全国の20歳~69歳までの男女(月1日以上、1回10分以上車に乗る普通自動車免許保有者)
回答者数:1,000人(20代〜60代 10歳刻み x 男女別 でセクションごと各100名)
目次[非表示]
運転に苦手を感じる年代・性別は?
まず、「苦手と回答した回答者」の平均割合を年代・性別ごとに見ていきましょう。
※この調査結果では、各設問「苦手」「やや苦手」の回答者を合算し、ひとつの項目「苦手と回答した人」として集計。世代別x性別で各設問ごと「苦手と回答した人」の割合を抽出、全設問の割合の平均値を算出して比較しています。
「苦手と回答」した男性の割合 世代別平均
「苦手と回答」した男性の割合(平均値)を、年代別に並べると以下グラフの通りです。
男性で「苦手と回答した人」の割合が最も高かった世代は、20代(55.1%)でした。
グラフには、年代が上がるにつれて「苦手と回答した人」の割合が減っていく様子が現れています。
年齢を重ねる中で、だんだんと運転に慣れ、苦手を感じなくなっていく男性の傾向が垣間見えます。
「苦手と回答」した女性の割合 世代別平均
一方で、「苦手と回答」した女性の割合(平均値)年代別が以下です。
女性の場合、「苦手と回答」の平均値が最も高かった世代は、30代(81.2%)。
男性の「苦手と回答」が全体に40〜50%代だったのに対し、女性は70〜80%代と、男性よりも全体的に苦手意識が高い結果となりました。
年代・性別ごとの事故経験率
今回の調査では、事前に回答者の交通事故経験の有無についても質問を行いました。
「交通事故に遭ったことがある」と回答した方の割合を、こちらも年代・性別ごとで見ていきます。
交通事故経験者の割合(男性)
男性の交通事故経験ありの人の割合で最多は60代(62.0%)。
逆に最小は20代(41.0%)で、以後、年代が上がるほど「事故に遭ったことがある」方の割合が増加する傾向が見られます。
交通事故経験者の割合(女性)
一方、女性の交通事故経験者の割合で最多は40代(45.0%)でした。
ただし、前後の30代・50代が共に44.0%と1ポイント差と僅差で、60代も3ポイント差の42%。
運転をはじめて間もない20代を除き事故の割合に年代による上下の波があまりない点は、女性に顕著な傾向となりました。
また、20代〜60代どの世代で比較しても女性は男性の事故経験率を下回る結果となりました。
加齢にともなう運転への警戒感減少が男性の事故率増加の遠因に?
男性の運転への苦手意識と交通事故経験者の割合の世代別推移を比較したグラフが以下です。
男性の場合、加齢に応じて自動車運転に対する苦手意識が減っていく一方で、交通事故経験者の割合は増加する、逆の相関を見せています。
長年の自動車利用による慣れが、運転に対する警戒感の低下につながり、実際の事故発生につながっているおそれもあります。
運転への警戒心が高い女性、それでも4割程度の事故リスクはなくならない
一方、女性の運転への苦手意識と交通事故経験者の割合の世代別推移を比較したグラフが以下です。
女性の場合、経年による運転への苦手意識、交通事故経験者の割合ともに変化は緩やかで、年代ごとの流れを見ても両者がほぼ並行に推移しました。
女性は男性に比べ運転に対する苦手意識が高く、世代が上がっても変わらず運転への警戒感を高く持ち続ける様子が見て取れます。
ただし、それでも全世代で40%程度の事故割合は続いています。日常的に運転を続けていれば、どれだけ厳重に警戒しても4割程度は交通事故リスクはなくならないとも言えるかもしれません。
運転で苦手な天候・時間ランキング
ここからは、ドライバーである回答者が苦手に感じた具体的な運転状況・シチュエーションを見ていきましょう。
まずは、運転で苦手と感じる天候・時間に関する調査です。
- 雪道・凍結した道路 61.10%
- 雪の日の運転 57%
- 豪雨や濃霧など視界不良 56.40%
- 強風・暴風下の運転(台風など) 44.20%
- 夜間の運転 26.60%
- 雨の日の運転 23.90%
- 夕方(薄暗時)の運転 16.50%
- 早朝(薄明時)の運転 16.20%
雪が運転しづらい天気の代表格
1位「雪道・凍結した道路(61.10%)」、2位「雪の日の運転(57%)」と上位2つは連続して雪の中の運転に関する項目。
ドライバーの方にとっては、運転しづらい天候として雪に対する警戒心が強いことがよくわかります。
3位「豪雨や濃霧など視界不良(56.40%)」と50%を越える苦手の声が集まったのは以上3点のみとなりました。
なお、このランキングについて「特に抵抗はない」「やや苦手」も含めた結果を一覧にすると以下表のようになります。
特に抵抗はない | やや苦手 | 苦手 | |
---|---|---|---|
雪道・凍結した道路 | 10.60% | 28.30% | 61.10% |
雪の日の運転 | 12.50% | 30.50% | 57% |
豪雨や濃霧など視界不良 | 10.90% | 32.70% | 56.40% |
強風・暴風下の運転(台風など) | 19% | 36.80% | 44.20% |
夜間の運転 | 36.20% | 37.20% | 26.60% |
雨の日の運転 | 25.50% | 50.60% | 23.90% |
夕方(薄暗時)の運転 | 43.50% | 40% | 16.50% |
早朝(薄明時)の運転 | 52.10% | 31.70% | 16.20% |
「やや苦手」も含めて見ると「雨の日の運転」が苦手とまでは行かないものの、懸念を持つ方が少なくないこともわかります。
運転の時間帯については、夜間の運転の「苦手」「やや苦手」がいくらか高めではありますが、天候条件に比べるとすべて下位にまとまっています。
基本的に運転する時間帯が、運転への嫌気と結びつくことはあまりないようです。
運転するのが苦手な道路構造ランキング
続いて、狭路や高速道路、カーブなど道路自体の構造に関して苦手を質問した結果が以下となります。
- 狭い道での対向車とのすれ違い 29.40%
- 環状交差点(ラウンドアバウト) 28.10%
- 高速道路での合流 27.70%
- 上り下りの多い山道走行 24%
- カーブの多い道路 23.60%
- ガードレールのない道の運転 23.60%
- 未舗装の砂利道や泥道での運転 22.80%
- トンネル内走行 18.10%
懸念を集める他の車との接触・衝突リスク
1位「狭い道での対向車とのすれ違い(29.40%)」2位「環状交差点(ラウンドアバウト)(28.10%)」3位「高速道路での合流(27.70%)」となりました。
他の車との接近を強いられ、接触・衝突の不安を感じるシチュエーションに苦手の声が多く集まりました。
特に抵抗はない | やや苦手 | 苦手 | |
---|---|---|---|
狭い道での対向車とのすれ違い | 27.1% | 43.5% | 29.4% |
環状交差点(ラウンドアバウト) | 33.5% | 38.4% | 28.1% |
高速道路での合流 | 36.4% | 35.9% | 27.7% |
上り下りの多い山道走行 | 41% | 35% | 24% |
カーブの多い道路 | 39.1% | 37.3% | 23.6% |
ガードレールのない道の運転 | 36.4% | 40% | 23.6% |
未舗装の砂利道や泥道での運転 | 34.7% | 42.5% | 22.8% |
トンネル内走行 | 52.1% | 29.8% | 18.1% |
「苦手」と明確に挙げた人こそ少ないものの、「未舗装の砂利道や泥道での運転」は、1位「狭い道での対向車とのすれ違い」に次いで「やや苦手」と挙げる人が多い結果となりました。
未舗装路は、運転する側も車の傷や汚れが気になるもの。苦手にまでは至らなくても「荒い路面はできれば通りたくない」ドライバー心理の表れかもしれません。
運転で苦手な交通環境ランキング
運転する場所や他の車両や歩行者が行き交う道路など、様々な通行時のシチュエーションについて苦手を伺いました。
- 混雑した都市部での運転 33.6%
- 狭い駐車場への駐車 30.80%
- 機械式パーキングへの入庫 24.5%
- 歩行者の多い生活道路での運転 23.9%
- 路肩に寄せての路上停車 22.9%
- バス・タクシーの多い乗降場の利用(駅・空港など) 21%
- 工事区間での迂回路運転 20.9%
- 幅の広い一般道や高速道路での車線変更 20.8%
- 渋滞時の運転 20.20%
- 一方通行道路への進入・通行 19.8%
都市部の混雑、駐車場……身近に潜む苦手意識
30%以上と突出して苦手の声が多く上がったのは「混雑した都市部での運転(33.60%)」「狭い駐車場への駐車(30.80%)」の2つ。
日常的に運転する機会の多いドライバーなら出くわすことも多そうな身近なシチュエーションが上位に選ばれました。
逆に、一方通行道路や工事区間の迂回、渋滞、駅等の乗降場など、交通に一定の制限を受ける場所・状況でも即座に苦手と感じるとも限らないようです。
特に抵抗はない | やや苦手 | 苦手 | |
---|---|---|---|
混雑した都市部での運転 | 28.8% | 37.6% | 33.6% |
狭い駐車場への駐車 | 28.1% | 41.1% | 30.8% |
機械式パーキングへの入庫 | 44.1% | 31.4% | 24.5% |
歩行者の多い生活道路での運転 | 35.3% | 40.8% | 23.9% |
路肩に寄せての路上停車 | 40.8% | 36.3% | 22.9% |
バス・タクシーの多い乗降場の利用(駅・空港など) | 39.9% | 39.1% | 21% |
工事区間での迂回路運転 | 43.8% | 35.3% | 20.9% |
幅の広い一般道や高速道路での車線変更 | 47.1% | 32.1% | 20.8% |
渋滞時の運転 | 45.2% | 34.6% | 20.2% |
一方通行道路への進入・通行 | 47% | 33.2% | 19.8% |
苦手な運転操作ランキング
実際に車を運転する際の運転操作で、苦手なものを調査しました。
- 縦列駐車 27.7%
- 狭い道での切り返し 25.8%
- バックでの移動 24.9%
- 交差点内でのUターン 22.3%
- 見通しの悪いT字路・カーブ徐行進行 21.9%
- 前方車の追い越し 20.2%
- 自転車・原付等の追い抜き 19.3%
- 信号機のない交差点での右折・左折 18.1%
- 速い車・優先車両へ道を譲る 17.3%
- 坂道停車・発信 17.1%
大きくハンドルを切る操作・バックを含む操作に抵抗感
苦手な運転操作でトップは「縦列駐車(27.70%)」。
2位「狭い道での切り返し(25.80%)」3位「バックでの移動(24.90%)」と並んで、
- 大きくハンドルを切る操作
- 進路の微調整にバックを含む操作
に対して苦手意識が持ちやすい様子が見られます。
特に抵抗はない | やや苦手 | 苦手 | |
---|---|---|---|
縦列駐車 | 35.8% | 36.5% | 27.7% |
狭い道での切り返し | 34.6% | 39.6% | 25.8% |
バックでの移動 | 38.2% | 36.9% | 24.9% |
交差点内でのUターン | 40.5% | 37.2% | 22.3% |
見通しの悪いT字路・カーブの徐行進行 | 38.5% | 39.6% | 21.9% |
前方車の追い越し | 44.2% | 35.6% | 20.2% |
自転車・原付等の追い抜き | 41.3% | 39.4% | 19.3% |
信号機のない交差点での右折・左折 | 50.3% | 31.6% | 18.1% |
速い車・優先車両へ道を譲る | 55.5% | 27.2% | 17.3% |
坂道停車・発信 | 50% | 32.9% | 17.1% |
苦手の声の少ない「坂道発進」
意外なところでは、今回調査した運転操作の中では「坂道停車・発信」を苦手に感じる人は、最も少ない結果となりました。
坂道停車・坂道発進は、特にMT車で操作を行う場合、ギア・ハンドブレーキ・クラッチの操作を一体的に、スムーズに行う必要があります。
操作を誤ると自動車のエンストや車両が後ろに下がってしまうリスクがあるため、教習所で難しい運転操作のひとつとして紹介されることも一般的でした。
一方のAT車の場合、坂道走行でも、ギアをDレンジに入れアクセルを踏む、平坦路と大きく運転方法も変わりません。
現在、日常的に運転されている自動車の大半がAT車なこともあり、そもそも坂道停車・発信を苦手なシチュエーションと感じない人が大半のようです。
自動車の運転で苦手なこと総合ランキング・ベスト10
「天候・時間」、「道路構造」、「交通環境」、「運転操作」4つのテーマすべて総合すると、苦手な運転状況ベスト10は以下のようになりました。
- 雪道・凍結した道路 61.1%
- 雪の日の運転 57%
- 豪雨や濃霧など視界不良 56.4%
- 強風・暴風下の運転(台風など) 44.2%
- 混雑した都市部での運転 33.6%
- 狭い駐車場への駐車 30.8%
- 狭い道での対向車とのすれ違い 29.4%
- 環状交差点(ラウンドアバウト) 28.1%
- 高速道路での合流 27.7%
- 縦列駐車 27.7%
最も多くのドライバーに苦手と挙げられたのが「雪道・凍結した道路」。続く「雪の日の運転」とあわせて雪に関する項目が1位・2位を占める結果となりました。
雪以外にも、豪雨・強風など悪天候を苦手とする声は多く、複数が上位に入りました。
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次いで、混雑下の都市部や狭い道でのすれ違い運転、高速道路での合流など、他の車との接近を強いられる≒接触・衝突の不安を感じるシチュエーションにリスクを感じる傾向が見られました。
一方で、一方通行道路やトンネルの利用、追い越し運転、信号機のない交差点での右左折、車線変更も含め、ドライバー自らが主体的に行える運転行動に苦手を感じる人は多くありませんでした。
ドライバーは、自分の運転そのものよりも、他の車の動きや距離感、天候等の環境要因など自分でコントロールできない外部要因にリスクを感じやすいものと考えられます。
雪道・凍結した道路 | 61.1% |
---|---|
雪の日の運転 | 57% |
豪雨や濃霧など視界不良 | 56.4% |
強風・暴風下の運転(台風など) | 44.2% |
混雑した都市部での運転 | 33.6% |
狭い駐車場への駐車 | 30.80% |
狭い道での対向車とのすれ違い | 29.4% |
環状交差点(ラウンドアバウト) | 28.1% |
高速道路での合流 | 27.7% |
縦列駐車 | 27.7% |
夜間の運転 | 26.6% |
狭い道での切り返し | 25.8% |
バックでの移動 | 24.9% |
機械式パーキングへの入庫 | 24.5% |
上り下りの多い山道走行 | 24% |
雨の日の運転 | 23.9% |
歩行者の多い生活道路での運転 | 23.9% |
カーブの多い道路 | 23.6% |
ガードレールのない道の運転 | 23.6% |
路肩に寄せての路上停車 | 22.9% |
未舗装の砂利道や泥道での運転 | 22.8% |
交差点内でのUターン | 22.3% |
見通しの悪いT字路・カーブの徐行進行 | 21.9% |
バス・タクシーの多い乗降場の利用(駅・空港など) | 21% |
工事区間での迂回路運転 | 20.9% |
幅の広い一般道や高速道路での車線変更 | 20.8% |
渋滞時の運転 | 20.2% |
前方車の追い越し | 20.2% |
一方通行道路への進入・通行 | 19.8% |
自転車・原付等の追い抜き | 19.3% |
トンネル内走行 | 18.1% |
信号機のない交差点での右折・左折 | 18.1% |
速い車・優先車両へ道を譲る | 17.3% |
坂道停車・発信 | 17.1% |
夕方(薄暗時)の運転 | 16.5% |
早朝(薄明時)の運転 | 16.2% |
まとめ
今回の調査では、運転に対する苦手意識は性別や年代によって異なることがわかりました。
特に男性は、年齢とともに運転への苦手意識が減少する一方で、交通事故の遭遇率が上昇する傾向が見られました。運転に慣れ警戒心が薄れていく中で、事故発生リスクが高まっているおそれがあります。
一方、女性は男性に比べて運転全般に対する苦手意識が高く、加齢による事故経験率の増加は見られませんでした。
それでも、全年代で約4割の人が交通事故を経験しており、安全運転の意識を持ち続けることの重要性は変わりません。
積雪や路面凍結の影響が大きい季節、より慎重な運転を
調査結果から、多くのドライバーは「自分の運転行動」よりも、雪や暴風などの悪天候、他の車との接触・衝突といった「外的要因」に強い苦手意識を持つことがわかりました。
2月は1年で最も気温が下がり、積雪や路面凍結の影響が本格化する時期です。危険を感じた際はスピードを落とし、安全確認を徹底しながら走行することが大切です。
運転に自信のある人ほど、無意識のうちにリスクを軽視し、「自分が事故に遭うことはない」と油断しがちです。しかし、安全運転のためには適度な警戒心を持つことは大切です。
事故防止のため、自分の苦手を正しく理解し、他の車や歩行者に配慮しながら、慎重な運転を心がけましょう。
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